第55話 廃墟ビルにての摘発2
廃墟ビルでの戦闘が始まった。
戦闘が開始となって、まっすぐなルートを選んだ近藤隊では、先頭を行くのが原田班と永倉班だ。
突入の時刻となった途端、先頭を競うように飛び出していったのだ。
出てきた多くの敵に向かい、突進していったのである。
その中でも威勢よく暴れているのが、伍長を務める原田と永倉だった。
その様子が、遥か後方にいてもわかるぐらいだ。
「俺が一番だ」
「違う、俺だ」
久しぶりに血が騒ぐような戦闘に、二人が高揚していた。
いち早く、二人の伍長が溢れ出る敵を、次々とレーザー銃で撃ち捲くり、なぎ倒していく。
敵たちも、倒されまいと、大暴れしている二人に襲い掛かっていったのだった。
「出て来い。もっと出て来い」
奇声を上げながら、向かってくる敵を煽っていた。
歓喜しながら、原田がレーザー銃を闇雲に連射していく。
先を行く原田に負けじと、永倉も連射しながら、まっすぐに前へ突っ込んでいった。
その後ろから、二つの班の隊員たちが駆けていく。
多くの隊員たちが、戦闘を楽しんでいたのだ。
暴れる二人を尻目に、冷静に敵を倒しながら、井上がまたかと嘆いている。
「いつものあれが、始まってしまった……」
ぼやきが止まらない。
「落ち着いていきましょうねと、釘刺していたのに……」
一般庶民を相手に、本気になって倒せないこともあり、フラストレーションが普段から溜まっていたのである。
本気になって暴れる状況になると、箍を外し、暴れ捲くるのだった。
思いっきり、暴れることができる戦闘。
二人の伍長を初めとして、隊員たちも同じような人間が固まって、班が成り立っていたのである。
そのストッパー役が、井上だった。
がっくりと落としていた肩を元に戻し、大声を張り上げる。
「いいですか! 抵抗しない人は傷つけないでください。後、怯えている人も傷つけちゃ、ダメですよ」
二人の伍長を初めとする隊員たちに、注意事項を叫んだ。
ただ、誰一人として聞いていない。
それでも、声を上げ、注意を怠らなかった。
襲い掛かる敵を捌きながら、冷静に刻々と変わっていく状況を眺めている。
(みんな生き生きと暴れているな。あー、戦意喪失の子にも撃っているな。……見なかったことにしよう。気づかないうちに、こうなっていましたと言うしかないな。とにかく土方副隊長に思っていたより、敵が多く、やむを得ない状況だったと言おう。そうしないと、また減給になってしまうな)
思考を巡らせているうちに、あっという間に原田と永倉が先に行ってしまっていた。
「サノさん、シンパチさん。二人だけでそんなに先に行かないでください! あっ、ヘースケさん、そっち違います。戻ってきてください!」
器用に敵を銃で撃ち落していきながら、井上が注意をしながら誘導していった。
それでも藤堂が軌道修正しないので、近くの隊員に声をかける。
「杉本さん、モアンさん。ヘースケさんの軌道修正してください」
「「おう」」
慣れたように、二人が返事をした。
ルートを外しそうになっている藤堂の元へ駆けていく。
こういったことは、いつも通りのことなので慣れていた。
後方に立ち、変わっていく状況を判断しつつ、伍長ではない井上が指示していく。
戦闘を楽しんでいる二人に、伍長らしくしてくださいと言っても、その域に突入している二人に、通じないことを痛感していたからだ。
(もう、気が済むまで止まらないだろうな……。普通こういうのは、ヘースケさんの仕事でもあるのに、どうして僕が二つの班の仕切りをしないと、いけないんだろうか?)
