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ep.2 Eランク魔域〔雑木林〕

西門を抜けると道の左端に「この先Eランク魔域」と書かれた看板があり、先を歩いている人が何人もいた。中くらいの袋を手に持っている人や自分と同じように大きな袋を背負った人、足や手に包帯を巻いている人…後ろを見てもかなりの人数が同じ道を歩いている。

 思ってたより人が居るんだな。

道の先を見ると少し遠くに門が見える。


「あれが…」


 これから行く魔域の門か…



道なりにしばらく歩いて門の前に立つとその大きさがよく分かる。門の中は水面のようになっていて内部がどんな様子かうかがうことは出来ない。

 これがEランク魔域〔雑木林〕の門…遠くからだと分からなかったけどけっこう大きいんだな。

門の高さは約8メートル、幅は約4メートルとかなり大型である。


足を止めて門を見上げていると後ろから続々と人がやってきて魔域に入っていく。


「よし、行くか」


門を通ると、さっきまで平原にいたはずが気付けば雑木林にいた。


「父さんが言ってたとおりだ…!」


____



「魔域の中は外とは全く違う環境でな、初めて入る魔域にはそりゃワクワクしたもんだ。それに、行ったことある魔域でも地形こそ同じだけど、宝箱は位置も中身も入るたびに変わるんだ。それに魔物も外では見れないようなのが~・・・


父さんは楽しそうに話をする。何度目かのこの話に眠気を覚えながらも素朴な疑問が浮かぶ。


「なんでそんなに楽しそうなのにやめちゃったの?」


さっきの雰囲気から一転、父さんは真面目な顔になる。


「…楽しいことばかりでもないからな。魔域の中には魔物がたくさんいるんだ。それも、外のより強い魔物がな。戦うにしろ、隠れるにしろ、一つのミスでそのまま死に繋がることだって珍しくない。それに環境だって一筋縄ではいかないことも多い。父さんも何度も危ない目に遭ってきた…」


