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ep.16 視線

外ではお昼を過ぎて少し影が伸びていた。

Cランク魔域に挑む前に少し聞いておきたいことがあるということで、この前と同じように門の横で輪になって座る。


「このローブ魔域で使うって言ってたけどどういう性能なの?」


「耐火、断熱ってところだね」


「熱…ってことは〔坑道〕って暑いの?」


「あれ?知らなかったの?」


「ええ、魔域の名前はランクアップした時に教えてもらえるから大抵はそこで推測して知るわね。私たちは〔坑道〕とだけ先に盗み聞きしちゃったけど」


「なるほど」


「しかしこれが必要な暑さとなるともう一着要りますね…」


「ね。耐火だけなら後衛の私は要らないから一つで良かったんだけどね」


 もう一回行くのも手だけど…


「じゃあ俺が持ってるやつあげようか?」


「え?」


「私たちは助かるけど…いいの?」


「うん。魔法教えてくれるならね!」


 魔法を教えてもらえるならもう一回行くくらいなんてことないしな。

二人は一瞬ポカンとしたが笑みを溢した。


「フフッ、魔法を教えるだけでここまで手を貸してくれるなんて、ホント変わってるわね」


「こら、変わってるなんて失礼よ」


「まぁまぁ、気にしてないからいいよ」


「ほら、アインもこう言ってるし」


「むぅ…でもいつか偉い人と会った時、失礼しちゃわないように少しは普段から気を付けないとでしょ?」


「そんなこと滅多にないだろうし、その時は礼儀正しいカーラにどうにかしてもらうわ」


「頼りにしてくれるのは嬉しいけど少しは頑張ってよ?」


「へいへい」


「もー…」


やる気の無さそうな返事にカーラは呆れる。


「あの…いいか?」


「あっごめんなさい!どうぞ」


「そしたらもう一着は俺が持ってるやつを譲るってことで良かったかな?」


「そうね。こっちとしては手間が省けて助かるわ」


「じゃ、宿に取りに行ってくるから待っててくれ」


立ち上がろうとしたその時、カーラのお腹が鳴った。


「ちょっ、いやあのこれは…!」


恥ずかしさからかあたふたしている。


「魔力切れになったんだもんな。そりゃお腹空くよね。急いで取ってくるから少しだけ待ってて!すぐ戻るから」


「はい…うぅ…」


顔を覆ってしまったカーラをワフィカが撫でて慰める。

 最大で行こう。


「『身体強化』」


痛まないギリギリの魔力を流し、風を切って走る。



「ふぅっ。お待たせ」


ワフィカにローブを差し出す。


「わっ!早いね!」


「『強化』使って走ったからね」


「そこまでして急がなくても…」


カーラは申し訳なさそうにしている。


「いやいや、魔力切れの空腹は結構キツイでしょ?待たせちゃ悪いと思ってね」


「すみませんありがとうございます!」


「じゃあささっと魔法教えるわね。名前は『土取り』。掛ける相手の土を取る魔法よ。知ってる?」


「知らないな。土を取る…ということは草を採る時に使える?」


「その通り。こんな感じで…『土取り』」


足元の草を引っこ抜いて魔法を掛けると根っこに付いていた土が落ちて綺麗になる。

 おぉ…!これが使えれば根っこまで使う時に洗う手間がなくなる!


「あとは靴とかの土汚れを落とすときにも使えるわね。水が無くてもさっと綺麗に出来て結構便利よ。そんでイメージは、綺麗になった結果をイメージするか、土が落ちていくのをイメージするかのどっちかね」


「なるほど」


「ちなみに私は結果をイメージしてるわ」


「ふむ…」


 じゃあ俺もそっちでやってみるか。

草を引っこ抜いて、水洗いした綺麗な白い根っこをイメージする。


「『土取り』」


土がみるみるうちに落ちていき、まるで水で洗ったかのように綺麗な根っこになった。


「おお~これが『土取り』か!ありがとう!」


「子供でも使える簡単な魔法だけどね」


「簡単でも知らない魔法なら俺は満足だよ!」


「あははっ、どんだけ魔法好きなのよ」


「そりゃ、1番さ!」


「ぷっ、あはははは!」

「あははっ!」

「ふふっ」


自信たっぷりに答えると二人して笑ってしまった。

俺もつられて一緒に笑ってしまった。




一緒に昼飯を食べ、集会所で換金を済ませた後…


「じゃ、色々ありがと。世話になったわ」


「ありがとうございました!これでCランクに上がれましたし、自信をもって魔域に臨めます!」


「俺の方こそ魔法教えてもらって嬉しかったし、一緒に探索するのも楽しかったよ。ありがとう」


「ん、じゃあね」

「さようなら~!」


ワフィカは一瞥して行ってしまったのに対してカーラは手を振って元気に別れを言っていった。

手を振り返して見送る。

 誰かと魔域に行くのも悪くなかったな…


「じゃ、もっかい行ってローブ取ってきますか」


踵を返して一人魔域へ向かった。




「ん…?」


二人にあげてしまったローブをまた取るために〔濡れ森〕に来ていたところ、視線を感じる。

 また…前もあったけど『圧風』で探しても何も居なかったんだよな。


「まぁいっか」


一抹の気持ち悪さを覚えながらも先へ進む。



「む…また…」


中央に近づいてきたころ、また視線を感じて振り向く。

 何かが追って来てるのか…?試しに『幕』仕掛けておいてみるか。


「『(まく)』」


可能な限り広く、魔力で出来た不可視の幕を展開する。

 歩き木とか鳥とかが通っても伝わるけど形で分かるし多分いけるかな。



ある程度歩くと『幕』の上部を人間の形をしたものが通り抜ける感覚が伝わってきた。


「っ!『強化』!」


 人!?遠いな!

足に限界ギリギリの『身体強化』を施し、感じた場所に急行する。


「!!!」


相手も気付いたようで『幕』をもう一度通り抜ける。

 逃がさ…ん!?居ない!?

感じた場所を見るが人どころか何も居ない。


「『圧風』!」


とりあえず全力で魔法を放つ。


「!!!」


何も居ないところから落下音だけが聞こえてくる。

 まさか透明?

落ちたと思わしき場所に行くも何も居ない。


「逃げたか…?いや、透明で見えないだけか?」


音に注意しながら辺りを歩き回って探してみる。


「ん~…やっぱり逃げ、うわっ!」


何かに足を引っかけ転ぶ。


「痛っつつ…」


 根っこかな…

引っかけたところを見るが何もない。


「あれ?」


試しに触ってみると透明な温かい何かがある。

 これ…なんだ?

伸びてる方向に触ってみるとなんとなく人間っぽい。

 足…?ってことはやっぱり透明になってた人が居たんだ!どんな魔法だろう…

考え事をしながらそのまま手を伸ばしていくと、柔らかい何かに手がたどり着く。

 ?何だこ


「あ”っ!!??」


少しまさぐってから触っていたものが何だったかに気付いて一瞬で手を離す。


「ん…」


透明な何かが漏らしたのは高い声だった。


「お、女の子!?」

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