突然、脇から敵が襲い掛かる。
敵からの攻撃を交わしつつ、レーザー剣で切りかかった。
「すいません。もう少し練習必要ですね」
最後の叫び声と共に、襲い掛かってきた敵が地面に倒れていったのだ。
息の根が絶えそうな様子に、不憫そうに見下ろしている。
「あなたに構っている暇がないです。すいません、二人を追わないと」
倒れている敵に律儀に声をかけ、まっすぐに突進してしまった原田と永倉を追いかけていく。
「みなさん、先に行った二人を追いかけますよ」
「「「「おう」」」」
元気のいい隊員たちに、嘆息を吐く井上。
遥か先にいて、楽しんでいる二人の伍長が、襲い掛かる敵を選別することなく倒していったのである。
その光景は、まるで戦闘狂のようでもあった。
だが、そんなカオスな状況にもかかわらず、逃げ出す敵も一人もいない。
「どうした? ドンドンと掛かって来い。俺に向かってこい」
手当たり次第に、銃を撃ち捲くっている。
敵たちの眼光は、恐怖など感じていない。
ただ、目の前にいる者を排除しようとしていたのである。
戦いを楽しんでいる原田と永倉に襲い掛かっては、次々と倒されていったのだ。
「俺は強い!」
襲い掛かってくる敵を、意図も簡単に銃で撃ち抜く。
素人に毛が生えたような力量では、深泉組でも腕のいい原田に勝てる訳がない。
そんな相手でも、容赦なく、撃っていく。
久しぶりの楽しい戦闘に、顔がニンマリだ。
普通の人間ならば、そんな原田の形相に、不気味がるのが普通だが、そんな顔を窺わせない。
双眸を、ただギラギラとさせているだけだ。
「薬でも、打ったか」
不敵な笑みが零れている原田。
戦闘を狂喜しながらでも、状況を見定めていたのである。
「そのようだな。さすがに、これはおかしいからな」
原田の呟きに、同意した。
ますます楽しくなっていく現状に、口角が緩みっぱなしだ。
「面白くなってきた」
「一応、報告するか?」
チラリと、土方の顔が浮かんだ永倉が提案した。
背中合わせで、原田と永倉が話している。
その間も、敵を撃ち落としていった。
「……気づくだろう」
「確かに」
「久しぶりなんだ。思い存分戦おう」
原田同様に、せっかくの時間を潰されたくなかったのである。
蠱惑的な笑みが漏れていた。
「そうだな、サノにつくか」
「気づかなかったと、言うことだな」
「そういうことだな」
いやらしく、二人が笑い合っている。
二人の中で、協定が結ばれた瞬間だった。
その間、銃を撃つ手を止めない。
喋りながらでも、銃を撃ち捲くっていたのだ。
相手している敵も、二人が話しているからと言って、攻撃をやめることをしなかった。
同士討ちをしながらも、二人を倒そうとしていたのである。
「サノに、負けるものか」
やや倒すのが劣勢な永倉が奮起し、命中率を上げていく。
闇雲に撃ちつつも、野生の勘が鋭い原田の命中率の方が高かった。
「シンパチ。勝負だ!」
「いいそ」
「負けたら、おごりな」
「いいぜ」
不敵に二人が笑い、目に飛び込んでくる敵を次々と落としていく。
「こんな時に賭け事なんて、やめてください」
ようやく先を行く二人に、追いついた井上が窘めた。
ややその息が乱れている。
必死に二人に追いつこうと、先を急いだ結果だった。
「遅いぞ。幻三朗」
「負けたら、おごりな?」
状況に応じて敵を気絶させたり、撃ったりしている井上に、永倉が視線を注ぐ。
二人とは違って、近藤や土方の命令に従って、敵を判別していたのだ。
そのために、二人から遅れる羽目になってしまったのである。
「乗りませんから」
「「面白くない」」
二人は口を尖らせ、不満顔だ。
「それよりも、勝手に行かないでください」
「遅いお前たちが、悪い」
「そうだ、幻三朗。サノの言う通りだ」
自分たちは、一切悪くないと言う顔を覗かせていた。
それでも上司でもある二人に対し、注意を怠らない。
「近藤隊長や土方副隊長も、言っていましたよ。あまり距離を開けるなと」
ナイフを手に、襲い掛かってくる敵に井上がケリを深く入れる。
その衝撃に絶えられず、ナイフを落とし、敵が意識を失う。
(だいぶ、いい動きするようになったじゃないか)
可愛い部下の成長振りに、目を細める原田だった。
「ついてこない方が、悪い」
