ep.23 リベンジ
「よし、今度こそやるぞ…!」
今回は稼ぐためじゃなくてヌシ討伐だ!
ヌシを倒しBランクに上がるために短剣を携え、〔炎熱の坑道〕にやって来た。
今回は交差点の中心に出た。
「…あの時押し返せただけの『強化』も問題なく出来るし短剣も練習した。切れ味も〔森〕の奴らは軽く斬れたし多分問題ないだろう。まぁもしまだ倒せなくても足も鍛えたから無理なく逃げれるはず」
で、どの道が正解かな?
目を閉じて中央の魔力を右から感じる。
「ん…遠いな」
あ、でもあのクモは徘徊型だからそんな当てにならないか?
「まぁいいや。多分中央の方に居るだろ」
この前も中央に向かってたら遭遇したしな。
魔力を感じた方向へ進む。
ムカデやアリの群れを短剣で倒しながら休むことなく進み続ける。
「うん。ムカデもアリも問題なく斬れるな。結構堅かった覚えがあるけど流石硬鉄製ってとこか」
「うっ…」
道の先に小さいヤスデが何匹もとぐろを巻いて絨毯のようになっているのを発見する。
虫は慣れてるつもりだけどちょっと流石にキモいな…
「…この前似てるやつに攻撃したら毒を放って来たんだっけか。もしかして攻撃しなければ…?」
恐るおそる近づいてみるとヤスデたちは特に反応も見せずにじっとしている。
「やっぱりな。でも…」
ジャンプでは抜けられなさそうなくらいの広さでヤスデは敷き詰まっている。
仕方ないか。
「『足場』」
ヤスデの上に魔力を固めた通り道を生成する。
これ消費がきついからあんまり使いたくないんだよな…
ヤスデの絨毯を切り抜け、先へ進む。
「うーん…なかなか遭遇しないな…」
脱出門も何個か見ているのに遭遇する気配もない。
試しに中央の魔力を感知してみるとそこそこ近くまで来ていた。
結構来てるのに…本来なら運がいいんだろうけど、今は逆に遭遇したいんだよな。
カサカサ…
!
もう少し進んだ先で、カーブの先からあの時聞いた足音が聞こえてくる。
来た!魔力も十分残ってる!今度こそ!
「『身体強化』」
今出来る限りの『身体強化』を施し、短剣を構える。
カサカサカサカサ…
…なんか足音が多い?
現れたのは壁や天井に張り付いた手のひら程の大きさの灰色のクモの群れだった。
別のクモ!?
クモたちはこちらを視認すると速度を上げて這いよる。
「『壁』」
『魔力壁』を道を塞ぐように展開する。
とりあえず様子見してみるか。コイツらも魔法が効かなくて『壁』をすり抜けるようなら面倒だが…
クモたちは『魔力壁』にぶつかり、足を止めたり『魔力壁』を這ったりしている。
「こいつらは魔法効くのか。良かった」
短剣を鞘にしまう。
じゃあまずは炎から試…
「あ!?」
手を前に構えようとした瞬間、手首が手錠のように糸で繋がれていることに気付く。
いつの間に…!?
形容しがたい悪寒が背中を走る。
「なんかやばい!『強化』!」
『身体強化』を使って糸を千切ろうとするが全くびくともしない。
やばいやばいやばい!
振り返って逃げようとしたが足を取られて背中から転んでしまう。
「うぐぅ!」
足を見ると今度は足首も糸で繋がれていた。
「『着火』!」
火傷覚悟で糸に火を着けて焼き切ろうとしたがそもそも火が着きすらしない。
「燃えない!?なら!『水塊』!」
水塊を体の上に生成、そのまま自分に落とす。
水に触れた糸は溶けるようにして消えていく。
「プハッ!あ、危ねぇ!一体何が…!?」
辺りを見回すとびしょ濡れのクモが背後からこちらを見ていた。
『魔力壁』に阻まれているクモたちと違い、白い体に半透明の体毛で覆われている。
「こいつか!?」
全く気付かなかった!でもどうやっ…
「は!?消え…」
クモから魔法の気配がしたかと思えば、見ているはずなのに一瞬見えなくなる。
「いや、居る?居るな!?」
ぐっと集中して見ようとするとまた見えるようになった。
なんなんだ!?
