10話
この話までを一部として、一区切りとなります。
それからはあっという間だった。首謀者のシンキンと盗賊たちは捕まり、エルフ族の技術書はすぐに戻ってきた。
スガルはその後、商工ギルドの代理ギルドマスターとして、今までシンキンが行ってきた他種族商人への不当な請求を取りやめた。時間はかかるだろうが、これで再び色んな種族がヤーニウクに訪れるようになるだろう。
一方、キュリアは自身の身の潔白を証明し、さらに解決の功労者として褒賞も手に入ったので、ヤーニウクに残っていた。
一緒にいたスガルはあの後、正体がばれると町に出にくくなるからキュリアが一人で解決したことにしてくれと言ってきた。そのため、キュリアが一人で盗賊たちを見つけて倒し、衛兵に通報したことになっている。
そのおかげでキュリアは一躍有名人になった。オーク族にもいい人がいる。だから怖がる必要はないのだと自ら証明することができた。
「やあ、お姉さん久しぶり」
町を歩いていると、スガルに出会った。初めて会った時みたいに、平民の格好をしている。
「久しぶりって……一人で出歩いて家臣の人たちに怒られないの?」
「一人で来てるのは爺やたちには内緒だよ。仕事で色んな人と会うから、たまにはこうやって一人にならないと気分転換にならないんだ。お姉さんはどう?」
「うん、雇ってくれる場所が見つかったから、ヤーニウクで生活を続けようと思っているの」
「本当!? それはよかった!」
キュリアの方も、外の世界で初めてできた知り合いで嬉しかった。種族は違えど、共に生きていく事ができるのだと。
「じゃあ、そろそろ戻らなきゃ。また会おうね!」
そう言ってスガルは走り去っていく。出会ったこの二人が、やがて種族や身分を越えて愛を育んでいくのだが、それは当の本人たちもまだ知らない。
まだ話を予定していますが、年内はこれまでの話の改稿・改題を行います。