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主人公の補佐は大変です。  作者: フレンド
こうしてモブの物語は始まる
3/6

封印された悪しき過去・・・・・・もしくはただのトラウマ

ミッションコンプリート


「疲れたー」


 私の声に反応して周りの生徒が何人かこっちを見てきた。入学式の最中なので私の呟きも聞こえたらしい。気おつけないと。私は教頭先生らしき人の話を聞きながら先ほどのことについて考えていた。


 アイリス・フォン・アイデーー別名『アイデのおてんば姫』

炎魔法が得意でその名前の通り好奇心が旺盛でたびたび城を抜け出して護衛を困らせている王族の問題児。母親は第二妃だがもともと体が弱く、アイリスが生まれたときに亡くなったらしい。そのため王様もついつい甘やかしてしまい手が付けられないとか。反面誰にでも優しく、身分の低い人にも丁寧に接するので市民の評価は高いらしい。


 あのあと彼女が来てからは展開が早かった。伯爵令息のほうは王女様に笑顔で何か言った後、レオンに親の仇をみるよな顔をして去っていった。あのあと王女様はレオンと巻き込まれた少女に何かいっていたがあんまり長くいると見つかるのでその場を後にした。レオンはかなり目立ってしまったけど対象の一人とつながりを作れたから結果往来なのかな。もうあんなことはやめてほしいけど。


 そうこう考えているうちに教頭先生の話が終わり、学園長の話が始まった。内容は身分平等のことや学業のことなど当たり障りのないことを話していたが、ときどき私の顔をみていたような気がする。そりゃそうだ、誰が護衛なのか確認するのは当たり前だ。しかも私は以前ここで問題を起こしたし。そんなことを思っていると学園長は一通り話をした後、別の会場へ移動していった。学園長も大変ですね。


 そのあとも何事もなく進行していき、残すは新入生代表のアイリス王女の挨拶だけとなった。


「若草の香りが風に運ばれてくるこの季節。皆さまとともに入学できたことをたいへんうれしく思い・・・・・・」


 彼女が話し出すと会場の雰囲気が変わったのが目に見えてわかる。先ほどの諍いのときといい、まるでおてんばの印象とはかけ離れているんだが。


「・・・・・・ることでしょう。最後に話が変わりますが、学園内は身分平等です。平民や爵位関係なくたくさんの人たちがこの学園生活を過ごせるように私も死力を尽くしていきます。新入生代表アイリス・フォン・アイデ」


 おい、最後に少なくはない貴族至上主義の人たちにけんかを売っていったぞ。教師たちも少しざわついてるし、問題児の片鱗が少し見えた気がする。この人に目をつけられてレオンは本当にうまくやっていけるのか?


 そうこうしているうちに入学式が終わって貴族たちが移動し始めている。確かこの後は建物の前でクラス分けの発表だったはず。ゆっくりしていると確認できるのが遅くなりそうだ。


 まだ始まって初日なのに懸念することが増えて胃がキリキリしそうだ。そんな私の様子を見ていたのか一人の男子生徒が話しかけてきた。


「あの~、大丈夫ですか?」


「え?」


 見上げると眼鏡をかけた茶髪の優しそうな少年が見下ろしてた。まさか声をかけられると思ってもいなかったので驚いていると男子生徒の顔がどんどん曇っていった。


「え、えっと! 気分が悪そうでしたので。私の勘違いでしたら申し訳ありません」


「いえ、心配してくれてありがとうございます。私はカイト・フォン・スカイプといいます。辺境の男爵出身なのでそんなに畏まらなくても大丈夫ですよ」


「あ! 名前を言わずにすみません。ぼくはテオ・フォン・サリオスって言います。ぼくも男爵家出身なので仲良くしてくれたらうれしいです。敬語もないほうがいいです」


「じゃあお言葉に甘えて。テオも敬語じゃなくてもかまわないよ」


「ありがとう。やっぱり敬語は慣れてないからこっちのほうがしゃべりやすいや」


 少し弱気だけどすごいやさしそうな人だ。あとすごい母性を刺激しそう。先輩の女生徒を無意識に功落するタイプの人だ。


 サリオス・・・・・・どこかで聞いたことがあるんだけどどこだっけ? まあ、思い出せないということはそんなに重要なことではなかったのかな。


「ねえ、テオこの後のクラス分け発表一緒に見に行かない?」


「テ、テオ!?」


「ああごめん、いきなり名前呼びはなれなれしかった?」


 確かに初対面で名前呼びはなれなれしいな。気おつけないと。


「いや、少し驚いたけど全然。これからも名前で呼んでほしいな」


「ならよかった。私のこともカイトって呼んでよ。学園内は身分関係ないし」


「そうですよね。これからよろしく、カイト君」


「こちらこそ。早速で悪いんだけど・・・・。そろそろクラス分け見に行かない? 早くしないと混みそうだし。」


 というかもう私たち周りには誰もいない。テオと話してたら思ったより時間がたっていたらしい。今から急いでも間に合わなそうだ。


「ああ! そうですね! 早くいきましょう。」


 そう言ってすぐ発表場所に歩き出しだ。


 自分から言っといてなんだけどもう間に合わないけどね。そんなことを思い肩をすくめて私はテオを追いかけていった。





「ところでカイト君はどのクラスに入りたいの?」


 クラス分けの結果が表示されている場所に向かう途中テオが私に聞いてきた。


 この学園では平民と貴族合わせて合計800人近くの学生が毎年入学する。その中で、実技が優れた生徒が入る騎士(ナイト)コースが2つ、座学が優れた座学に優れた生徒が入る賢者コースが2つ、魔法が優れた生徒が入る魔法使いコースが2つ、そしてすべての評価が高い生徒が入るマスターコースが1つ、残りの一般コースが13つ、各クラス40人ずつの合計20クラスもある。私とテオが一緒になる確率はかなり低い。