「サノに、同意」
俺たちを止めたいなら、ついて来いと言うスタンスを崩さない。
ムッとしつつも、語らっている二人を視界に捉えている。
「とりあえず、シンパチと俺の勝負な?」
「いいぜ。俺は負けないからな」
「俺だって」
どこまでも不謹慎な二人に、頭を抱えながらも、二人の背後から襲い掛かろうとするやからを銃で撃ち抜く。
「「ありがとう。幻三朗」」
「礼はいいですから、ちゃんと周りを見てください」
窘める傍から、二人は周囲に目を配ることなく、身近な敵を撃っていった。
新たに現れた増強された敵が出てくる。
新鮮な獲物が出てきたと、瞳を輝かせる原田。
照準を新たな敵に合わせ撃つ。
だが、弾が出てこない。
「弾切れか……」
残念そうな顔を覗かせ、あっさりと支給されているレーザー銃を捨ててしまった。
「あっという間だったな」
体術で敵を倒しつつ、持っている柄を取り出した。
柄にスイッチを入れると、瞬く間にレーザー剣に変わる。
血に飢えた獣のように、新たな獲物に突進していったのだ。
同じように、弾切れとなった永倉も、その場に銃を捨て、両手に柄を持って、レーザー剣と変形させる。
上手く、格好いい構えを決めたことに、ご満悦な気分を味わっていた。
「二人とも、いい加減にしてください!」
二人が投げ捨てたレーザー銃を、井上が戦いながら回収する。
戦闘を満喫している二人は、注意をされても耳を貸さない。
「いつになったら、レーザー銃を投げ捨てないと言うことを、わかってくれるんですか! 聞いていますか、サノさん、シンパチさん」
警邏軍から支給されているレーザー銃は、返すことになっているので、行方がわからなくなると、大変なことになるのだ。
そして、その銃を紛失させたことが、一度や二度ではなかった。
そのために、レーザー銃の扱いだけは、井上がピリピリとさせていたのだった。
勿論、近藤や土方も何度となく、紛失しないように言いくるめていたのだ。
それでも、二人は投げ捨てていたのである。
「大丈夫だ。幻三朗がいるだろう」
「シンパチに、同意」
あっけらかんと言う二人に、憤慨する井上だ。
「怒られるのは、僕なんですよ!」
そんなぼやきに耳を貸さずに、先に進む二人だった。
とんでもない原田たちのやり取りの様子を、追いついていた沖田が、敵を上手く捌きながら眺めていたのである。
(さすが深泉組。僕の予想を、遥か超える場所だな)
目を見開いて、驚愕している沖田に、近くにいた保科が説明する。
「あの二人が活躍するから、その後をいけば、ラクだよ。何も考えずに猪突猛進だからね、あの二人は。おかげで助かるよ。でも、お守りをしている井上が大変だけどね」
清々しいほどに、顔が輝いていた。
二人によって、残った敵を倒したり、軽症で起き上がってくる敵を気絶させていく保科に向かって、思っていた疑問を投げかける。
「レーザー銃で、弾切れなんて、あるんですか?」
弾切れするまで撃っていたことに驚いていたのだ。
普通では考えられない。
一回のエネルギー補給をすれば、数百発以上の弾が出てくるからだ。
それが今回の戦闘で、弾切れを起こすまで使い切った二人。
どんな使い方をすれば、なくなるのだろうかと首を捻っていたのである。
「辺り構わず、あの二人は撃つからね」
当たり前のことだと顔を覗かせる保科にも、内心では少し驚かされていたのだ。
だが、そんな表情を億尾にも見せない。
「随分と、無駄使いですね」
淡々と、思ったことを吐露した。
「そうなんだ。きっと照準なんて、見ていないんじゃないかな」
二人の戦い方を思い返し、口にした。
それほどまでに、これまでの戦いでも連射し捲くっていたのである。
「それは凄いですね」
素直に感嘆する沖田。
(照準を合わせずに、敵を倒すなんて、凄いな。どうすれば、できるんだろうか? 今度二人に聞いてみようと)
「だから、土方副隊長が不機嫌なんだよ」
「なるほど。それに投げ捨てていましたからね」
(確かに。あれじゃ、兄さんも、怒り狂うのはしょうがないか。でも、投げ捨てる感覚が凄いな。さすがの僕も、あれはできないかな。きっと兄さんの顔が思い浮かんで……。さすがに弾切れがあったら、締まっておくな、一応)
