戦闘
もしかしたらこれを残酷表現と呼ぶのかもしれません・・・。
「出て来いよ。」
レインが、通常時より些か低い声で言う。
すると、草の陰、木の後ろ、廃馬車の下などから、よくこんなに
隠れることが出来たなぁ、という数の人間が出てきた。
顔は仮面に隠されて見えず、全員揃いの軍服のようなものを着て
いる。ついている家紋からすると、サンカトルクの人間だろう。
そして全員から感じる、こちらへの殺意。
「あら、なんかやる気マンマン?」
とリスリナ。
「結局同じですよ。」
とクラウド。
デュライア、クラウド、レイン、レーナ、リスリナの五人が背中
合わせになり、そのまわりをサンカトルクが取り囲む。
レーナが、小声でデュライアに話しかける。
「デュラ君。いきなりで申し訳ないんだけど、一人で大丈夫?」
「ああ。」
というか、今まで二人以上でで戦ったことなどない。喧嘩、だが。
「一人十人ってとこかなー。」
さらりとすごいことを言ったのはレイン。
デュライアは、内ポケットにしまっておいたリボルバーを両手に
握る。
それとほぼ同時。サンカトルクが一斉に襲い掛かってきた。
あとの四人は武器も出さずに大丈夫なのかと思い、そちらを向くと、
全員が、簡単な関節人形のようなものを取り出している。そして、
それを軽く投げた。すると関節人形が、一瞬で等身大のビスクドール
に変わる。しかしよく見ると、糸がついていて、操り人形のよう
だった。もうひとつ、普通の人形と違うことがあった。それぞれが、
武器を持っているのだ。
「はああぁぁ!」
「・・・っと。」
そちらに気を取られている間に、目の前まで刃が迫っていた。デュ
ライアは、生まれ持った反射神経でそれをなんとかかわし、後頭部
に強烈な蹴りを入れる。
銃、ましてリボルバーは、接近戦には向かない。なるべく距離を
取りたかった。
「バラけないか!?」
「OK!」
全員の承諾をもらうと同時に、五人が一斉に散った。
クラウドは自らの人形とともに、五人を取り囲んでいた人の壁を
身軽に飛び越える。
彼の人形は、東の果ての人間が着ている服をまとい、片刃の剣を
腰にさしている。髪と瞳は漆黒だ。
彼は、人形を自在に操り、見る見るうちにサンカトルクを倒して
いく。まるで人形が意思を持っているかのように。
一人が人形を振り切りクラウドの近くまで来たが、クラウドの持
っていた短剣によって切り捨てられた。
いつも気弱に見える双眸が、鋭く煌いていた。
レインも同じく、人形で闘っていた。
「うわー。俺んとこ十一人来ちゃったよー。」
口調は軽いが、人形を操る手は緩めず、あっという間に敵の数は半
分ほどになっていた。
彼の人形は、クリーム色のくせ髪に、深緑の瞳。白のシンプルな
ワンピースという姿。両手に短刀を持っているが、服の中にまだ隠
し持っているようだ。
そして彼の双眸もまた、冷たく鋭い。
リスリナとレーナは、二人で背中合わせに闘っていた。
リスリナの人形は、金髪のポニーテールに、淡い色の瞳。高級そ
うなタートルネックの黒いセーター。幅に余裕のある同色の短パン
に黒タイツという、人形にしては少し地味目の服装だった。
そして、2m近くある大鎌を持っている。
レーナの人形は、藍色の髪をツインテールで高くまとめており、
髪の色とは対照的な薄桃色の瞳が目立つ。黒地、ゴスロリ調のミニ
ワンピにニーハイソックス、ニーハイブーツという服装。
両の手には、とても片手ではもてそうもない剣。片手なのだが。
少し余裕ができたところで、リスリナがレーナに話しかける。
「デュラ、さあ。一人で大丈夫だと思う?」
レーナが視線だけをリスリナに向けて答える。
「・・・いいえ。サポートの準備はしておいた方がいいと思う。」
いくら強くても、彼は昨日まで一般庶民だった。必ず殺すことを
躊躇するだろう。それが当たり前なのだ。
なんの迷いもなく命を奪える人間など、存在してはいけないのだ
から。
レインとクラウドも同じことを考えていたらしい。自分に隙がで
きない程度に、デュラのことを気にしている。
そのとき、デュライアが敵に銃口をつきつけた。それと同時、四
人が彼の方へ走りよる準備をする。
しかし。
----------バンッ!
銃声がとどろいた。
デュライアは、殺した。なんの躊躇いもなく。
眉一つ動かさず。驚くほど冷たい瞳で。
仲間である四人すら萎縮してしまうほど、冷たい瞳で。
現実生活の都合でおそくなりました!
すいません!
感想いただけるとうれしいです。。。