消滅都市(非公式)タマシイの生前 《少年》編
車が大好きな少年がいた。
少年は、いつも母親にせがむ。
「あの車のおもちゃがほしい」
でもいつも返事は同じ。
そんなものにお金なんてかけてられない。
お兄ちゃんなんだから我慢しなさい。
なかなか買ってもらえない。
「みんな持ってるんだよ!」
それでも少年の願いは届かない。
少年は願った。
お金持ちになりたい。
お金持ちになれば、好きなおもちゃが買える。
本物の車だって買える。
みんなに自慢して回れる…………。
その日。少年は母親からおこづかいをもらった。
頑張って貯めたお金で車のモデルを買いに行った。
足取りは軽い。
飛び跳ねたいぐらいだ。
休日で人がごった返す中。
ショーウインドウに入ったモデルカーを眺める。
少年は、そっと大切そうに、そのモデルカーをレジへと持って行った。
その日。その時。
都市で消滅が起きた。