15話
2部はこれで終了。次回からは3部で続きを書いていきます。
スガルはヤーニウクができる前、エルフたちの国ヴァルアーレフ神聖国で暮らしていた。やはり相当な高い身分だったようで、王宮で暮らしており、それまで外にも出たことがなかったようだ。
「ある日、僕は内緒で王宮の外にこっそり出てみた。そこで一人友達になってくれた子がいたんだ」
ダークエルフのカールムという子で、その子とはすぐ仲良くなれたという。その日は彼と遊んでとても楽しい時間を過ごした。
「それで王宮に戻ると、勝手に出たことでとても怒られた。でもまだそっちの方がよかったんだ。カールムと遊んだことを話したら、急に家族の顔が変わった。今まで見たこともない冷たい表情だった。それから調べて分かったんだけど、カールムはバローラだったんだ」
バローラはエルフ族の、中でもダークエルフだけに存在する身分で、死者の管理を行う者たちの呼び名の様だ。
「僕たちの掟では、バローラは直接ハイエルフと関わってはいけない掟があるんだ。同じダークエルフだけとしか話してはいけないし、遊んでもいけない。そういう掟が」
知らなかったと言え、エルフ族の掟は絶対で破ったカールムとその両親は追放された。それ以来、彼ががどうなったのか、分からないままとなった。
「今でも彼に申し訳なく思っている。それ以来、どうして身分や種族が違うだけで、そんな掟が存在するのか疑問に思うようになったんだ」
キュリアの故郷にもそのような身分の者たちがいた。いわゆる奴隷と呼ばれる者たちで、古くに他所から連れてこられた者の子孫だった。彼らの境遇を見て、とても大変だなと思ってはいたが、それはそういう物だと特別納得させていた。
「そしてこの土地に来た時、少しでも身分や種族に関係なく暮らせる町が欲しいと思った。それでヤーニウクを建てる話を聞いた時に、領地の一部を渡したんだ」
色んな種族が集まる町なのは、スガルの思いがあるからなのだろう。そして、スガルが普段身分を隠している理由も。だから、キュリアがオーク族というだけで疑われていた事が許せなかったのだ。
「この考えが間違いなのか正しいのかは未だに分からない。間違いならそれでも構わない。でも、色んな人々が集まる場所がどんな所になるか、それをもっと見てみたいんだ」
「少なくとも私は感謝しているわ。そのお陰で悪者にされずに済んだもの」
「そう言ってもらえると僕も嬉しいな……あはは」
キュリアが微笑みかけると、スガルは照れて顔を赤くする。
この時に翡翠を贈った逸話から、後に彼女が翡翠の姫と言われる所以となったという。