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ep.1 出立

「アイン、下見てみな」


体を起こして荷台から顔を出すと、眼下に広がる森に囲まれた雄大な草原の中、壁に囲まれた街が見える。


 あれがこれから住むことになる街、ルファトか…来る日も来る日も荷物とともに馬車に揺られてやっと着いた…


「山を下りたらもうすぐだ。入ったらまずは集会所に行きな。正面の大通りをまっすぐのとこにある」


「わかった。ありがとうシュウトさん」


「いいってことよ」





「しっかし気付けばもう一人立ちか…俺ぁアインがこぉーんなちっちゃい頃から知ってるから実質家族みたいなもんだろ?寂しくなるぜ」


シュウトさんは豆粒をつまむようにしてオーバーに小ささを表現し、感慨深そうに言う。


「また大袈裟な…」


「まぁとにかくそんだけ長い付き合いってこった。お前は覚えてないと思うが、まだ赤ん坊のお前が魔法に目をキラキラさせてたのを見たときは、そりゃあ驚いたもんだ」


「そんな意外なもん?」


「いやな?見たことないものに興味を示すとかだったらよくあるもんだがな?お前のそれは興味どころではないというかなんというか…」


シュウトさんは真剣そうな顔で言う。

 …また大袈裟に言ってそう。


「だからアインは魔法が得意なんだろうなぁ。俺はアインが夢を叶えて、さらには世界一の魔法使いになるって信じてるぞ!」


「ハハ…」


 うん、やっぱり大袈裟だ。


馬車は検問を抜け、ルファトの中に入る。


「シュウトさん、ここまでありがとうございました」


「おう、じゃ元気でな!俺んとこでなんか買う時があったらサービスしてやるよ」


握手を交わして別れ、集会所を探す。

 さて、入ってまっすぐって言ってたけど…あの建物がそうかな?

入口から続く大通りの先にひときわ大きな建物が見える。


集会所に向かって歩いていると、街の活気を直に感じる。生まれ育ったのどかな村とは対照的な音の多さや、多種多様な人々…今まで感じてこなかったものに心を躍らせながら歩く。



集会所に着くと、改めてその大きさを感じる。入り口の門を様々な装備を着た人たちが往来している。

 あそこが入口か。


少しの緊張を携えて集会所に入る。


集会所の中はそこそこの人数が居り、賑わっている。

 登録するにはどうすればいいのか分からないけど、とりあえずあの列に並んでみよう。



「こんにちは。今日はどのようなご用件で?」


受付嬢は綺麗な笑顔で対応する。


「探索者登録をしに来ました」


「分かりました。では、あちらの方で登録をさせていただきます」


右奥の空いている受付を手で示す。


「はい。分かりました」




「改めて確認しますが、魔域の探索者になりたいということで間違いないですか?」


「はい」


受付嬢はカードを取り出す。


「では名前をお願いします」


「アインです」


受付嬢は手元のカードに書き、後ろにいた職員に渡すと職員はカードを持って奥へ行った。


「ではカードが出来るまでの間、注意事項など簡単に説明させていただきますね。まず、探索者はEランクからAランク、そしてSランクまでの6つに分類され、Eランクからのスタートになります。安全のため、定められたランクより上の魔域には入ることは推奨しません。ランクは出魔品や魔石をある程度換金することで上げられます。ですが、魔域内から持ち帰った出魔品、魔石は当人の所有物となるので換金せずに使うことも出来ます。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()ですので、気を付けてください」


受付嬢は最後の部分をとりわけ強く言った。

 盗賊のようなことをするやつがいるんだろうな…気を付けよう。


「それと、ここルファトの近辺にはEランクとDランクとCランクの3つの魔域がありまして、Eランク魔域の〔雑木林〕はここを出て右に行った先、西門を抜けてそのまま道なりに少し歩くとあります」


 まだ昼頃だしさっそくこの後行こうかな。


「何か質問はありますか?」


「出魔品には魔導書があるって聞いたんですが、本当ですか?」


「はい、数は少ないですがありますよ。しかし、最低でもBランク以降の魔域からしか出魔しないと言われています」


 Bランクか…


「ちなみに、自分で手に入れなくても、我々がいくつか販売しているものを買うという手もありますね」


 販売!?


「ど、どこで買えるんですか?」


販売という言葉に思わず飛びつく。

受付嬢はにこりと微笑んで続ける。


「左側の魔導書店で購入出来ますよ」


「後で行ってみます…!」


 父さんからは珍しいものって聞いてたけど、魔導書って買えるのか…!


先ほどの職員が奥から戻ってきてカードを受付嬢に手渡す。


「はい、ではカードをお渡しします。色はランクを表していて、Eランクから順に白、銅、銀、金、黒となり、Sランクでは決まった色は無くなり、持ち主の魔力の質によって異なる色に染まるようになります。それとこのカードは換金や本人確認のときに使うので常に持っておくようにしてください。これで登録は完了です」


 お金の色と同じ体系でSランクだけ違うんだな。

カードを手渡してもらう。大きさは手のひらに収まるほどで、しまう場所には困らなさそうだ。


「色々聞けて良かったです。ありがとうございました」


受付嬢は礼を返す。

席を立ちさっそく魔導書店へ向かう。



 ここか。あんまり人がいないな…

読書をしている受付の男性に魔導書の件を聞いてみる。


「すいません、ここで魔導書が買えると聞いたのですが…」


声を掛けられた男性はこちらを見て一瞬驚いたような顔をしていたがすぐに笑顔で向き直る。


「はい、購入できますよ。何の魔導書をご希望ですか?」


「いくつかあるんですか?」


「内容はピンキリですが、ここでは10種類ほど取り扱っております」


「10種類…具体的にどんなものがあるか教えてもらってもいいですか?」


「はい、低価格帯のものだと『飲み物を綺麗に注ぐ魔法』や『爪を綺麗にする魔法』などが。高価格帯になると『草魔法』などがありますね」


 草魔法…欲しいな。でも前の二つも面白そうだ。


「ちなみにお値段は前者の二つがどちらも小銀貨2枚。後者は小金貨5枚となっております」


後半の値段に思わず目を見張る。

 さすがに高すぎる…手持ちは小銀貨3枚。前半のやつなら一つは買える…けど…


「すみません、買うのはまた今度にしておきます」


 魔導書は自分のお金で買いたいから一旦我慢だな。


「そうですか。ではまたのご利用お待ちしております」


 良い魔導書ってあんなするんだなぁ…とりあえずの目標はBランク探索者になることかな。あと高い魔導書もいつかは買いたいな。

目標を胸に集会所を後にし、魔域へ向かった。

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