16話
仕事も順調に生き始めたキュリア。やがて町に祭りの時期がやってくるが、何故かキュリアの表情は曇っていた
いつもの工房での作業中、突然同僚のジニナに尋ねられた。
彼女は人族の女性で、ヤーニウク近隣の村に住む農家の娘だったが、ヤーニウクで働き手を募集しているのを知ってやってきた。
工房に来てキュリアと一緒に住み込みで働くことになり、最初はオーク族のキュリアを見て驚いていたが、最近はようやく彼女も打ち解けて接してくれている。
「何を?」
「何って記念祭に決まってるじゃない! 開催までも十日もないんだから!」
近々、ヤーニウクが建立されたことを祝う記念祭が開催される。既に街中では飾りつけが着々と進んでいることを思い出した。
祭りの間、ヤーニウクの広場で様々な食事や飲み物を無料でいただくことができ、朝から晩まで無礼講で続くという。
「祭りの間、誰と過ごすかとかどんな衣装を着ていこうとかあるでしょ!」
「うーん、あまり興味なかったから、そんな考えていなかったわ……」
「まさか! せっかくの祭りなのよ? こんな時くらいパーッと騒いで遊ぼうと思わない?」
「私は静かな方が好きだから……」
信じられないという目でジニナはキュリアを見る。
「それってあなたの種族がみんなそういう考えなの? まあいいわ、せめて私の着る衣装を決めるのくらい付き合ってちょうだい」
午後、商工ギルドへ資材の注文をしに向かう帰り、はんば強引にジニナの衣装決めに付き合う事になった。
ヤーニウクの噴水広場への通りの一角にある、人間族が営む服屋でジニナは衣装を探し始めることにした。