出会い
ああ、もう。本当に嫌になる。
街外れの道の真ん中で、青年が一人、不良たちに囲まれている。
大通りには馬車が行き交い、市が開かれていて、なかなかに活気のある街だが、
少し外れれば、急に人通りが少なくなる。
そのため、彼らに気づく者はない。たとえ気づいたとしても、不良の喧嘩に首を
突っ込もうなどという物好きはいないだろう。
そんな絶望的な状況の青年。彼の背丈は、170cmに届かない程度。空色の、
肩につかない髪に、わずかに黒髪が混じっている。体格は華奢で、整った顔立ちを
しており、瞳は恐ろしいほどの紅だった。
その瞳の色が、不良たちの癇に障ったのだろう。
当の彼は、慣れているのか特に驚く風もなく、ただし、ひどく苛った声音で、
「ああ、もう!なんでお前らはいつもいつもいつもいつも俺に絡んでくんだよ!!」
と言い放った。あまりに多勢に無勢だというのに。
ちなみに、正確には彼らに襲われたのはこれが初めてなのだが。
「ああ!?ふざけんじゃねーよ!・・・てめぇがデュライアか。想像してたより
ずいぶんチビだな。」
不良たちは、デュライアと呼ばれた青年の眉がぴくりと動いたのに気づかない。
「別にふざけてるわけじゃねーよ。」
すると、デュライアが人を馬鹿にするように笑い、
「そういうことは、俺に勝ってから言うんだな。」
完全に挑発である。
「殺れ、てめーら。」
それを合図に、不良たちがいっせいにデュライアにとびかかった。
「おらぁぁぁぁぁぁ!!」
デュライアは、目の前に突き出された刃物を、紙一重で、しかし涼しい顔で
かわし、続いて二人の拳を、両手で同時に受け止める。そして、一瞬ののちに
手を放し、体勢を低くする。すると、ふたつの拳がそれぞれの顔に
クリーンヒットする。その低い体勢のまま、足払いをかけ、数人をたおす。
といった具合にどんどん倒していき、気がつけば、立っているのは彼一人。
「何度来ても結果は同じだ。もう二度と襲ってくるなよ。」
あとチビって言うな!という言葉をすんでで飲み込み、彼は身を翻しかける。
「うるせーな。いいだろ別に。どうせ、家に帰っても一人なんだろ?」
一瞬。ほんの一瞬。デュライアが痛みをこらえるようなかおをする。
しかし、その表情はすぐに掻き消える。
「・・・何をほざいても、負け惜しみにしかきこえないな。」
それだけ言うと、彼はさっさと歩いていってしまった。
「負け惜しみにしか聞こえないのは、お前だっておなじだろ・・・・・・?」
デュライアは、一目で不機嫌とわかる仏頂面で歩いていた。
そこを、妙な男に呼び止められた。ずいぶんと背の高い、漆黒の髪の男だ。
「いやー、お強いですねぇ。」
「あ?」
どうしても、受け答えがきつい言葉になってしまう。
「さっき、見てましたよ。」
「なにを?」
「不良たちをバッタバッタと倒していたでしょう?」
「それが、なんだ。」
「そこで、あなたに折り入って頼みがあるのです。」
「なんだ。」
「一緒に世界を救いませんか?」
沈黙。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
つたない文ですいません。
主人公登場です。
読んでいただければ幸いでございます。