地球の神へ捧ぐ
「おめでとう」
「生まれてきてくれてありがとう」
生まれたばかりの赤子を人々が祝福する。
そんな場所に招待された私は少々居心地が悪い。
なにせ、赤子ときたら何も知らずに泣いている。
産声をあげながら。
「忘れないでね」
「私達は本当にあなたを愛していたことを」
人々が泣きながらそう告げる。
祝福の言霊の中に涙が混ざる。
「恨まないでね」
「私達のことを」
嗚咽に変わる。
そんな思いをするならば子供なんて作らなければいいのに。
「……お願いします」
「……どうか一思いに」
こちらも仕事だ。
だから作業は一瞬で終わった。
「あぁ……」
「ごめんね。本当にごめんね……」
人々はそう言って泣き続ける。
そんな中で私は手を差し出した。
何せ、こんな時代でも仕事は仕事だ。
もらうものはもらわないと――。
「ありがとうございます」
力なく渡されるお金を数える。
確かにある。
おつりもなしにぴったりと。
「次からは子供なんて作らないことですな。こんな気持ちにもうなりたくないでしょうから」
そう言って私は外へ出る。
見上げた空が明るい。
時刻はもう21時を回っていると言うのに。
「また大きくなっていやがるな」
呟いた。
いや、呼びかけたのかもしれない。
この星に衝突すると言われている数えきれないほどの彗星に向かって。
発表ではこの星は砕けるのだという。
希望的観測ではこの星が砕けずとも氷河期が訪れるという。
そして、最善の可能性では数千年と続く氷河期の終わりに命は再び繁栄するという――。
「悲惨な時代を生きたくない、か」
殺し屋として生きてきた自分の。
おそらく、最後になるであろう仕事の数々がこんな何も知らない無垢な者達の殺害だなんて。
「あぁ、やだやだ」
呟きながら私は手に入れたお金のほとんどを知りもしない異教の神々のお布施に用いる。
どうか、彗星が地球にぶつかりませんように。
そう祈りながら。
――地球の神が宇宙の神に抵抗出来るなんてとても思えなかったけれど。




