ep.11 Cランク魔域〔炎熱の坑道〕
「さて今日はどこまで行けるかな」
翌日、また同じように〔炎熱の坑道〕に来ていた。
入ってしばらく歩くと何かを食べている三匹の百足を見つけた。
「ん、あれは…百足か。試してみるか…」
強化した両手を構える。
「『水線』!」
高圧で放たれた水は線となり百足の胴体を貫く。
「そらっ」
水線を横に薙ぎ払い横にいた百足もまとめて体を切断する。
「うっし。ちゃんと通用するね…ん!?まだ生きてるのか!」
百足の切られた下半分は悶え、上半分はこちらに迫ってきている。
そういえば火はどうだ?
「『放炎』」
迫りくる百足たちに火炎放射を浴びせるが、難なく炎を抜けて足元に迫る。
「ッ『壁』!」
足にたどり着く寸前に魔力壁を展開し事なきを得る。
百足は壁に噛みつき少しづつ崩していく。
「あっぶねー…全くと言っていいほど効いてないな。『風刃』」
風刃は甲殻に切り傷を付けるくらいで威力不足だった。
風刃じゃ切れないか。
「『風錬』」
首を断って頭だけになってもまだ動いて魔力壁を食い破ろうとする。
「マジかよ!『風錬』!」
兜割りにするとやっと魔素になって消えていった。悶えていた下半分も同様に消えた。
「あっちに残ってた部分も消えるのか。しかし虫にしてもしぶとすぎるだろ…頭が無事なら動き続けるのか…?厄介だな」
足元に残った魔石を拾い集めて先へ進む。
「うわっさっき百足が食べてたのはこれか…こいつもデカいな…」
食い荒らされた芋虫の横を通り過ぎる。
「ん、また百足…じゃないな?デカいし丸っこいな」
百足より一回り大きなヤスデを発見した。
!
ヤスデはこちらに気付いたようだがじっと動かないままこちらを見て?いる。
…何もしてこない?なら…
「『水線』」
高圧で放たれた水がヤスデの頭に命中するも弾かれる。
「なっ!?」
攻撃を受けたヤスデは身をよじっている。
何をし―
「うあっ!?ゲッホァ!うぐっ、な!?か、『壁』!」
目と鼻と喉の奥に染みるような刺すような強烈な刺激が襲い来る。反射的に魔力壁を展開する。
「なん、ゲホッ!離れ…うえっ!」
急いでその場を離れる。
「な、なんだ今の?ゲホッ、毒?ゲホ」
でも毒液は見てないし…
むせながらヤスデの方を見ると相変わらず動かずじっとしている。
「ハァ、ズズッ、追って来てなくて良かった…鼻水も涙も出てきた…」
待ってみて治らなければ一旦脱出だな…
少し待つと嘘のように症状が消えていった。
「もうなんともない…?よく分かんないな。そんでさっき魔法弾いてたよな…」
命中した部分を見てみると甲殻が傷ついている。
「効いてないわけじゃないのか?」
もう近づきたくないし出来れば魔法で片を付けたいんだけどいけるか…?
「『嵐刃』!」
放たれた刃はヤスデの頭を兜割りにするが体までは届かずに霧散する。
硬っ!
ヤスデも遅れて魔素になり霧散していく。
「倒せてよかった。近づいても…大丈夫だな。『嵐刃』であの程度となるとかなり厄介だな…」
跡に残った赤黒い魔石を拾う。
「ヌシのこともあるしそろそろ脱出門を見つけておきたいな」
蟻を焼き払ったり宝箱を開けたりして順調に魔石と出魔品と集めながら歩き進めていると先の暗闇から足音が聞こえてくる。
カサカサ…
ん…?
足音は徐々に近づいてくる。
足音…?近づいて来てる…!
巨大な蜘蛛が道の先から姿を現した。
「おいおいマジかよ…」
黒い体に赤い模様…!逃げた方がいいが…試したい!
「『嵐刃』!」
蜘蛛に命中する直前、刃は不自然に曲がり軌道を外れて天井に逸れた。天井に大きく深い切り傷が刻まれる。
効かないとは聞いてたけどこういうことか!面白い!
