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ヒスイの姫物語~あるいは女性オークがエルフの少年と結ばれる話~  作者: 八田D子
第三部 苦悩あるいはまだ見ぬ愛の形
17/20

17話

住んでいる町でお祭りが開催される。周りも活気づく中、キュリアの表情はなぜか曇りがちだった

「私に似合うお洒落な衣装はどれかしら? 南にある花みたいカラフルな奴があるといいんだけど……これとかどう見える?」

 そう言って、手に取った衣装をキュリアの前にかざす。

「うーん、キレイだしいいんじゃないの? 似合うと思う」

「でも、ちょっと色合いが暗くて夜になったら地味に見えない? それともこっちの方が……」

 段々とキュリアの評価もおろそかに、自分の好きなように衣装を選び始めた。やることがなくなったキュリアは、しょうがないので服屋の中を見渡してみる。

 どれも人間族用の衣装で、キュリアには小さすぎるが、たくさんの種類の衣装があるのを見て、キュリアは羨ましく思った。

 オーク族はあまり服装にこだわらないため、男性物はおろか女性物でも極端に種類が少ない。

「決めた! この衣装にするわ……キュリア聞いてる?」

「え? ええもちろん。私もいいと思うわ!」

「全然別の所見ていなかったくせに……でも付き合ってくれてありがとう。貸し出しを頼んで来るから先に外で待ってて」

 キュリアが外に出ると、丁度ヤーニウクを見回っていたスガルとばったり出会った。

「あ、キュリア!」

 キュリアはどきっとした。特にやましいことはないはずなのに、何故かあまり見られたくない所を見られた気分になった。

「服屋に行ってたの? お祭り用の衣装を探してた?」

「ええと、ただ同僚が着る衣装の手伝いで一緒に来てただけで……」

「そうなの? キュリアはどうするつもり?」

「私は工房の手伝いがあるから別に参加しなくてもいいかなって……あ、スガルも忙しいんじゃない?」

「そうだ、商工ギルドに行かなきゃだったんだ。じゃあまたね!」

 そう言って、スガルは駆け出していく。その後ろ姿をキュリアは見送ってほっと溜息をついた。

「私何で安心してるんだろう……」

 己自身でも分からない感情に不思議がっていると、ようやくジニナが服屋から出てくる。

「お待たせ……さっきちらっと見えたけど、あなたの友達のエルフのがきんちょと話してたの?」

「うん……」

 ジニナはスガルの本当の身分を知らない。知ったらきっととても驚くだろう。

「仲良いわよね。エルフの人たちってなんかとっつきづらそうなのばかりなのに」

 そうだ、スガルはエルフ族で私はオーク族。仲がいいのもあくまで友達として……なのに、何故こんな寂しく感じてしまうのか。

「じゃあ、用事も終わったから工房に戻りましょう」

 妙なわだかまりが残ったまま、キュリアは工房へと戻っていく。

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