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少し前の話

「はははっ、どうしたい。ジャパニーズナード諸君。見せてくれよ、ジャパニメーションで培われたファンタジーな剣捌きを、羞恥で頭を抱えたくなる魔法さぁ」


ロジャーの両手の銃が異世界ギルドの勇者達を蜂の巣にする。


「くっ、今さら銃がどうしたのだと言うのだ。ここは剣と魔法の世界。魔法で障壁を張り、身体強化で銃弾も通さぬように自らを強化するまでだ」


魔術師らしき男達に半透明なオーラがまとわりつくが、ロジャーの放った銃弾はそんなあやふやなオーラに妨げられることなく彼らの眉間を突き刺さる。


「はいはい、無駄無駄。君たちがチート能力を持っている訳ないじゃない。バカなのかい、だから剣で銃に挑むようなことしているのかい。はははっ、無駄無駄無駄」


異世界ギルドの勇者は剣や弓、魔法で挑む。しかし、そこには剣と魔法のファンタジーな戦いはなく、一方的な銃殺が行われ居る。


こちらの味方は数十人にして、眼前に広がる敵は百を超える。

しかしながら、戦場を見渡せば似たような虐殺劇がいたる所で起こっている。


「イピカイエー。僕は子供のころ西部映画が好きでねぇ、パパの銃でよく練習したものだよ。どうだい、ビリーザキットにも劣らない腕前だろう」


眼前の敵を一通り掃討したロジャーが銃口から立ち上る硝煙を息で消す。


「そんなことより、カンダ。君はいつまで僕の後ろで死んだふりをしているんだい。アニー嬢がチート能力とやらを駆使して回復に回っているんだ。さっき、袈斬りされてたけど、もう直っただろう」


僕こと神田太郎は死んで地に伏せたふりをやめて、周りを見渡す。


「もう大丈夫さ、この逝かれた戦争も終わる。異世界転移君、一人につき100万ドルの報酬だ。やる気もりもりのくそ野郎達のおかげで、思ったより早く肩がついた」


一異世界転移者一人につき100万ドル。僕たちが異世界転移者狩りとしてこの世界呼ばれたときに、こちらと地球の管理者両名に出された報酬だ。

戦場は終息と向かい、「あの100万ドルは俺のだ」と1逃亡者の奪い合いになっている。


「降伏だ。降伏する。ジュネーブ条約に乗っ取った捕虜の受け入れを求める」

負けを悟った一部の転移者達が武器を地面に置き降伏宣言する。しかし

「ジュネーブってなんだ、ここの地名か?そもそも、そのよく分からん条約をなぜ守らなくてはいけない?まぁ、100万ドルが追いかける手間なく、わざわざ死に来てくれるなら大歓迎だ」

と無抵抗に殺されていく。


人の頭が飛び、体が裂かれ、臓物が飛散する。

その悍ましい光景を見てられず、またもうずくまる。


「おいおい、どうしたカンダァ。もしかして、僕がさっき君の故郷の文化を馬鹿にしたから怒っているのかい。そんなに怒るなよ。僕が個人的に嫌いなだけで、君がジャパニメーションが好きなことを咎めたりしないさぁ。だから、機嫌を直して頭を上げてくれよ」


確かにアニメについて何やら馬鹿にした言動があった気がするが、そんなことでうずくまっている訳でない。


「ちがっ・・・」



違うと言おうと頭を上げると、玉砕覚悟の異世界転移者が剣を突き立てて、ロジャーに突進していた。

だが、ロジャーは慌てた素振りを一切見せずに、冷静に両膝を打ち抜いて、地面に膝をつかせる。そして、地に伏せ痛みにもだえる転移者の頭に銃口を突きつける。


「おいおい、どうしたナード諸君。君らのファンタジーじゃ、やっぱり銃弾を防ぐことはできないのかい?やっぱり、なよっちいジャパニメーションヒーローを参考にしているからダメなんだ。でも、アメコミヒーローなら別だ。僕も銃弾を弾き返す奴を知っているし、アメコミヒーローなら僕もそこまで嫌悪感はない。そうだ、今からなよっちいジャパニメーションヒーローからアメコミヒーローに改宗しなよ。そしたら、命だけは見逃してあげる」


ロジャーは悪魔のような笑みを浮かべ、のたうちまわる転移者を見下す。

しかし、のたうちまわる転移者は撃たれた痛みでロジャーの話を聞く余裕がない。


「君みたいな馬鹿に分かりやすく言うと、ジャパニメーションヒーローかアメコミヒーローどっちが好きなんだって話。それで君は間違った方を喋ったら、このまま引き金を引かれてしまうってこと」

ロジャーは苛立たしげに転移者の口に銃口を突っ込み、再び問う。


「ア、アメ、アミィコミィ、アミィコミィヒィーロォーがス、スキデス」

銃口を口に突っ込まれて上手く喋れないながらも必死にアメコミヒーローが好きだと連呼する。


転移者の慌てた姿を見てロジャーは満足したのか満面の笑みを浮かべて

「そうか、君も好きか。僕と同じものが好きか。でも、僕は君みたいな不細工な友達はいらないんだ。君みたいなのといると僕の品性が疑われるからね。残念だ、じゃあね」

と引き金を引き、異世界転移者は即死する。


僕の顔に何かがかかり、自分の顔を手で拭うと、そこには真っ赤な血と脳髄らしき何か。

胃が暴走し、視界が暗転する。


「日本の諺であったよね。塵も積もれば山となるって、これで更に100万ドルゲット。ありがとう、名も知らぬ100万ドル君。君のおかげで手に入った端金は有用に使わせてもらうよ」


意識が途切れる中、最後に写ったのはロジャーが腹を抱えて笑う姿だった。


ジャック→ロジャーに名前を変更しました

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