大仕事
シャオの一言に、リスリナがすぐさま質問する。
「べつに、いきなり大仕事を頼まなくても、私たちの誰かが行けば
いいじゃない。」
「全員、行くんですよ。」
その言葉に、デュライアを除く全員が驚きを示し、レインが質問を
返す。
「そんなこと、今まで一度もなかったじゃん。内容は?」
「サンカトルクに動きがありまして。本家ではないのですが、近いうちに
ここを襲うつもりらしいんですよねー。」
シャオは、ほとほと困ったというように肩をすくめる。
「こちらは、防戦になったら明らかに不利ですから、やられる前にやる
というわけです。もちろん、皆殺しにしろと言っているわけでは
ありません。おそらくサンカトルクも、ばれたことに気づいている
でしょうから、途中で襲われると思います。」
シャオの言葉に、得心のいった顔でうなずき、続けたのはレーナだ。
「そして、その時点で主戦力を引っ張り出して片付けろ、と?」
「はい。よくおわかりで。分家とはいえ、本陣に突っ込むのは
いくらなんでも危険ですから。」
あまりに無謀な計画に、楽しそうにレインがつっこむ。
「あはは。ほとんど賭けじゃん。」
クラウドも、レインの隣で苦笑して口を出す。
「それも、とびきり勝率の低い、ね。」
どうも、ここの人間は、危機感というものが抜け落ちているらしい。
相当不味い状況だと思うのだが。というか、そんなことを考えている
時点で、自分も全く危機感を感じていないのだ。人のことを言えた
義理ではない。
女性二人は、危機感の「き」の字くらいは知っているらしい。
リスリナが、半眼で話を先に進める。
「笑ってる場合じゃないでしょ。・・・でもまぁ、確かに行くしかない
かもね。まだ死にたくないし。」
彼女の言葉に、その場の全員が賛同を示す。そして、一連のやり取り
に苦笑し、レーナが言葉を次ぐ。
「それなら、早く出発したほうがいいんじゃない?」
疾風のように出発が決まったため、ろくに準備もせず出てきて
しまった。到着して一時間で再び出発というのはどうなのだろう。
デュライアたちは、汽車に乗り、海沿いの街を目指していた。
レインは、元来人懐こい性格らしく、デュライアにいろいろと質問を
してきた。
「デュラ、お前の武器ってなんだ?」
「リボルバー式の銃なら持っている。」
「へぇ~。銃使えるのか!かっこいいなー。俺たちはな。人形なんだ。
魔術がかかっててな。・・・まあ、見りゃわかるさ。」
そんな会話をしていると、デュライアの向かい側に座っていた
リスリナが、
「次の駅が目的地よ。もうすぐだから、準備しておいた方が
いいんじゃない?」
と言った。それで彼らが、荷物などの確認をしていると、いつの
まにか駅が見えてきた。
そういえば、駅でもう二人の仲間が合流すると言っていたが、
どんな人物なのだろう。
やがて駅が目の前に迫り、デュライアたちが立ち上がりかけた時、
すさまじい衝撃がはしった。
「っ!?何・・・・・・?」
「僕、ちょっと見てきます。」
そう言って、クラウドが先頭車両へむかう。
今の衝撃は何だったのだろう。
「まさか、襲撃・・・じゃないわよね?」
疑惑を口にしたのはレーナだ。
しばらくして、クラウドが戻ってきた。
「暴走した馬車と衝突したみたいです。幸い、馬車に乗っていた
方々は、全員無事でしたが。」
全員が安堵の息をもらす。
「ここからなら、歩いてもすぐに着くわ。歩きましょう。」
レーナの提案に、異論を唱える者はいない。
全員で汽車を降り、歩き出してすぐ、人の気配を感じた。
それも、一つや二つではない。
ほかの皆も、気づいているようだ。
レインが、苦しげな顔で笑う。
「いきなりお出ましかよ。」
やっと戦闘シーンがでてきそうです。
ふぅ。
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