父さんは険しい顔をしながら言った。初めて見る父さんの顔に少し眠気が覚める。


「だから、体が思うように動かなくなってくる前にたくさん稼いで、愛しの母さんと身を固めたってわけだ!」


父さんは一転して笑顔で言い放った。


「…ふーん」


「そしてその母さんとの出会いが~・・・


 また母さんの話…


____



外は涼しく心地よい風が吹いていたが、ここは少し暑い気がするし風もほとんど吹いてない。

 匂いまで全く…周りに魔物はいないな。さて中央は…


濃い魔力の気配を左から感じる。

 あっちだな。


中央に向かって少し歩くと樹の根元に小さな宝箱を見つけた。

 小さいけど初宝箱だ!意外とすんなり見つかったな。


宝箱を開けると、中には糸束が入っていた。


「初出魔品は糸束か。まさに低ランクって感じだな。」


 もっと中央に近づけば糸束よりはマシになるだろうか。

糸束を背負っている大きな袋にしまい込んで探索を続ける。



しばらく歩いていると木陰で何かが動いているのを見つけた。

 魔物だな…魔域の魔物はどう違うのか…


樹ににじり寄り、木陰をのぞき込むとそこには緑色のスライムがいた。


「なんだスライムか…」


色こそ違うが外でもたくさん見かける魔物だ。

 こいつは風で…


「『風刃(ふうじん)』」


風で作られた刃が深い切り傷を付けるが核には届かず、さらにはすぐに再生していく。


「マジか…!」


 外のスライムはこれで核ごと両断できるのに…しかも再生が速い。魔域の魔物はこうも違うのか。

しかしこのスライムはのそのそと逃げようとするだけで攻撃してくる素振りはない。


「外のスライムは攻撃すると向かってくるはずだけど…まぁ何もしてこないならほっといてもいっか。」


 まだ入ったばっかりだし無駄に魔力を使いたくない。魔石もスライムだし期待できないだろう。

逃げる緑スライムを尻目に探索に戻りしばらく歩くと、今度は樹にくっついている宝箱を見つけた。

 こんな置かれ方もあるんだな。


「さっきよりは大きいし重さもあるけど中身は…」


大小の玉がくっついたような木の実のようなものが入っていた。手に取ってみると硬く、中には液体が入っているようだ。

 変な形だな…蓋みたいなのが付いてるな。

蓋を開けて匂いを嗅いでみると無臭だった。


「多分中身は水…ってことは水筒かな?水は魔法で事足りるしこれも換金だな。」


水筒を袋にしまって探索を続けると、小さな門があった。門の向こう側には平原が見える。

 これが外に戻るための脱出門だな。そんなに歩いてないけど見つかったってことはここはたくさんあるのかもな。





適宜水を飲みながらしばらく歩くと丁度腰掛けやすそうな樹の根を見つけたので軽く休憩を兼ねて手に入れたものを確認する。

 結構探索していくらか宝箱を開けたけど、糸束や塩の塊とか…水筒以外はどれも安そうなものばっかりだ。


「まぁEランクだからなぁ。中央にはもう少し良いものがあったりするのかな」


腰を上げ、中央に向かって歩く。


中央に近づくにつれ、背の低い草が増えてきた。

 草が増えて地面がほとんど見えなくなってきたな。土の上にいる緑スライムはすぐ見つけられたけど、ここに居たらよく見ないと分からないかもな…


さらに少し歩くと樹に小さなトゲがたくさん生えている箇所があるのを見つけた。


「トゲ…か」


 中央の方はこういう変化もあるのか。

近づいてよく見てみるとトゲを生やした樹の皮のような魔物だということに気が付いた。

 こんな魔物もいるんだな…硬いけど樹の皮より少し柔らかい。触っても特に動かないし、剥がそうとしても…


「くっ…ダメだ」


すごい力で張り付いてて全然取れそうにない。トゲは小さいけどかなり硬くてしっかりしている。

 うっかりこいつに手をついてケガしないように気を付けよう。


しばしば宝箱を開けながら歩いていると樹の根元の草の上でじっとしている緑スライムを見つけた。

 そもそも動きが遅いから草の上じゃ分かりにくいのに、動いてなかったら注意してなきゃ気付かないな。この辺の樹はほぼ全部トゲ付きだし、踏んで滑って樹に手を掛けたらそこにトゲが…想像するだけで手がゾワゾワする。


「フゥー…もう中央辺りには来てるはず。慎重にいこう」


ここまで来ると宝箱の内容にも変化が出てきて、ある程度の長さのある紐や小さな布袋が出るようになった。

 魔力も濃くなってきた気がするし、もうそろそろ中央だな。


木々の間からひときわ大きな樹が見える。

 あそこが中央だな。この辺の樹はトゲが多いから焦らず気を付けていこう。


たどり着いた中央には樹が何本もねじれて合わさったような大樹があった。


「ここが真ん中だな…」


大樹に手をつくと、大樹の根が動き出した。


「まさか…!?」


大樹の予想外の動きに後ろに飛び退き、構える。


大樹の根は地中から小脇に抱えるほどの大きさの綺麗な宝箱を取り出してこちらに差し出した。

 …取れってことなのか?


恐る恐る宝箱を手に取ると、宝箱を持っていた根は地中に戻っていった。

 動いてるってことは魔物だよな…?攻撃してこないしヌシじゃないのか?


「…まぁ良さそうな宝箱は貰えたしいっか」


宝箱の中身は木で出来た精巧な人形とそれを飾るための棒付きの台だった。

 今までのとは違って飾るようなものが出てきたか。ここまで来るのに結構時間かかったしいい値段で換金出来たらいいな。


もう一度大樹に触れてみるが何も動きはない。

 もう何もなさそうだし攻略完了ってとこだな。


「よし、帰るか」

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