勇者よ、私のセリフを奪うな!
ある日、突如として魔王城に爆音が鳴り響いた。
「な、なんだ!?」
慌てふためく魔物たち。
直後こんな叫び声が聞こえてきた。
「勇者だっ、勇者が攻めてきたぞーーー!」
「うるさい」
一筋の光がさしたかと思うと、その魔物は一瞬の
うちに倒されてしまった。
勇者は呆然としている魔物には目もくれず、ただ
反抗して来る者がいれば作業をするかのように
倒して行った。
そうして進んでいくうちに、とうとう魔王のいる
部屋に到着した。
「よぉ、魔王」
勇者は友達に挨拶するかのようなノリで魔王に
話しかけた。
「よく来たな勇者よ。人間が勇者召喚を行ったのは
耳に入っていたが、よもやこんなに早く成長し
ここまで来るとは思わなかったぞ。」
魔族の領地のすぐ隣の国が勇者召喚をした。
別世界から召喚された勇者は、最初の方こそ
戸惑っていたが正義感の強い者だったらしく
すぐに修行を始めた。
勇者は直ぐに成長し強くなった。そして今魔王城まで
攻め込んで来たのだ。
しかし、その成長スピードが尋常ではなかった。
召喚されてから今に至るまで、僅か2週間である。
そんな勇者は定型文を述べる。
「なぁ魔王、なんでお前は人間の領地を略奪するんだ?」
「フッ、そんなの領地が広いに越したことはないからだ。領地が広ければ我々も今よりもっと快適に過ごせるからな。」
「そうか、ならお前に世界の半分をやろう。」
「what?」
「だから、お前に世界の半分をやるって言ったんだよ」
「えぇ・・・・・・」
勇者からの想定外の発言に魔王はうろたえていた。
「いや、勇者がそんなこと言っていいの?というか
それ私のセリフじゃない?」
「だってお前らの望みは領地の拡大なんだろ?
ならお前に土地あげれば済む話じゃん。」
「いや、それにしたって・・・・・・」
「なんか今まで国のために頑張ったけど、魔物とはいえ生きてるのを倒すのはちょっと気が引けてさ〜。」
「ここに来るまでに結構倒して来てたよね?」
「それは向こうから襲ってきたから、自衛のために
仕方なくだよ。」
勇者と魔王はしばらくこんな会話をしていたが
日が沈み始めた頃、勇者がひとつ提案をしてきた。
「もう埒が明かないから今日はとりあえず帰るよ。
1週間時間をやろう、よく考えておくんだな。」
「ちょっと!それも私が勇者に言おうとしてたのに
なんで言っちゃうの?新手のいじめなの?
あと、口調変わりすぎじゃない?」
魔王に精神的ダメージ500。効果はバツグンだ!
「ごぢゃごちゃうるさいなー。倒すよ?」
「す、すいません・・・・・・」
勇者は、ため息をつきながら面倒くさそうに
帰って行った。
(今、本気でやられるかと思った・・・・・・。
あいつの方が魔王向いてるんじゃないの?)
そう思いながら魔王は城の修復をしていくのであった。
連載中の作品の投稿をまだ再開できそうにないので
1度短編のものを出します。
投稿再開までもう少し待っていただけると
幸いです。