街にて2
ヴァイアの言葉に答えるように、シランが無邪気に笑う。
「それじゃ、行くよ?銀髪のお兄さん♪」
まるで、遊びを楽しむ子供のようにそう言った彼の口は、けれども幼げな風
貌に似合わぬ、残忍な冷笑を浮かべている。そして、先ほどまでにこにこと
していた双眸は、冷たく光り輝いている。
彼は懐からナイフを二本取り出し、流れるような動きで地を蹴った。その
まま凄まじい速さでヴァイアに近づいてくる。しかしヴァイアとて弱くはな
い。速いことがわかっていればよけられる。わずかに体をそらし、シランの
ナイフをかわす。それを読んでいたシランが、突き出した右手のナイフをヴ
ァイアに向かって滑らせるが、その程度は予測の範疇だ。普通の人間にはほ
とんど見えない速さで蹴りを繰り出し、右手に握られていたナイフをたたき
落とす。そして自らはシランから距離をとった。
その顔には何故か、微かな笑みが刻まれている。
「忘れてないかい?人形のこと。」
ヴァイアが手をわずかに動かしながらそう言った。それとほぼ同時、シラン
の背後からヴァイアの人形が襲いかかる。
「・・・っと」
体を真っ二つにせん勢いで振り下ろしてきた人形の大剣を、すんでのところ
でかわし、シランもヴァイアからさらに遠ざかった。
人形がシランを凄まじい速さで追い、大剣を横薙ぎに一閃する。だが、シ
ランは表情一つ変えない。大剣を上に跳んでかわし、そのまま、少年が空中
から放ったとは到底思えない鋭い蹴りを人形に叩き込む。その蹴りで後ろに
吹っ飛んだ人形は、勢いを殺さぬままヴァイアのもとへ戻った。
今、ヴァイアとシランの距離はかなり離れてしまっている。
そのため、互いの声を相手に届かせるには、平常時より声を張らなければ
ならないだろう。
全身を緊張させたままヴァイアがそんなことを考えていると、案の定、こ
ちらに聞こえるよう気を遣った、シランの大きめの声が届いた。
もっとも本人は、気を遣ったつもりなどないのだろうが。
「怖いなぁ、人形。全然気づかなかったよ。」
例のごとく、全く怖いと思っていないような口調だが、何となく、嘘では
ないような気がした。
「はは、そうだろう?気配が無いからね。」
「それに、大剣も。さっき見たときは、そんなの見えなかったのに。」
シランが、ひどく楽しげに言う。
「ねぇ、どうなってるのか教えてよ♪」
対するヴァイアも、笑顔を崩さない。
「それは教えられないなぁ。」
「えー、ケチ!」
「あはは。ひどいこと言うなぁ。何事にも秘密は付き物だろう?」
「隠し事はいけない、って親に習わなかった?お兄さん。僕みたいな少年に
そんな世界の真理教えちゃダメじゃん!」
「ん?それがわかってるなら問題ないんじゃないかな。」
「ま、それもそっか。」
この間、二人とも全く緊張を解いていないのだから驚きである。
「じゃあお兄さん。もう一個聞いていい?」
「なんだい?あまり時間がないから手短にお願いしたいな。」
「さっきの蹴り。なにか仕掛けがあるの?まだ痺れてるんだけど。」
「ああ、そんなことか。仕掛けなんか無いよ。得意なんだ、体術。」
「うゎ、傷つくなぁ、それ。こんなんでも一応鍛えてんのに。得意なんてレ
ベルじゃないでしょ。見たところお兄さん、武器もってないみたいだし。」
「武器より戦いやすいからね。」
そう答えてから、しかし、何かを思い出したように付け加える。
「・・・ああ、でも、とどめをさすためのナイフはもっているよ。」
「あはは、怖いなぁ。」
「どの口が言うんだい?」
「あはは」
「ははは」
「あははは」
「はははは」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
一度は和んでいた二人の双眸が、厳しいものへと変わる。
そして二人は、再び地を蹴った。
戦闘シーンが書けませぬ・・・・・・。
まぁもっとも、なんにも書けないんですけどね☆
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