Mihi vindicta
少し長いです。初めての異能力系です。
この世界は、理不尽で満ちている。この地球という惑星の全人口の中で、ほんの一握りの者だけが強い能力を持つ。それは、科学では説明できず、「The ability that it is super usual.」。超常能力と呼ばれている。
超常能力には、属性がある。火、水、風、光、闇、無の六つだ。そして、レベルもある。レベル10は、人智を超えた存在になり得る者だ。逆に全く能力がない者は、レベル0。「無能者」であり、ゴミの様な目で見られる。大抵の者は、レベル1からレベル5である。そして、使える能力も、レベルに比例して大きく、強大になる。
大抵のものが持つのは無属性の能力だ。少し人より速く走れる。少し人より上手に料理ができる。少し人より上手に 歌が歌える。その程度のものだ。だが、強いものになると、火で全てを焼け付くせる。風でものを切れる。水で災害を起こせる。光で夜を昼の様に照らせる。闇で全てを覆い尽くせる。そして、無属性では、想像力次第では、世界を消し飛ばすことや、手からダイヤモンドを出せるなど、世界を狂わせることもできる。大抵のものには出来ず、出来るものがいても、それを行わない。それがこの世界の常である。
———————————————————————————
齋藤浩太。彼は、レベル0。つまり、無能者であった。事あるごとに馬鹿にされ、役立たず扱いをされる。平均レベル3程度の学校のヤンキーには毎日のように、虐められ、金を巻き上げられ、踏み躙られる。ただただ、彼は自分がなぜ能力を持たなかったことだけを恨み、他人の能力を羨んで来た。
「能力が欲しい」彼のそんな思いは、唐突に終わった。
———————————————————————————
彼は、いつもの路地裏に呼び出されていた。そして、ヤンキーたちに土下座する。
「すみません。今日は金がないんです。勘弁してください。」
ひたすら謝る。理不尽だが逆らうことはできない。
「何だって? もう一回言ってみ?」
「金が無いんで・・・。」
最後まで言い切る前に顔を踏み躙られる。
「いい加減にしろよ。金が無い? 舐めてんのか? 次はねえからな。」
「・・・。」
電車代だけは死守しきり、彼はヤンキーたちが完全に去ってから帰ろうとする。だが、今日はそんなに甘くなかった。入り口で鉄パイプを持って待ち構えていたのだ。ヤンキーの一人は、レベル5の火の能力持ちだ。鉄パイプを湯気が上がるほどに熱して、殴りかかって来た。彼は伏せて頭を守るしか無い。再び路地裏に連れ込まれ、殴られ、蹴られ、唾を吐かれる。彼の意識は次第に遠のいて行った。
———————————————————————————
彼は白い世界に立っていた。ひたすらに白い世界。何も無い白い世界。そこに立っていた。天から声が降ってくる。
「汝が欲するは何か。」
彼は必死に答える。
「力! 全てを蹂躙し、彼らに逆襲を出来るような力!」
「汝の願い、聞き入れよう。」
彼の再び薄れゆく意識の中でそう声が聞こえた。
———————————————————————————
目を覚ますと、そこは先ほどの裏路地だった。持ち物は荒らされ、何もかも奪われた後だった。彼は、無性に腹が立った。そして、彼は今まで起きようもなかった復讐心に燃えた。何故か、力がみなぎって行った。
———————————————————————————
また、彼はいつもの裏路地に呼び出される。
「今日は、金、持って来たんだろうな?」
「すみません。」
「ああん? ふざけんなよ。おい、焼きを入れろ。」
火の能力持ちのヤンキーが熱々に熱した焼印を持ってくる。そして、服を剥がれた彼に対して、今にもつけようとする。だが、出来なかった。
彼は、ぼそりと、使った事もない、また、聞いた事もない言葉を呟いた。何故その言葉を思いついたのかは分からない。だが、焼印は弾かれた。
「omnino regio」
ヤンキーたちは、信じられないものを見たような顔になる。それもそのはず、いつも反撃すらできない彼が、レベル5の力を弾いたのだ。怒りに顔を真っ赤にしたヤンキーたちは殴りかかって来た。しかし、それも叶わない。彼は、一言呟いた。
「tempestas」
ヤンキーたちは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。為すすべもなく、地面に倒れる。彼はそんなヤンキーたちの顔を踏み躙りながら、
「二度と寄るな。次は殺す。」
ヤンキーたちは震えながら頷くしか無かった。
———————————————————————————
この様子を見ていたものがいた。彼を危険と判断し、暗殺命令が出された。
———————————————————————————
次の週のある日、裏路地を歩いていると嫌な予感がした。咄嗟に、左に避けると、拳大の火の玉が、通り過ぎ遠くで爆発を起こした。舌打ちが聞こえた。彼は振り向く。するとそこには、黒ずくめの男が立っていた。再び、指先に火の玉を作ると、問答無用で打ち込んで来た。彼は慌てず、呟く。
「in regeneratione」
彼は大幅に自分の能力を上げ、壁を蹴って屋根の上に上がり、走り去った。暗殺者の舌打ちだけが残された。
———————————————————————————
それからというもの、彼は毎日のように狙われた。そして、その状況を少し楽しんでいた。
———————————————————————————
目の前の黒装束が動く。
「奥義、五月雨切り。」
風属性と水属性の複合技だ。しかし、彼には、それを消し飛ばすことは容易だった。
「perniciem」
目の前で五月雨切りが消滅する。そして間髪入れず、
「flamma」
と呟き、炭化させ、
「tempestas」
と呟き、跡形もなく吹き飛ばす。つい最近まで踏み躙られるだけだった彼は、今や最強の座を手に入れた。
左右から二人同時に、
「火焔」
と火属性の技を放ってくる。しかし、彼の
「omnino regio」
という呟きの前には、用をなさない。彼は
「caedes」
と呟き消滅させる。
こんな事が、二年続いた。
———————————————————————————
政府は、ついに最強の刺客を送ることにする。レベル10。全属性持ちである。
———————————————————————————
そいつは唐突に、彼の前に現れた。そして、不敵に笑い指を鳴らす。すると、全10個の風の刃とバスケットボールくらいの火の玉と、さらに超高圧の水の弾丸、そして身体能力低下のデバフ、閃光での目潰しを同時に仕掛けて来た。
彼は慌てず、
「omnino regio」
と呟き、ついでに
「Omnia ex attributis」
で、威力を相殺する。間髪入れずに放たれる、
「華炎」
にも冷静に対処する。そして、二人同時に同じような技を使う。
「消滅」「perniciem」
と。その瞬間信じられない力の暴風が吹き荒れ、その場から二人の姿は一瞬消え去ったかのように見えた。だが、彼は同時に、
「omnino regio」
と呟いていたため、逃れた。
政府はついに彼を諦めた。彼は絶対の存在となった。
———————————————————————————
彼は、それからは死ぬまで負けず、一生をかけて、弟子を育て、最強の人類、レベル10越えのレベル20として名を残した。
———————————————————————————
Mihi vindicta 復讐
omnino regio 絶対領域
tempestas 暴風
in regeneratione 身体能力強化
perniciem 消滅
flamma 火焔
caedes 虐殺
Omnia ex attributis 全属性
アドバイスお願いします。