「あー、私は実技がからっきしだったから一般コースかな。でも座学には自信があるから賢者コースに入ってたらいいな」


「そっか、ぼくも座学は自信あるから一緒に賢者コースに入れるといいね」


 テオには悪いけど私は賢者コースに入ることになっている。どのクラスに入るかドキドキしているテオを見てるとズルをして決定していることが申し訳なく思ってしまう。


「あぁー、やっぱり人でいっぱいだね」


 そんなことを思っているといつの間にか目的の場所についたらしい。ただやっぱり混んでいて確認できるのは時間がかかりそうだ。


「そういえばテオの好きな食べ物ってなに?」


 クラス分けの話がきまずかったので無理やり話を変えることにした。領地とか昔の話をするといつかボロが出そうだからなるべくありきたりな質問にしよう。


「そういえばってなにが?」


 質問に質問で返された。少し雑すぎたか?

 

「いや、せっかく仲良くなったんだからお互いのこともっと知りたいじゃん」


「ああ、そういうこと。ぼくは月光茸が好きかな。風邪ひいたときメイドさんがよく作ってくれたんだ。」


「月光茸か、そんなに食べたことないけどすごいおいしかった気がする」


 月光茸はその名のとおり月の光を浴びて光るきのこのことだ。生息数が少なく貴族でもなかなかお目にかかれない。 私も二年前に食べたっきり食べてない。


「うちは月光茸が特産品だったからね。2年前は大変だったけど・・・・・・」


 思い出した! サリオス領だ!


「また顔色悪いけど大丈夫?」


「だ、大丈夫だよ。問題ない・・・・・・」


「でもすごい汗かいてるよ! やっぱり保健室行った方がいいよ」


「ほ、ほんとに大丈夫だから! 心配してくれてありがとう」


「そ、それならいいけど・・・・。すごしでも気分が悪くなったらぼくに言ってね」


「わ、分かった」


 自分でも笑えるくらい動揺してるのがわかる。それにしてもサリオス領か。確かに記億にある・・・・・・嫌な思い出として。 


 2年前サリオス領に魔物が暴れて騎士団では手が付けられないからと王国から依頼が来たことがあった。ちょうどレオンが入ってきてすぐの依頼だったのでこれ幸いと所長はメンバー1人を保護者としてつけて討伐に行かせた。


 結論から言うと魔物は一片も残らず消し飛んだ・・・・・・そして森も一片も残らず消し飛んだ。


 思えば保護者としてあの戦闘狂をレオンと一緒に行かせたのが間違いだった。魔物を無事に討伐した後興奮したあいつは何をとち狂ったかレオンと戦い始めたらしい。1晩中戦い続けて終わった頃には文字どり何もかもが終わっていたとか。


 結局あの後は所長は王国中を謝罪行脚、レオンはショックで1ヶ月ほど引きこもり、保護者のあいつ至っては逃走するという大事件となった。


 消し飛んでしまった森は植物魔法が得意な奴が3日間という化け物じみた早さで直した。その間私は3日間ずっと水魔法ほ使いながら森を歩き回るという拷問を経験した。


 森は3日間で元通りになったが生態系はそうとはいかず結局すべてが元通りになるのに3ヶ月の期間を費やすこととなった。


 あの出来事以来月光茸は一度も食べてない。それどころか忌まわしき記憶が蘇るから見てさえいない。


「あ! ぼく賢者コースに入ってる」


 自分から話題を振って墓穴を掘っているとクラス分け表の前についたらしい。確認すると私もちゃんと賢者コースに入ってた。というか入ってなかったら大問題だ。


「私も入ってたよ。αクラスだったけどテオは?」


「ぼくはβコースだったよ。同じクラスになれなかったのは残念だけどお互い賢者コースに入れてよかったね。」


 テオの言ってる通り2人とも賢者コースに入れてよかった。クラスも隣にあるはずだから学園生活でも気軽に会えそうだ。


 レオンの方も確認してみると無事マスターコースのSクラスに入っているようだ。あそこには王女殿下ともう一人の護衛対象がいるからぜひ頑張ってほしい。


 初めての学園生活で初めての護衛任務、正直どうなるか不安でいっぱいだ。レオンだって緊張しているに違いない。イヴは・・・・・・多分いつも通りだな。


「カイト君? 早く行こうよ」


 ・・・・・・ただ、テオを見ていると何となくだけどうまくいく。そんな気持ちがわいてくる。


 そんな気持ちも抱きながらテオの後をついていった。




【悲報】ストックがなくなる(白目)

 まあ、気楽にがんばります。


次回の投稿は日曜日を予定しています。

良ければ感想よろしくお願いします。

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