流れ星と皇子
遠い昔、一人のとても強い皇子様がおりました。
皇子はたくさんの人間に囲まれながらも、
その強さゆえにいつも一人でした。
誰も皇子の心が寂しさで、少しずつ凍っていくことに気がつきませんでした。
ある日、皇子は隣の国で、一人の美しい黒髪の少女に出会いました。
皇子は少し驚きました。少女は皇子の眼差しに震えることなく、
まっすぐ見つめて話す、初めての人間だったのです。
皇子にとって、それはとても特別で、素敵なことでした。
彼女と仲良くなりたいと、思いました。
でも、皇子は国に戻らなければなりません。
魂が引き裂かれるような痛みを感じながら、別れの挨拶をしにいくと、
流れ星が一つ、夜空に走りました。
物知りな少女が、流れ星に祈ると願いが叶う、と教えてくれました。
二人で手を繋いで、天空を仰ぎ見ると、再び星が流れました。
皇子は、
少女が健やかでありますように、
いつの日か再び見えて、ずっと一緒にいられますように
と祈りました。
月の女神は空の上で、その願いを聞いていました。
女神には少女の、
ひとりぼっちの皇子の願いが叶いますように
という願いも届いていました。
女神は二人が大人になったときに、
今と気持ちが変わらずに真面目に頑張って生きていたら、
叶えてあげよう、と決めました。
やがて皇子は皇帝になりました。
ようやく大人になり、隣の国に少女に会いにいくと、
乙女となった少女は病気になっていました。
皇帝は乙女を抱きしめて、悲しくて悲しくて生まれて初めて泣きました。
皇帝の涙が頰をつたい、乙女の口にポタリと落ちると、
なんと乙女はパッチリと目を開けました。
女神が二人の願いを聞き遂げたのです。
皇帝は美しく成長した乙女に
「結婚してください」と言いました。
少女はニッコリ笑って「はい」と答えました。
皇帝と乙女は皇帝の国で結婚しました。
二人はずっと一緒でした。もう寂しくありません。
〜ガレの昔話〜