記憶の整理
短いです。非常に。
『ねぇ千聖、ハビエル王子のルートクリアした?』
『もちろん!今はサンダリオのルート攻略中だよ。でもハビエル王子のルックスが1番いいよね!』
(千聖……。私の前世の名前ね。やっぱりこの世界は私のプレイしていたゲームの世界なのね。)
マリアネラは夢を見ていた。前世で友人に勧められて始めたゲーム。よくある爵位を買った男爵家のヒロインが王子や今の兄達と恋をする王道のやつである。しかし作品内に出てくるキャラクターやスチルのイラストが、有名な絵師さんのものであった事でかなりの人気を博していたのである。
そんな事を思い出しているとまた目の前がぐるぐるする。次に出てきたのは長い間通っていた道場である。
『次!切り返し30回!』
『『はい!』』
小学生から死ぬまでずっと指導してくださった道場の先生と生徒の声が響く。またこの場所で剣を握りたい。
「んん……」
脳が覚醒し、視界はマリアネラの生きる世界に引き戻された。パニックだった8歳の頭も大分整理が着いたようだった。
「マリアお嬢様、お目覚めですか?」
近くで付いていた侍女のパウラが声をかける。幼い頃(今も幼いが)からマリアネラのお世話をしてくれる侍女である。
「うん……どのくらい寝てたのかしら?」
「そこまで長くはなかったですよ。一日半くらいですね。」
一日半は寝すぎでは?と思ったが、そのくらいの時間は必要だったと思う。そんな事より今後のことをかんがえなくては。屋敷内が静かになった夜。マリアネラはベッドを抜け出し、自分が座るには少し高い文机の中から数枚の紙を取り出す。そこに前世のゲームの記憶を書き連ねた。