表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

街にて4

 暗い。


 痛い。


 何も見えない。


 何も聞こえない。


 -------ザー・・・


「・・・・・・?」


 何の、音だ?


 耳元で何かがはじける音がする。


 -------雨・・・?


「・・・・・・!」


 おぼろげだった思考が、急速に冴え渡っていった。


 そう。俺は、サンカトルクの少年、クランに刺されて。気を失った。多分、そのまま


殺された。はずだ。


 でも。


「・・・何で・・・生きて・・・・・・?」


 はっきり呟いたつもりだったが、声がかすれてほとんど言葉にならなかった。


 代わりに、微かな鉄の味が口の中に広がる。


 放っておけば死んでしまうような傷だったはずの左腹は、微かに痛みが残るものの、


うずくような激痛は感じない。


 一体、どうなっているのだろうか。


 さまざまな疑問がガイの頭の中をまわっていたが、その思考は、突然耳に入り込ん


できた声によって遮られた。


「お兄さんは・・・・・・ナニ?」


この声は、知っている。


 サンカトルクの少年、クランの声だ。


 重い体を起こし声がした方向を向くと、そこには、動けないのだろうか、首だけを


こちらに向けて地面にうつぶせに倒れているクランがいた。


「・・・・・・?」


 そして、彼の表情を見て、思わず怪訝な顔をしてしまう。


 あれほど、余裕綽々という笑みを口に乗せていたはずの少年の顔が、恐怖にゆがん


でいたから。


 あれほどふてぶてしい目つきをしていたのに、その瞳におびえがにじんでいたから。


 ガイのその表情を見て、クランは一瞬考えるような表情をしてから、余裕のない微


笑を浮かべる。


「お兄さん、何がなんだかわからない~って顔してるけどさ・・・僕がこんなことに


なってるの、お兄さんのせいだからね?」


「俺のせい?」


 ますますわけがわからない。


「そ。まさかこのご時世、レイズリーにそんな高度な魔術を使える人間がいたなんて


ね・・・・・・。」


「魔術だ?」 


 身内で魔術を使える人間など、シャオとレイン以外にいただろうか。


「まあでも、知らないなら別にいいや。・・・殺しなよ。」


 彼は、急に興味を失くしたように瞼を伏せると、あまりにもあっさりとそんなこと


を言った。


「まあ、動けないならどーしようもないわな。」


クランの言葉に当たり前のように反応してしまう自分に、内心自嘲を向けながらも、


しかし本当にこんな好機はもうないと立ち上がる。


 体にわずかな違和感は感じたものの、動くのには問題なさそうだ。


 そこで初めて、自分がナイフを握ったままだったことに気づく。


 そのナイフをしっかっりと握りなおし、クランのもとに踏み出そうとして。


 しかし。


「・・・・・・あれ、術解けた。」


 と、間の抜けた声がして、クランがむくむくと立ち上がった。


「って動けてんじゃねーか!」


「あははー。お兄さんが立つと僕も動けるようになるみたいだねー☆」


「あははじゃねーよ。っとにめんどくせーやつだな!」


「あ、ひっどーい!・・・んー、でも、お兄さん。大丈夫だよ。僕、体に全然力入ん


ないしー。」


「信じられるかよ。」


「・・・本当だよ。」


 そう言うクランの顔には、わずかな曇りすらない瞳と、全く邪気のない笑みがあっ


た。


 それがあまりにも自然で、少年の言葉が真実だということを、心の奥底で信じてい


る自分がいた。


 ガイは再び身構える。


 人間の急所。それだけを狙う一撃。力はあまりいらない。


 欲しいのは、技術。


 彼の瞳から、一切の感情が消えていく。


 ガイの一撃は、あまりにも簡単に、一人の人間の命を奪った。


 それで、お終い。


 ガイは、今息絶えたばかりの人間と、自らの手を交互に見て。


 少しだけ、哀しげな顔をした。


「・・・さて、ヴァイアのとこに行くかね。」


頑張れば見えるほどの位置で、ヴァイアがまだ戦っている。加勢したほうがいいだろ


う。


 ガイは、そちらへと歩を進める。


 もう、振り返りはしなかった。


 


 




 

遅くなってすんません!!!

・・・あーあ・・・。双子キャラが・・・;;

でも、見逃すみたいなのは嫌だったので・・・。


感想いただけると嬉しいです♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