あっさりと投げ捨てた二人の感覚に改めて、深泉組に来て正解だったなと思う沖田だった。
「そのとばっちりを受けなければ、いいんだけど」
苦笑いをする保科に、同意する沖田だった。
(結構周りに当り散らすからな。でも、今回は井上さんが回収したから、大丈夫かな。でも先陣切って飛び出していったから、怒られる可能性も、あるかもしれないけど……、結局、井上さんが大変だと言うことには、変わりがないか)
「保科。定位置につけ」
思考の渦から、現実に戻される。
二人の背後から、斉藤が声をかけたのだ。
喋りに夢中になって、定位置から保科が少しずれていたのである。
「「すいません」」
一緒に喋っていたので沖田も謝った。
定位置に戻っていく保科を見届けてから、斉藤が新人でもある沖田に再度声をかける。
「油断はするな」
「はい」
「あれらに、意識を取られずに、仕事をするように」
チラリと、先に行ってしまう二人の伍長の背中を眺めていたのだった。
「はい」
従順に、斉藤の言葉に従う姿勢をみせる。
剣と銃を巧みに使いこなし、襲ってくる敵を倒していく。
だが、そこはきちんと素人と玄人を見極め、動けない程度にしたり、生死を問わず、叩きのめしたりしていたのだった。
「さすがだな、沖田」
その間も、襲い掛かる敵と戦意喪失している敵を区別し、スムーズに戦いを進めていく沖田の戦いっぷりに賛辞を送った。
(鮮やかな剣捌きだな、以前よりも動きが鋭くなっている。敵が強ければ、もっと強くなるんだろうな。早く見てみたいものだ)
「ありがとうございます。斉藤伍長」
にこやかな礼を述べながらも、沖田も斉藤の戦いっぶりを観察していたのである。
(緊張感がないやつだな。沖田の顔だけ見てると、ここがとても戦闘が行われている場所とは思えない。……さすが、沖田だな。それにしても、この状況は、あまりよろしくないな、たぶん、薬を打たれ、高揚しているのだろうな。まったく恐怖を感じられないからな。これは思っていたよりも、時間が掛かる可能性があるな……)
「この前と違う戦闘だが、どうだ?」
「そうですね、大して変わらないですね」
「大して変わらないか、随分と余裕だな」
「そんなことないですよ。素人と玄人を選別しながら、戦うのは大変ですから。この前の戦闘だって、似たようなものだったと思うのですが?」
首を傾げる沖田。
その表情は、別段苦はしていない様子だった。
「そうか。前の時は素人同然だったが、今回は結構玄人も混じって大変だと思うのだが?」
「大した違いは、僕にはない気がするんですが……」
困った顔を沖田が覗かせる。
そんな態度に、斉藤が小さく笑うのだ。
「違いが、ないか」
「すいません。鈍感なんですかね、僕」
「いや。そうではないだろう」
「斉藤伍長は、どうですか?」
「沖田と、似たようなものだな」
「そうですか」
安心したとばかりに、ニッコリと微笑む。
(他の隊員たちは、結構大変な思いをしているんだけどな)
「とりあえず、気を抜かず、戦うことだ。気を抜いて、ケガすることもあるからな」
「はい」
「何か、変わったことはないか?」
「斉藤伍長も、気づいているとは思いますが、どうします? 薬の件は無線で知らせますか?」
少し逡巡した後、斉藤の口が開く。
僅か数十秒だった。
「後で、私から連絡しておく。周りには注意勧告だけしておけばいいだろう」
「わかりました」
息も切らずに、穏やかに微笑む姿を凝視する斉藤。
そんな仕草に、屈託ない顔したまま、首を傾げる沖田だった。
「何かありますか? 斉藤伍長」
「余裕だなと、思ってな」
「そんなことないですよ。結構驚くことばかりで」
「そうか?」
言っていることが信じられず、不思議そうにしている斉藤である。
二人は気づいていないが、淡々と話しながら敵を綺麗に捌いていく様子を見ていた隊員たちが、あれはバケモノだと称していたのだ。
「原田伍長や、永倉伍長を見て、驚いていました。レーザー銃で弾を使い切る人がいるなんて、それも戦闘の序盤で」
感心していたことを、素直に口に出した。
その顔は、楽しいことを知って、嬉しいと滲ませている。
「脳筋なだけだろう」
そっけなく、おかしいことかと、首を傾げながら斉藤が答える。
