プロローグ 天誅
歴史の中で幕末は得意ではありません。平安時代や戦国時代が得意です。
そんな中、無謀な挑戦を始めようと思います。
僅かな光も射さない暗闇の中、一筋の光が数回瞬く瞬間。
ドサッとにぶい音が響く。
都の中心から離れた場所。
誰もが寝静まった時間帯で、人の姿は皆無と言っていいほどだ。
人が歩いていれば、それは酒に飲まれている人間のみ。そして、酒に飲まれた泥酔した男が倒れていたのである。その脇では長い髪を一つにまとめた女が佇んでいた。
感情もない視線で、ただ倒れている男を眺めている。
倒れた男は突然に脇に立つ女に切り殺された。
男は自分が死んだことに気づいていないだろう。
女は懐から紙切れを出す。
そこには天誅の文字が書かれていた。
紙切れを放すと、ヒラヒラと倒れている男の上に落ちていった。
彼女の名前は岡田依蔵。勤王一派に所属する闇の四天王の一人で、暗殺者である。上からの命令で、今夜も一人の男を切って捨てた。
「今日の仕事、終えたな」
感情のないままに依蔵は立ち去ってしまう。
依蔵の別名、『人斬り依蔵』といった。
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