蜘蛛はこちらを捕捉し、襲い掛かる。
「『壁』!」
蜘蛛は壁をものともせず素通りするようにして迫りくる。
「は!!?」
瞬時に腕に魔力を流し強化。押さえつけようと迫る脚に垂直に拳を当てて押し返す。
「ハッ、ハッ…!」
話が違う!壁を通り抜けやがった!
押し返された蜘蛛は警戒してこちらの様子をうかがっている。
右腕に激痛が走る。
っ…!
「クソ…!調節が…」
蜘蛛は一瞬の綻びを見逃さず襲い掛かる。
「ッ『強化』!」
脚を弾くが押し返すには至らず、息つく暇もなく襲い掛かってくる。
力が足りない!なら!
左腕にさらに魔力を流し、限界を超えて力を増強し今度は押し返す。
今だ!
蜘蛛に背を向け逃走する。
両腕の痛みを無視して必死に走る。
「門…門はどこだ!」
背後からの足音が徐々に近づいてきている。
「クッソ…!」
全身に魔力をさらに流して速度を上げる。全身が悲鳴を上げているのが分かる。
「うぐ…!」
分かれ道を選ぶ余裕もなく闇雲に逃げる。
気付けば足音は追ってきていなかった。
足を止めて息を整える。
「フゥー…痛っつつつ、さすがに全身は堪えるな…」
特に酷い腕くらいは治しておくか。
「『治癒』」
両腕をダランと垂らし、集中して唱える。
あっという間に痛みは消え自由に動かせるようになった。
「ふぅ、他はそこまでだしとりあえず治さなくていいや。んで、また遭遇しないとも限らないし門は見つけておこう。…しかし『壁』張ったら追ってこなかったって言ってたよな?」
あれか?土壁とかそういう類のことを言ってたのか?
「今度会ったら聞いてみるか」
中央とは反対の方向に歩いて行っていると大きな芋虫と遭遇した。芋虫はこちらに向かって進んでいる。
「さっき食われてたやつか。まずは様子見で、『風刃』」
風の刃はいともたやすく芋虫の首を刎ねた。
「え?やわ、え?…他の奴らは硬いのにやたら柔らかいな?変なの」
魔素になると思い魔石を拾おうと近づくが、芋虫は魔素にならない。
ん?
おかしいと思い様子を見ると刎ねたはずの頭と体がくっついており、何事もなかったかのようにまた進み始めた。
「これがこいつの特徴か。待てよそういえば…」
百足に食われていた芋虫のことを思い出す。
「あんなになっても魔素になってなかったってことは…アレで死んでなかったってことか!信じられんな…でも魔物は死ねば魔素になるし、そういうことだよな…」
芋虫はこちらに進み続けている。
こっちに来てるけど…敵意を感じないな?
試しに端に避けてみると、芋虫はこちらに気付いていないように通り過ぎる。
「攻撃したのに敵意を向けてこないのか…まあ安心して倒せるからいいけどさ。『乱風刃』」
無数の風の刃により細切れにしようとしたが、切ったそばから再生していく。
「あ!?マジかよ…じゃあ火かな。『放炎』」
炎を浴びせると黒焦げになって動かなくなった。
「お、やったか?」
芋虫は魔素になることなく焦げた部分を脱皮して無傷でまた進み始めた。
「え~…じゃあ『水塊』」
水の塊を芋虫を中心に作るが水中にやっても苦しむような素振りもなく進み続けている。
「ハァ…」
諦めて『水塊』のコントロールを解除する。
「…どうしたもんかね。…?」
改めて芋虫を見ると動きが鈍くなっていることに気が付く。
「もしかしていくら再生するとは言っても限界があるのか?『乱風刃』」
今度は止めることなく無数の刃を浴びせ続けてみると徐々に再生力が落ちていき、遂には魔素になり小さな白い魔石を残した。
「ふぅっ。ここまでやってやっとかい。なのに魔石ちっさ…」
魔石を拾いあげて前を見ると新たに3匹の芋虫が這い寄ってきていた。
「やってられるか!こいつは無視でいいや」
芋虫たちを尻目に脱出門を探して先へ進む。
もう少し歩いていくとやっと脱出門を見つけた。
「やっと見つけた…今回は運が悪かったな。体痛いし魔力も少ないし一旦帰るか」




