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世界大戦は何処にありや?異世界は知らんと欲す  作者: 富鹿屋
第三章 会談

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会談-4

 俺は、目の前の事態に混乱することしかできなかった。

 味方の兵たちは、上陸前に決めていた配置に就くことも出来ず、ただ小隊毎に固まって立ち尽くしてどうしたものかと話し込んでいる。

 あまり言えた義理ではないが、少なくとも身を隠すことぐらいはしてほしい。

 確かに、俺も中隊指揮班と海軍陸戦隊の一個小隊を背に控えさせた状態で、軍刀を構えて立ち尽くしているのは非常に滑稽な姿だろう。

 

 向こうに敵意がない以上、こちらにも戦闘する気は毛頭ない。それが師団長の命令だったからだ。

 俺は、腰の鞘に軍刀を戻すと背後で固まっている陸戦隊の吉永少尉を呼び寄せた。


 「少尉、どう見る?」

 「いえ…正直に言って理解不能です。木に隠れて様子を見るならともかく、写真を撮られてそのうえ喝采まで浴びては……」

 「だよなぁ…。モールス信号の解読は?」

 「少しお待ちください」


 そういって吉永少尉は、更に後ろにいた無線兵に近寄ると一枚の紙を受け取ってから俺のところへ戻ってきた。


 「たった今、終わったそうです。どうぞ」

 「構わん、読み上げてくれ」

 「はい……えーっと“ワレニテキイナシコウゲキスルナ”…以上です」

 「敵意無し、攻撃するな…か。……小隊長、集合!」


 モールス信号の内容は、敵意がなく友好的であるとの事だった。

 つまりは、憎むべきアメリカ軍だが、何かしらの理由があると思っていいだろう。


 「中隊長、一体どうすれば?!」

 「そうです。いくら敵意が無いとはいえど捕虜にするべきです!」

 「しかし、捕虜といっても敵の数も装備も分からん…大勢で逆上されたら、こちらが一掃されるぞ」


 集まってきた小隊長に先ほど解読出来たモールス信号の内容を説明した時の返答である。

 たしかに捕虜を取るなとも言われてないが、取ってもいいとも言われていない。

 全ては、中隊長である俺の責任として扱われるだろう。


 「とりあえず、警戒を怠るな。罠だった場合、一網打尽にされかねん……」


 俺が、思案していると後方の海上から飛行機の爆音が近づいてくるのが分かった。

 振り返ると、一機の零戦が低空飛行で海岸に近づいてきている。

 その零戦は、途中で進路を変えると海岸線に対して並行に飛行をし始めた。


 「まさか…海軍は早まって地上攻撃を…!?」


 隣にいた第一小隊長が、慌てた声を上げる。

 俺もまさかと思ったが、その声に反応してしまった。


 「全員、手を振れ!攻撃を止めさせろ!」

 「いや、中尉…あれは…」

 「なんでも良いから手を振れ!」


 俺の声に呼応して、中隊の面々は頻りに低空飛行の零戦に向かって両手を振った。

 しかし、陸戦隊の奴らは此方を面白そうな顔で見つめるだけだった。

 そして、零戦は俺たちの頭上を悠々と通過していった。

 通過する際に、零戦の操縦席から小型の落下傘を着けた筒が投下されて、俺たちの目の前に落下してくる。


 慌てて伏せる俺たちに耐えきれなくなったのか、陸戦隊のほぼ全員が大声で笑い出した。

 ゆらゆらと落下してきたそれは、金属製の筒のようなものだった。


 「くっくっく……中尉殿、あれは通信筒です」

 「なに?通信筒?」

 「はい。さっき無線で長門に状況を説明したら、後で連絡すると言われました。多分、その連絡でしょう」

 「そういうことは早く言ってくれないか…俺はてっきり……」

 「支援要請もしていないのに、攻撃するはずないでしょう」


 早とちりしていたのは陸軍(そちら)だと言わんばかりの表情で、海軍の吉永少尉は笑っていた。

 俺たちは服に着いた砂を払い落しながら、立ち上がった。

 そして兵の一人に通信筒を拾いに行かせ、受け取ると中身を読んだ。


 通信筒の中身には、「アメリカ軍とドイツ軍に接触して状況を知らせろ」と書いてあった。

 その下には、非常時には信号弾をもって地上攻撃支援を開始するとも書かれていた。

 俺は、読んだ中身を小隊長に見せてから吉永に渡した。


 「…とのことだ。俺が行くのは決定として、吉永…お前にもついてきてもらうぞ」

 「無論です。少しですが英語が出来ます」

 「上等だ。後は護衛に一個分隊連れていく」

 「第一小隊から一個分隊出します」

 「分かった。呼んで来い…残りは海岸で警戒待機だ」

 「はっ!」


