シェラの敬語は可愛らしいのう。
わんわんぴょんぴょんにゃんにゃんぴよぴよ。
第二十七章
「まず…一番近い…場所…行く…」
「一番近い?」
「この…種類…住んでる…」
「種類?」
「兎…家族…」
「家族?」
「……」
「?」
「この種類の兎が生息している森がこの近くにあるんだ!多分この兎はそこから来た!」
ー最初からそう言えばいいのに…
ノイはそんな心情を視線に乗せてゾーシに注いだ。そんなノイに気づいたゾーシは、冷や汗をかいて顔を背けた。
「あんまり…人間と喋るのは好きじゃない…」
ゾーシは拗ねたようにボソッとそういうと、スタスタと歩き出した。
「人間不信?なのかしら…?」
アニーが不思議そうに言う。
「なに、ですか?それ。」
シェラが年長の二人に尋ねる。
「こら。『何ですか?それは?』でしょう?ちゃんとした言葉を使いなさいな。申し訳ありませんわ。モーシアさん。シェラは礼儀作法を習うのが他人よりもかなり遅くなってしまって…」
アニーがシェラを嗜め、ノイに頭を下げる。
「いえ!お気になさらずに。シェラ、人間不信というのは、人を怖い、と思ってしまい、簡単に人を信じられなくなってしまうことですよ。何か、ゾーシは辛い経験をしたのかもしれません…」
ノイは前を歩くゾーシの背中を見た。その小さな背中は、一体どんな出来事を目の当たりにしてしまったのだろうか。
「そうなん、ですか。」
「シェラペティー?」
「そ、そうなんです、のね。ノイ様!とてつもなくお勉強におなりましたわ。おほほ!!」
姉に低い声で圧倒され、シェラは普段よりももっと風変わりな喋りを始めた。
「わ、わたくし、ゾーシ様とお話をしていらっしゃいますわ!それではご機嫌よー!!」
そう言うとシェラはパタパタと駆けていった。
「…いらっしゃいますは尊敬語…そういう時は、謙譲語、して参ります、または丁寧語、してきます、が正しい…というのに…はぁ…」
アニーはため息をついて肩を落とした。
「まぁまぁ。シェラの口調、私は好きですよ。可愛らしいじゃありませんか。」
「モーシアさん…あの子、食事のマナーも、お客様のおもてなしも、まともに出来ないんですの…幼少期頃、あの子は体が本当に弱くて…お母様はいつも御神にシェラの無事を祈っておられましたわ。回復魔法を覚えてからは自身の体調をある程度は自分でコントロールできる様になったのですけれど…」
「…そ、そういえば、アニー達は何処で回復魔法を覚えたのですか?私は独学でですが、貴女方は本物の魔道士に?」
「魔道士…その表現は、少し違うかもしれませんわ…あの方々は、正に万能。何をしてでも人の上に立てる方々でした…あぁ、小さな兎。思い出しますわ。…マリオ兄妹を。」
その名にノイは目を見開く。マリオ兄妹、伝説の万能ギルド、バーサティルの聖者。アニーはそんな二人に魔法を習った時のことを語り始めた。
わんわんぴょんぴょんにゃんにゃんぴよぴよ。




