テンプレ回収が早すぎでは?
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テオニカ王立魔法学園ーダキ大陸に存在する国々の中でもっとも栄えてる国、アイデ王国の王都テオニカにあり、王城をも超える大きさの建物施設である。15歳から3年間、この学園で生徒たちは一般常識や各々の専門分野を学ぶためここに入学する。またここは貴族の子供同士の社交界みたいな役割もあるらしく、男爵から王族までほとんどの子供が入学するらしい。さらにここに入学する平民のほとんどが貴族にスカウトされること人がほとんどなので、実質貴族のための学園といってもいいかもしれない。つまり何が言いたいかというと・・・・
「なんか・・・・でかいな・・・・」
いったいどんな馬車が通るのかと疑うくらいにおおきな門とそこから続く道はとても学園とは思えないほど長く終わりが見えない。極めつけはこんなに距離があるのにはっきりと見える校舎と何もかもが桁違いの大きさだ。テオニカ王国の貴族がここで3年間過ごすので基本何でもこの学園にはそろっているらしい。なんでも3年間一度も学園の敷地を出ずに過ごす学生もいるとかいないとか。
「貴族が通う学園だから予想はしていたけどまさかこれほどとは」
今回の任務メンバーのなかで比較的ましな私は辺境の男爵家の長男ていう設定なので、レオンとイヴとは別行動だ。ちなみにレオンは別大陸から来た天才剣士・・・・はよしとして、イヴにいたっては学園長に拾われた捨て子とか控えめに言ってめちゃくちゃな設定としかいいようがない。
「とりあえず、護衛対象は4人か」
3人では少ない気がするが4人とももちろん専属の護衛はついているし、何しろ学園内で何か起きるとは思いにくい。しかも今回はあいつもいるから問題はないはずだ。
「それにしても学園生活か・・・・・・」
任務とはいえ自分がこんな生活を送るとは思わなかったぞ。
校舎に続く道を歩きながら私はあの時のことを思い浮かべていた。
「失礼します」
「ん?どした」
「いえ、いくつか質問したいことが・・・・・・」
再度事務室を訪れると所長はけだるそうに頬杖をついていた。美人はなにをしても絵になるな。
「なんだ、知ってる範囲なら答えるぞ」
「では、お言葉に甘えて」
私は今回の任務で一番疑問に思っていることを聞いてみた。
「今回、私たち3人にいくように命じたのは同情からですか?」
「・・・・・・」
こう見えても所長は慎重に慎重を重ねるタイプの人間だ。王族を護衛するのが私たちだけなんてありえない。そしてあいつがいる以上私たちがやることなんてほとんどない。
「所長は私たちに学園で何をしてきてほしいのですか」
「・・・・・・」
わずかな沈黙のあと所長が参ったといわんばかりに手を上げた。
「・・・・はぁ、カイトにはすべてお見通しなわけか」
何が『お見通しなわけか』だよ。それを見越していたくせに。
「そう苦い顔をするな。決して同情したからではないよ。ちゃんと君たちの成長を考えてこの依頼を託したんだから」
王族の護衛任務を教材みたいに使っているのか!? さっきの考えは間違ってたかもしれない。
「まあ、何をして来いというわけじゃなくてちょっとした情報だよ。あの2人にも言うとあまり良いほうにいかないと思ってな」
そう一息ついたあと所長は私に話してくれた。
「君が言った通りもう学園にはあいつが先に潜入している。単刀直入に言うと君たちはあいつの隠れ蓑になってほしい」
「? つまり私たちは護衛対象にバレるように行動しろと」
「バレないのがベストだが・・・・君たちには無理だと思うぞ」
そう言われると否定ができない。私だって自信がないし、あの二人は言わずもがなだ。
「つまり最悪私たちはバレてもいいという認識でよいのですか?」
「最悪な。別にバレても支障はないが問題ではあるんだ。ああ、護衛とバレても誰から頼まれたとか、この組織の名前は出さないでくれよ。後々大変なことになるから。」
「そんなことわかっていますよ」
多分あの二人もそのことはわかっているはず。・・・・わかってるよな?