「『乱風刃』!」
また見失いそうになる前に攻撃を仕掛ける。
クモは素早く避けようとするが大量に放たれた『風刃』によって避けきれずバラバラになり、魔素となって透明な魔石を残した。
「倒した…?魔法の気配がしたし見えなくなるのは魔法だったんだろうが…透明化とも違う…くそっ相手が人間だったら教えてもらえるのに!」
答えを得られない悔しさを覚えつつ、魔石を拾いあげる。
綺麗な透明だな…色も違ったしこいつは亜種かなんかだったんだろう。
振り返ると透明な『魔力壁』の向こうでクモたちが蠢いている。
「さてと、あとはあっちのクモたちだが、数がなぁ…」
見えるだけでも大きめの魔法を使わないと手こずりそうな数が居る。
…もう今日はこいつら倒したら帰るか。
「さっきの似てるやつの糸は燃えなかったし火は効かないか…?風か水となると…風でいいか。『乱風刃』」
『魔力壁』の解除と同時にありったけの『風刃』をクモの群れに浴びせる。
クモたちは『風刃』一発ならともかく大量に降りかかる刃になすすべもなく斬り刻まれていく。
見える限りのクモを全て倒し、沢山の魔石が道に散らばる。
「ふぅっ。これで全部かな…?」
やっぱり相当消費したな…もう帰らなきゃだめだな。
魔石を拾おうとすると道の先から沢山の足音が聞こえる。
「まだ居るのか!『壁』!」
クモをせき止めるために『魔力壁』を展開する。
道の先から現れたクモたちはまんまと足止めを食らうが、先程とは違い『魔力壁』に噛みついて少しずつ削ってきている。
「なんだ…?さっきは何もしてこなかったのに…」
なんとなく嫌な予感がして急いで魔石を拾い集め、その場を離れようとするが
カサカサ…
来た方向からあの足音がする。
「マジか…『身体強化』」
短剣を抜き、構える。
暗闇の先から魔除蜘蛛が姿を現す。
後ろには大量のクモ、目の前にはヌシ…やばいな…
ヌシはこちらを視認するなり襲い掛かってきた。
「ふっ、くっ、ぬあっ!」
こちらを押さえつけようとする脚を弾き、いなしつつ着実にダメージを与える。
よし!やれてる!傷もついてる!
魔除蜘蛛は攻撃の合間を縫うように顔に向かって毒液を吐きかける。
「っん!っぶねぇ!」
毒液が当たらなかったのを見て魔除蜘蛛はまた脚での攻撃を始める。
「う、お、お、お!」
今動きが少し遅くなった!毒吐く瞬間にこいつで貫く!
「ぐっ、ぬ、ぐあっ!」
今度は脚での攻撃に交えて頭突きをかましてきた。
突然の頭突きに体勢が後ろに崩れる。
魔除蜘蛛はその隙にすかさず顔に毒液を吐きかける。
今だ!!
「うおおァ!」
全身に渾身の力を籠めて動きを加速、毒液に頬に掠めながらもギリギリで避けて魔除蜘蛛の目の前まで潜り込む。
「ここだ!!」
口部から頭まで貫くように手ごと短剣を突き刺す。
グギ、ギ…
脳天を貫かれた魔除蜘蛛はまだ一瞬生きていたが力尽き、魔素となって大きな魔石と宝箱を残した。
「ふ、はっ…はっ…や、やった!天敵とまで思ったヌシを!倒した!よぉし!」
ガッツポーズをして喜びを噛みしめるも束の間、後ろから『魔力壁』を食い破ったクモたちが足元まで来ていた。
「うおおおお!『水』!」
喜びと驚きと疲れで制御を誤り大量の水を足元に生成、まるでせき止められた川が決壊したかのように足元から水が溢れ出す。
地面に居たクモたちは大量の水に流されて道の先へ消えて行った。
まだ壁にも天井にも居…っ!
見上げるや否やクモたちが降りかかる。
「『壁』っ!」
すんでのところで体を覆うように『魔力壁』の展開が間に合い、クモたちはそれに張り付く。
「…あっっぶねぇ~~…!っと…魔力が…」
一気に魔力を消費したため一瞬立ち眩みがするが持ちこたえる。
「おう…うん…よし、もう大丈夫だな」
一瞬目を閉じて落ち着きを取り戻す。
そんな時間は無いとばかりにクモたちは『魔力壁』に噛みつき、削ってきている。
「うーん…上から水で洗い流すか。『水塊』」
天井付近に『水塊』を発生させてそのまま落とす。
クモたちは水になすすべなく『魔力壁』から剥がされ、地面に流れ落ちる。
「『風鎌』」
草刈りをするように蜘蛛の高さで『風鎌』を放ち、クモを次々と上下に断っていく。
最後の一匹を倒したのを確認し周りを見て『魔力壁』を解除する。
魔石を拾う前に一旦その場に座り込む。
「よし…あー危なかった…結構鍛えたつもりだったけどやっと互角って感じだったな…この先も魔法が効かないやつがいるかもしれないと思うと、魔法ばかりじゃなくて体も鍛えないとだな…っと」
立ち上がり、魔石を拾い集める。
「…よし、じゃ、宝箱だな!」
魔石を拾い終わった後、討伐品が入った宝箱を開ける。
宝箱の中身は黒い手袋だった。
「手袋?」
手に取ってみると目では分からない程の細かい毛に覆われていることに気付く。
「おおーヌシの毛の短い版みたいなのがびっしりと…」
試しに付けてみて手を動かしてみたり短剣を振ってみたりする。
うん、かなり頑丈そうだし物を掴みやすいし武器を使う人にはいいかもな。俺も少しは短剣使うようにしたし換金はしないで使おうかな。
「…ん?あれ?ヌシの魔石…あれ?」
魔除蜘蛛の魔石が見当たらず焦ったが、水に流されて少し離れた位置に行っていただけで無事見つかり胸をなでおろした。
ギリギリ片手で掴めるほどの大きさの魔石を拾いあげる。
「ああ良かった。大きいな…黒に赤い模様か。体の色と一緒だな」
魔石でいっぱいの袋に詰め込む。
「よし。帰るか」




