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ヒスイの姫物語~あるいは女性オークがエルフの少年と結ばれる話~  作者: 八田D子
第二部 馴れ初めあるいは偶発的な始まり
13/20

13話

「俺と戦うつもりか? 生意気なちびめ」

 オーク族は丸太をそのまま切り出したような、武骨な棍棒を取り出した。

 対してスガルの剣は宝石がついて刀身もきらびやかな物だが、細く頼りない。今にもぽっきりと折れてしまいそうだ。

「なかなか高そうな剣だ。折れてもいい値で売れそうだ」

 オーク族は既に自分の勝ちを確信し、スガルの持っている剣を品定めするように見下しながら近づく。

「報酬としてその剣も貰ってやる!」

 勢いよく棍棒を振り下ろす。スガルが剣もろとも潰される! キュリアがそう思った瞬間、スガルが一文字に切り払う。

 細い刀身が風を切るように、棍棒をいともたやすく根元から切り落としてしまった。

 何が起こったのか一瞬理解できず、唖然とするオーク族の目の前に剣の先端を向ける。

「エルフ族の知識と技術の結晶であるこの剣は、鋼鉄だって両断するぞ。武器もなくなってこれ以上は損をするだけだと思うけど、それでも続けるつもり?」

 まるで時間が止まったようにその場が静まり返った。誰もがスガルの意外な強さに驚いて声も出せなかった。キュリアでさえ自分の見ている光景が信じられなかった。

 やがて、オーク族は踵を返してその場を去ろうとし始めた。

「おい、どこへ行くつもりだ!」

「やめだ。武器も失って後は損なだけだ! これだから他種族の依頼は嫌なんだ……!」

 そんな捨てセリフを吐きながらオーク族は逃げ出す。その後をついていこうとする二人組に、スガルは目にもとまらぬ速さで近づき剣を振った。

 すると、ローブは細切れになって、その下の人間族の顔があらわになった。

「これで顔は覚えた。今回は見逃してやるけど、次に同じようなことがあったら、その時は捕まえてやるからな」

「ひ、ひいぃ!」

「そうそう、どこでもいいから早く行きな。僕たちは用事があるんだから」

 いとも容易く男たちを追い払うと、スガルはキュリアの方へ振り返った。あどけないその顔を見ていると、剣を振っていた時とは別人としか思えなかった。

「余計な時間かかっちゃったね。さ、行こうか」

 商工ギルドの事件の時、スガルはわざと自分から捕まりに行ってたが、抜け出せる自信があったからだ。キュリアはそう思った。

「あんなに強かったなんて知らなかったわ」

「別に隠していたつもりはないよ。エルフ族の男は騎士として幼い頃から剣術を習うんだ」

 二人は森の中を歩いていた。既にここはエルフ族の領地だ。スガルの住んでいる屋敷がある土地とは違うが、キュリアが通ってきた城壁山脈が近くに見える。

「着いた。ここだよ」

 そこはすぐそばで川が流れている石切り場のようだ。ただ、まだできたばかりで、くみ上げられた材木もま新しい。

「近々、ここの石材をヤーニウクに運ぼうと思っててね。まだまだ発展する余地があるから、建築材はいくらあってもいいんだ」

 そう言いながら、スガルは細かい石を集めて作った山から一つ無造作に取り上げて、キュリアに渡してきた。

「ここにあるのは小さくて使えない物なんだけど、練習用にどうかなって……」

「嬉しいけど、石を削るのってあんまり可愛くないんじゃ……」

 そう言いかけて、キュリアは手にした石の違和感に気づいた。

「あれ、これって翡翠?」

 小石の表面が僅かに緑がかった部分がある。故郷でも何度か見たことがある、翡翠という鉱石だ。

「無骨な石にもきれいな物が隠れてるかもしれないよ」

 スガルの言う通り、ちょっとこだわり過ぎていたかもしれない。

「そうだよね……ありがとうスガル。やってみるね」

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