「ああ、あと一般の学園の生徒の範囲としてでいいから古代の魔道具についても調べてきてくれ。あそこは最先端の研究もしているから何か手掛かりが見つかるかもしれん」
「・・・・・・・・・・」
「そんなに拗ねるな。もしかしたらお前の低身長もどうにかなるかもしれんぞ」
「大きなお世話です!」
150㎝で何が悪い。イヴよりはでかいから何の問題もないのだ。
「ああ、このことはあいつらには言わないでおいてくれよ。2人はそこまで器用ではないからな。」
いじられて無視された。これだから所長が苦手だ。
まあ、わたしもそこまで器用じゃないんですけどね。まだなにか隠してる気もするけど話してくれなさそうだし、ひとまずこれで聞きたいことは聞けたかな。
「それでは失礼します。」
私が部屋を出ようとドアノブに手をかけたとき、所長から声をかけられた。
「ああ、ちょっと待ってくれ」
「? なんでしょう」
「もしもやむおえないとき、私の許可を得ずに自身の判断であれを使用しても構わない。」
「王都でもですか?」
「んなわけあるか。周りに関係のない人がいない状況でだよ。君のは特に見境がないんだから」
ですよねー。
「わかりました。では、失礼します」
所長のあきれた視線を浴びながら今度こそ部屋を後にしたのだった。
「行ったか・・・・」
カイトを見送ったあと、フラン・E・イリシオンは椅子に腰を深くかけた。
テオニカ王立魔法学園は名前の通り王国が運営しているので警備もかなり厳重であり、不審な人物が入ることなどまずない。正直な話今回の護衛はあいつ以外必要ないとフランは考えていた。が、あの3人ーー特にカイトは参加させたほうがいいと直感がそう告げていた。いうなればお節介以外の何ものでもないのだが。
学園という平和な日常、レオンとイヴという信頼している仲間、今回の護衛対象の存在、そして古代の魔術・・・・おそらくこの依頼でカイトは大きく変わるとフランは思っている。それがよいほうか、悪いほうかはわからないが。
「それでも、見たくなってしまったよ。君たちの紡ぐ『物語』を」
まるで懺悔をするかのように聞こえるフランの呟きは誰にも聞こえることなく消えていった。
「着いたか」
先日のことを思い出してたらいつの間にか校舎の前についていたらしい。周りを見渡すと制服をだぼだぼに着ている新入生らしき人たちもちらほらと見える。
しかし改めてみるとやはりすごい大きい校舎だ。余裕をもって出たけどちょっとでも迷ったらになったら入学式に遅れてしまいそうだ。
この学園には第一から第三の3つの講堂があり、貴族が入学式をする場所は第一講堂だったはずだ。間違えて別のところに行ったら大変なことになりそうだ。
私が辺りを見渡していると突然後ろから怒鳴り声が聞こえた。
「貴様ぁ! 伯爵の俺にたてつくのか!」
「学院内は貴族とか平民とか関係ないだろ! それに彼女も嫌がっているじぁないか!」
びっくりして後ろをを振り返ってみるといかにも高貴な感じの男と平民が争っていた。貴族で平民の男はよく見えないがずいぶんと勇気のある男らしい。なるほど、貴族に絡まれている女性を助けるために出てきたのかな?それにしても小説に出てきそうな人たちがいるもんだな。それと伯爵はお前じゃなくておまえの両親だろ。
「なんだと! 二度と学園生活を送れないようにしてもいいんだぞ!」
伯爵令息はよっぽど頭に血が上っているのか、平民の胸倉につかみかかった。そのとき初めて平民の顔がみえた。・・・・・・というか知ってる顔だった。
な、なにやってんだぁぁぁレオォォォォン!
ほんと声に出さなかった自分をほめてあげたくなる。というかあいつはいったいなにをやってるんだ!?初日から面倒ごとに突っ込んでいくとか神経がイカレてるとしか思えない。
「やれるもんならやってみれば? 親の地位でしか威張れない君だと無理だと思うけどね」
あおってんじゃねぇ! あいつ完全に任務のこと頭から抜け落ちてんだろ。
まずい、このままでは乱闘騒ぎで問題になりかけないし何とかしないと。ていうかもう周りの生徒は完全にレオンたちを見ているし・・・・。ただ(設定上)辺境の男爵の私が混ざっても余計事態を混乱させるだけだし・・・・・・あれ? 詰んでね?
「これは何の騒ぎですか」
私が現状に軽く絶望していると一人の女生徒が諍いに入ってきた。
燃えるような赤髪にエメラルドのような透き通った目、まるで日の光を知らないといわんばかりの白い肌、堅苦しい制服を着てなお溢れてくる気品と威厳。資料で見たけど間違いないあのひとは・・・・
「アイリス・フォン・アイデ第三王女殿下」
今回の護衛対象の一人が私たちの前に現れた。
あと一話がんばるぞい!