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天翔ける龍のごとく  作者: 香月薫
第5章 散華 後編
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第95話  試作品を試す1

 警邏軍にある修理部の実験場に、近藤、土方、斉藤、安富、沖田、島田、毛利、尾形が顔を揃えていたのである。

 以前から、頼まれていた、開発された新しい武器を試すためだ。

 近藤隊では、新しい武器の試作具合を、何度も、実験させられていた。

 主に、近藤や土方が、中心となっていたのだった。


 今回は、その中に、斉藤や沖田が混じっている。

 初めて訪れる場所に、興味津々な沖田に対し、表情を変えない斉藤だ。

 近藤と土方に、向き合っている修理部の人たちの顔を窺う。


「安富さん。あの方たちが、修理部の人たちですか?」

 促され、近藤と話している面々を確かめる。

「そうだ。隊長と、話されているのが、課長の黒崎さん、その背後にいるのが、開発を中心となって、動いている、長野、内藤、平井、椎名だ」

「何度か、修理部に伺ったことが、あるのですが、見たことない顔の人たちですね」

 五人の顔を、捉えている沖田だった。


 自分で、武器の調整を行うことができるが、細かい調整や、新たな調整の技術を見に、たびたび修理部に顔を出し、顔馴染みになっていたのである。

 そうした際に、ここにいる五人の顔を見たことがない。

 そして、個性的ないでたちと、雰囲気をしていたのだった。

 黒崎の背後に控えているのは、男性(内藤・平井)二人に、女性(長野・椎名)二人と言う組み合わせだ。


「課長の黒崎さんは、何かと、忙しい人だからな。背後の四人は、開発にしか興味がない人間だから、奥に引っ込んで、武器の開発に、熱中しているんだ。だから、修理部にいっても、見かけることはないだろうな」

「へぇ……。そうだったんですね」

 視線を剥がせない沖田。


 汚れたり、破けたりしている作業を着ている面々。

 そうした格好しているにもかかわらず、気にする様子もない。

 手にしている真新しい武器や、脇に並べられているに武器に、意識が持っていかれているようだった。


「楽しそうですね」

「……彼らにとっては、楽しいのかもしれないな」

「希望先、修理部でも、良かったかもしれません」

 思わぬ沖田の言葉に、眉間にしわを寄せている。


「……上層部の方が、泣くぞ」

「そんなの、気にしません」

「……」

「僕としては、楽しいところがいいんで」

「深泉組は、楽しいか」

「勿論です」


 はっきりと口にしている態度に、安堵する安富だった。

 修理部の内情を、語ってくれた安富に、にこりと微笑む。

 真面目な性格のため、質問されれば、自分が知る限りのことを教えていた。

 単独行動が多い斉藤を、サポートしていたのだった。


「ただ、気をつけろ。あの四人には」

「どういうことです」

「開発バカだから。時々、使う人間のことを、忘れることがある」

「使い勝手が、悪いって、ことですか?」


 愛嬌のある顔を、コテンと傾げてみせる。

 こんな表情をされたら、瞬時に、魅了されてしまっただろう。


(自覚がないのか? ……やれやれ、困ったものだ)


「……ま、そういうことだろうな。威力が高く、爆発したり、周りのデザインに拘り過ぎ、使いづらかったりと、いろいろだ」

 嘆息を、安富が漏らしていた。

 何度も、斉藤の代わりに、試作の実験につき合わされていたのである。

 その光景がありありと、目の前に蘇っていたのだった。


 そして、もう一度、溜息が出てしまった。

 大怪我をさせられそうになったことが、何度かあったのだ。


「安富さん?」

 愛嬌たっぷりに、首を傾げている。

「すまぬ」

「いいえ」

「とにかく、この仕事は、気をつけるように」

「わかりました」


 ちょうど、近藤との話を終えた黒崎が、笑顔を絶やさない沖田の前に来た。

 値踏みするような双眸にも、いやな顔一つしない。

 沖田も、黒崎のことを窺っていたのである。


(武器開発に熱心なのか……。それなりに、武器に精通しているんだろうな。いい筋肉の付き方して入るし……。腕だって、悪くない……。楽しい人たちが、修理部にも揃っているんだな)


 浅黒い肌をしている黒崎。

 作業を着ていても、質のいい筋肉が、身体全体にある。

 さらに、腕の筋力も違っていた。

 控えている四人よりも、武器に精通しているのが、把握できたのだった。


(面白そうな人だな)


 双眸を、キラキラさせていた。

 ほんの僅か、黒崎が眉を潜めている。

 目の前にいる安富は気づかない。


「初めまして。沖田です、今日は、よろしくお願いします」

「ああ。修理部で、課長をしている黒崎だ」

 ニコニコと、笑顔を携えている。


 どこか、胡乱げな眼差しを、黒崎が注いでいた。

 そして、軽く息を吐く。

「……身体は、丈夫か? ま、だからS級ライセンスが、取れたのだろうな」

「……そうですね」

「だったら、しっかりと頼むぞ」


 ごつい手で、沖田の肩を叩いた。

「はい」

 視線の矛先を代えた。

「安富もな」

「承知しました」


 用が済んだと、背後で、近藤たちと喋っている部下たちに、顔を巡らせた。

 のん気に、試作品のことを、熱く喋っている部下たちに、呆れ顔だ。

 話に夢中になって、準備に取り掛かっていない。


「準備に、取り掛かれ」

 響き渡る声に、咄嗟に背筋を伸ばす四人の部下たち。

 まだ、睨みを利かせた視線を、黒崎が巡らせている。


「「「「はい」」」」

 気合いの入った返事し、手際よく、準備に取り掛かっていく。

 その光景を、面白そうな眼差しで、沖田が眺めていたのだ。


読んでいただき、ありがとうございます。

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