 そこで小隊長たちは解散して、俺と吉永少尉が話す内容を考えていると直ぐに一個分隊が走ってこちらに向かってきた。 

 一応、全員が小銃に着剣していることを確認してから、俺と吉永少尉を含めた一個分隊一四名が目の前の森へと向かった。

 俺は、手拭いで急いで作った白旗を持っている。軍使であることを知らせるためだ。



 向こうもそれを認めたのか、数人の兵が森の中へ走って消えていった。

 おそらくこの場を預かっている将校を呼びに行ったのだろう。

 こっちを見つめていたアメリカ兵の目前にまで進み出ると、俺は英語で話しかけた。


 「I'm Lieutenant Sawamura of the Imperial Japanese Army.I want to talk to your officer. Can you ask for a messenger?」(私は大日本帝国陸軍の澤村中尉だ。そちらの将校と話がしたい。伝令を頼めるか?)

 

 英語を話す日本人がよほど珍しかったのか、それとも単に日本人が珍しいのか分からないが、俺が話しかけた若い兵隊は目を白黒させていた。

 そのアメリカ兵の袖についている山型線が一本だけなので、下っ端の兵隊という事は分かる。

 そして写真が趣味なのだろう、震える両手にはカメラがしっかりと握られていた。


 「このアメリカ兵、俺たちに怖気づいたのか?」

 「まさか…武者震いじゃないのか?」


 護衛でついてきていた兵隊たちが小声で会話していた。

 あまり楽観的になるのも悪いが、悲観的になるのもまずい。

 そう思った俺は、出来るだけ砕けた喋り方で再びその若いアメリカ兵に話しかけた。


 「Hey, young soldier. Could you take a picture of us?」(なぁ、若いの。俺たちの写真を撮ってくれないか?)

 「What?」(なんだって?)

 「It's a photo. Right?」(写真だよ。いいだろ?)


 困惑する若いアメリカ兵を半ば置き去りにしながら、俺は引き連れてきていた皆に向けて言った。

 

 「おい、あのアメリカ兵が写真を撮ってくれるそうだぞ。全員、いい顔しろよ」

 「中尉?!何言ってるんですか!」

 「構わんだろ吉永少尉。命令に違反してるわけじゃないしな…ほら早く並べ」


 慌てる吉永少尉や他の兵隊たちをあえて無視して、俺は全員を若いアメリカ兵の正面に来るように立たせた。

 そのアメリカ兵も何となく状況を理解したようで、もはや諦めといった表情でカメラを用意していた。

 俺と海軍の吉永少尉を中心に置いて、周りにいる兵たちは立て銃(たてつつ)の状態で立っていた。


 「Are you ready?」(用意できたか?)

 「...year」(…あぁ)

 「well done. Come on, take a picture」(よし。なら撮ってくれ)

 「OK. count three seconds」(わかった。三秒数える)

 「撮影三秒前だ!笑えよ」


 若いアメリカ兵は、カメラをこちらに構えて三秒を数える。

 

 「three...two...one...」

 「三…二…一…」


 カチリとシャッターが落ちる音が微かに聞こえてアメリカ兵はカメラを下した。

 俺は、撮影が終わったと告げると皆は小銃を脇に構えて警戒を始めた。

 その時、森の奥から中年のアメリカ兵と若いドイツ兵の二人が走ってきた。

 俺たちの事は無線か何かで聞いたらしく、俺たちに目掛けてまっすぐ向かってきていた。


 その二人は俺たちの前に来ると、中年のアメリカ兵のほうは息が上がったらしく肩で息をしていた。

 対照的に若いドイツ兵のほうは息が上がっておらずケロリとした表情だ。

 俺は構わず話しかけた。


 「I'm Lieutenant Sawamura of the Imperial Japanese Army.Are you the commander here?」(私は大日本帝国陸軍の澤村中尉。あなたが、ここの隊長か?)

 「...That's right.Major Colin Locke of the US Army.」(…そうだ。アメリカ陸軍のコリン・ロック少佐だ)

 「German Wehrmacht Lieutenant Peter Arendt.」(ドイツ国防陸軍のピーター・アーレント中尉だ)


 ここで遂に日本・アメリカ・ドイツの軍隊が出会い、それぞれ独立して動いていた運命の歯車が噛み合ったのだった。

改めて、英語会話の部分はグーグル先生にお世話になっております。

文法として間違えていたらすいません。

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