いつも見る光景なので、斉藤自身にしては特別なこととは思ってもみなかったのだ。
そんな斉藤の仕草を垣間見て、小さな笑みが零れてしまう。
(こんな面白いことが、起きているのに……)
「保科さんも、言っていましたが。こうして、ラクできますね、原田さんや永倉さんがいると。勤皇一派との戦闘と言うこともあり、もっと緊迫している状況を連想していました」
「そう言えば、勤皇一派とは初だったな」
はっとした顔を覗かせたのだった。
鮮やかな腕前を直視していたので、すっかり勤皇一派との戦闘が初めてだったと失念していたのである。
「はい。初です」
嬉しそうに頬を緩ます。
「そうか。……だがな、何も考えないで突き進むのも、後の者が後処理をするしかないから大変なんだぞ」
現状を述べる斉藤。
原田たちが先に突っ込んでしまったせいで、残りの処理を斉藤班が担っていたのである。
かなりの量の取りこぼしがあったのだ。
「そうかもしれませんね。でも、それも勉強になります」
「そうか。それならいいが」
どこまでも前向きな沖田の姿勢に、小さく笑うのだった。
「はい」
戦いながらも会話をしている二人。
背の高い雑草に隠れて、窺っている三人の敵が存在していたのである。三人の敵は冷静に状況を見定め、いつ仕掛けようかと様子を傍観していたのだった。
弾んでいる会話に、この時しかないと合図を送りあって、飛び出していく三人。
斉藤目掛け、勢いよく襲い掛かろうとする。
表情一つ変えずに、直前まで普通に喋っていた斉藤が、最初の一撃を華麗に交わし、持っていた剣で、一人目の敵を叩き切った。
二人目の敵が驚愕しつつも、斉藤の背後をレーザー銃で狙っている。
風のように、しなやかなに相手の照準から抜け出し、剣で二人目の敵を突き刺したのだ。
三人目の敵も怯むことなく、襲い掛かろうとしていたので、躊躇することもなく、冷徹に沖田が撃ち落したのだった。
「お見事でした、斉藤伍長」
「こちらこそ、援護助かった」
「必要なかったと思ったのですが、一応援護させて貰いました」
戦闘を傍観している最中、三人目の敵に手出ししなくても、斉藤が倒すことができたと巡らせていたけれど、暇だったのでお手伝いをしたのである。
「張り切るのはいいが、こういうやつらも倒してからいって貰いたい」
倒した敵を見下ろしながら、愚痴を漏らしていた。
残る三人の敵を倒したことによって、この辺の敵をあらかた倒しつくし終わったのだった。
(何度見ても、綺麗な剣捌きだな。斉藤伍長の本気モードでも戦ってみたいな)
溜息を漏らす斉藤に、苦笑してしまう。
予想以上に敵が多く、これだけの人数を集めていたことが驚かされていた。
「随分と、集めたものだな」
「そうですね。少し面倒になってきました」
次から次へと溢れ出る敵に、うんざり顔を覗かせる。
単調すぎる敵に、もう少し手応えがほしいなと巡らせていたのだ。
「そうだな」
チラリと、沖田に視線を注ぐ。
集中力が切れている顔つきだった。
「面倒だからと言って、気を抜くなよ」
気持ちが落ち掛かっている沖田に、釘を刺した。
「すいません」
可愛く首を竦める。
斉藤しかいないのに、愛らしい表情を浮かべていたのである。
「次のところへ、行くか」
苦戦を強いられている保科に、視線を傾けた。
ひっきりなしに出てくる敵に、疲弊しているようだ。
それが当然だった。
近くで戦っている安富、ノールも疲れを滲ませていたのである。
「疲れているようだな」
「そうですね、この人数ですから」
保科以上の敵を相手しているにもかかわらず、沖田や斉藤に疲弊しているところなんてない。
出てくる敵を、すべて蹂躙していたのである。
疲労感を滲ませつつも、安富やノールは、上手い具合に敵を気絶させていき、まだ余裕がありそうだった。
「二人のところは、大丈夫そうですね」
「そうだな」
同じように、二人の様子を窺っていた斉藤が、保科に視線を止めた。
普通に歩いて、保科のところへ向かっていく。
その後を追うように、沖田も歩き出した。
保科を倒すことに夢中になっている敵。
背後からゆっくりとした動作で、斉藤が一撃で切る。
呻き声と共に、斬られた敵が、地面に倒れ込む。
何人かの敵が、保科から斉藤へ敵意を向き直した。
