17話
住んでいる町でお祭りが開催される。周りも活気づく中、キュリアの表情はなぜか曇りがちだった
「私に似合うお洒落な衣装はどれかしら? 南にある花みたいカラフルな奴があるといいんだけど……これとかどう見える?」
そう言って、手に取った衣装をキュリアの前にかざす。
「うーん、キレイだしいいんじゃないの? 似合うと思う」
「でも、ちょっと色合いが暗くて夜になったら地味に見えない? それともこっちの方が……」
段々とキュリアの評価もおろそかに、自分の好きなように衣装を選び始めた。やることがなくなったキュリアは、しょうがないので服屋の中を見渡してみる。
どれも人間族用の衣装で、キュリアには小さすぎるが、たくさんの種類の衣装があるのを見て、キュリアは羨ましく思った。
オーク族はあまり服装にこだわらないため、男性物はおろか女性物でも極端に種類が少ない。
「決めた! この衣装にするわ……キュリア聞いてる?」
「え? ええもちろん。私もいいと思うわ!」
「全然別の所見ていなかったくせに……でも付き合ってくれてありがとう。貸し出しを頼んで来るから先に外で待ってて」
キュリアが外に出ると、丁度ヤーニウクを見回っていたスガルとばったり出会った。
「あ、キュリア!」
キュリアはどきっとした。特にやましいことはないはずなのに、何故かあまり見られたくない所を見られた気分になった。
「服屋に行ってたの? お祭り用の衣装を探してた?」
「ええと、ただ同僚が着る衣装の手伝いで一緒に来てただけで……」
「そうなの? キュリアはどうするつもり?」
「私は工房の手伝いがあるから別に参加しなくてもいいかなって……あ、スガルも忙しいんじゃない?」
「そうだ、商工ギルドに行かなきゃだったんだ。じゃあまたね!」
そう言って、スガルは駆け出していく。その後ろ姿をキュリアは見送ってほっと溜息をついた。
「私何で安心してるんだろう……」
己自身でも分からない感情に不思議がっていると、ようやくジニナが服屋から出てくる。
「お待たせ……さっきちらっと見えたけど、あなたの友達のエルフのがきんちょと話してたの?」
「うん……」
ジニナはスガルの本当の身分を知らない。知ったらきっととても驚くだろう。
「仲良いわよね。エルフの人たちってなんかとっつきづらそうなのばかりなのに」
そうだ、スガルはエルフ族で私はオーク族。仲がいいのもあくまで友達として……なのに、何故こんな寂しく感じてしまうのか。
「じゃあ、用事も終わったから工房に戻りましょう」
妙なわだかまりが残ったまま、キュリアは工房へと戻っていく。