矛盾
遅くなりました。。。
「どういうこと?」
リスリナが胡乱げに言う。
彼女の言葉を引き継ぐ形で、今度はレインが口を開いた。
「つまり、記録には残っていないレイズリーの次期当主がいて、そいつも
生き残ってたってことだろ?けど、その本自体が偽物だっていう可能性は
ないのか?」
疑問を向けられたヴァイアとガイは迷いなくうなずき、ガイが説明する。
「その本は、最初に見つけたとき、普通のどこにでもありそうな本に見えた
んだけどな。ヴァイアが魔術の痕跡に気づいて、手にとったんだ。そしたら
いきなり、題名や本の厚み、表紙の色まで、全部が全く別物になった。」
「多分、レイズリーの血に反応するようになってたんだ。」
と、ヴァイアが付け加える。
全員が、いまいち納得のいかないという顔をしていたが、いつまでも本の
真偽を確かめていたら埒が明かない。
「その本が本物だとして、具体的には何が書かれていたんですか?」
クラウドのその問いには、ヴァイアが答えた。
「たとえば・・・さっきのシェイン・レイズリー。彼は、八歳のときから、
末端の分家に居候していたみたいだ。理由は書かれていなかったけど。そし
て、彼には本家に居た頃からの大親友がいた。」
ヴァイアはそこで一旦言葉を切り、哀しげに目を伏せる。
「・・・サンカトルクの名を持つ、大親友がね・・・。」
ヴァイアの説明に全員が驚いたが、いつのまにか本を読み進めていたリス
リナは、あるページを開き、文を指でなぞるようにしながら読み始めた。
-----シェイン様には、大親友がおられました。その人
物はサンカトルクの次期当主でした。二人は本当
に仲がよく、溝など全く無いように思われまし
た。しかし、あの日。シェイン様の暮らしてい
た分家を襲撃したのは・・・・・・。
幸か不幸か、そのときシェイン様はそこにはおら
れませんでした。仲間の・・・家族の敵がだれな
のか気づかれたときのシェイン様の苦しみはどれ
ほどのものだったでしょう------------------。
そこまで言うと、リスリナは顔を上げた。
「・・・どういうことかしらね。なんでこのシェインという人物の記録がな
にも残っていないの?」
リスリナの疑問に応じたのは、驚くことにデュライアだった。
「その人物は実在していなかった。もしくは、だれかが記憶を消した。その
どちらかじゃないのか。」
しかし、すぐさまクラウドが異議を唱える。
「ですが、世間一般では、レイズリーが裏切り、サンカトルクがそれを粛清
したということになっているはずです。一般の人が書いたなら、もっと批判
的な文章になるんじゃないですか?」
さらに拍車をかけるように、レインが続ける。
「それに、嘘を書く理由も、それを隠す理由もわからないしな。やっぱ、レ
イズリーの人間が、本当のことを書いたんじゃないか?記憶を消されること
がわかっていて。」
終わりの無い口論が始まりかけたところで、ずっと黙って聞いていたレー
ナが、苦笑して口を開く。
「どれだけ考えてもわからないことを、いつまで話してるつもり?そんなこ
とより、今どうするかを考えないと。」
そして、レーナは前方を指差し、それに、と付け加える。
「ほら、街に着いたわよ。これからどうする?」
確かに彼らの前には、街の入り口を示す石でできた門が聳え立っている。
レーナの問いに、ガイが手を後頭部にあてながら答える。
「あー・・・どうすっかなぁ。・・・・・・まさか乗り込んでくわけにいか
ないしな・・・・・・。」
「やっぱシャオの言うとおり、強いのを引きずり出すしかないじゃん♪」
なぜか楽しそうにレインが言った。
その瞬間、全員の表情が強張る。何者かが、ものすごいスピードでこちら
に近づいて来ているのだ。まだ姿は見えないが、直に見えてくるだろう。
殺気を隠しもしないのは、そうとう腕に自信があるからか。
「・・・何か強そうだな。二人か。あいつら倒せば、一番強いやつ出てく
るかな?」
レインが不敵に笑う。
姿が見えた。子供のようだ。二人は瞬く間に近づいてくると、声変わり
のしていない高い声で言った。
「初めまして。僕はクラン・サンカトルク。」
「僕はシラン・サンカトルク。」
『君たちを殺しに来たよ。』
おそくなってすいません!!!
現実が厳しかったので・・・。
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