それを無言のまま、相手していく。
その状況を、ゆっくりとした足取りで、沖田が眺めていたのだった。
数人の敵が、一同に斉藤に向かっていき、攻撃を上手く交わしつつ、綺麗な剣の動きによって、瞬く間に倒されていくのである。
突如、レーザー銃の音が響き、倒されていく敵と、斉藤に向かって何発も放たれた。
離れた場所にいた敵が、辺り構わず連射し、敵味方構わずに撃っていたのだ。
それに気づき、すぐさま沖田が対応した。
その敵の額を撃ち抜く。
死したままでも、縦横無尽に放たれた弾が止まらない。
そんな連射を気にせずに、斉藤が襲い掛かる敵の一撃を受け止めた。
弾き飛ばした後、すばやい動きで、息の根を止める。
止まらない連射に気づき、保科が視線を巡らせた。
「斉藤伍長、大丈夫ですか?」
切羽詰ったように、保科が声をかける。
ポタポタと斉藤から、血が流れ落ちていたのだ。
「人の心配より、まず自分の心配をしろ」
斉藤の声音に怯みながら、身体を強張らせる保科。
そんな隙を、敵が許すはずがない。
気味が悪いほどの笑みと共に、敵が襲ってくる。
そんな状況でも、冷静な沖田が、レーザー銃で敵の額を一発で撃ち抜けていったのだった。
崩れ落ちるように、敵が倒れ込む。
続けざまに、沖田がレーザー銃を撃ち込んだ。
驚愕している保科が、全然警戒していなかった場所である。
促されるように視線を注ぐと……。
そこに、身分が高そうな風貌の少年が倒れ込んでいた。
「こんな……」
倒れ込んでいる少年の近く。
同じような少年少女たちが、一斉に銃を構え、こちらを狙っていたのだった。
驚愕している保科は、瞬時に反応できない。
斉藤もレーザー剣をその場に捨て、銃を取り出し、躊躇なく撃ってこようとしている少年少女たちを撃ち倒していく。
それは、一瞬の出来事でもあった。
確実に、二人の弾が少年少女たちを仕留めていったのだ。
それが終わったところで、ようやく二人が息を吐いたのだった。
「終わりましたね」
爽やかな顔を覗かせている。
それに対し、できるだけ捕獲するように命じられたにもかかわらず、撃って対処したことに若干斉藤の顔が曇っていたのだった。
少年少女たちの中に、何人か苦痛に顔を歪めたり、痛みに声を上げている者がいる。
恐る恐ると言ったような顔で、保科が斉藤の顔を窺っていた。
斉藤から出ている血が気になっていたのだ。
「当たりませんでしたね」
冷静に少年少女たちから、ここまで距離が離れていたので、彼らの腕前で当てることが至難の業だった。
「腕も、性能も、違うからな」
ボソッと、斉藤が答えた。
「ですね。でも、随分と性能が悪い銃を、持たせていましたね」
驚愕して動けない保科に対し、状況を判断し、対処した上に、敵が使用していた銃の性能のことまで、沖田が読み切って行動していたのである。
異端児のような沖田に、斉藤は表情一つ変えない。
「だな」
「大丈夫でしょうか? 後で怒られますかね。近藤隊長や土方副隊長に」
次に、上司たちに怒られることを予測していたのだった。
(確実に、怒られる路線に、まっしぐらな気にする。ごめんね、兄さん)
「貫通しているだろうから、命に別状はないと思うが」
「救急隊を手配した方が、いいですね」
怒られることが少しでも、少なく済むように判断していた。
誰よりも状況判断に長けている姿に、斉藤は舌を巻くのだった。
(こんな逸材、今後出ない気がする)
「そうだな。例の件と、今の件、頼めるか」
「構いませんよ」
「では、頼む」
即座に、命じられたことを行動に移していった。
その無駄のない動きを、斉藤が眺めていたのだ。
二人の会話に参加していない保科。
負傷したであろう斉藤に声をかける。
「大丈夫? ですか?」
無表情の顔を狼狽え気味の保科に傾けた。
斉藤の耳から、血が流れ出ていたのである。
「……」
絶句し、自分のせいだと自己嫌悪を陥っている。
よからぬことを、グルグルと思考させている保科に、表情一つ変えないで話し出す。
「耳を掠めた程度だ、気にするな。それより、さっさと進め! これで終わりじゃない」
発破を掛けられ、保科が背筋を伸ばす。
「は、はい!」
読んでいただき、ありがとうございます。




