子猫を拾った。そしたら死んだ。【副題︰死んだはずなのに、元カノと幽霊たちにモテ期が来た。……どうやら俺の不幸体質は『愛され体質』に進化しちゃったらしい。】
……これは、俺の走馬灯である。
「今日も今日とてヤバかったな......」
俺の名前は、 山王 尊。なんら変哲のない学生だ。
いや、他の人より少し不幸が多い人かもしれない。
歩いていたら不良たちに絡まれるわ、トイレに入ったはいいものの大体ペーパーが切れているわ.........とまぁ、そんなこんなで俺は生きてきた。
今日も憂鬱な気持ちで学校を過ごしていた。
―――しかし、その気持ちは不意に変わった。
「付き合ってください!」
帰る用意をして、校門から出ようとすると、なにやらクラスで1位や2位を争うほどの美少女、服部 渚 が俺にそう言った。
「.......え?」
「前々から好きだったんです!付き合ってください!」
驚きがまず勝った。
なにせ面識が全くないからだ。
「......」
「ダメ....ですか?」
その次に喜びが出てきた。
俺は単純だった。
「いえいえ、全然良いですよ!」
すぐに答えを出した。
悩みもせずに。
「―――ふふっ」
そこから、いっぱい遊んだりして楽しんだ。
最初は、渚も楽しんでいるか不安だったが、杞憂に終わった。付き合い方はあれかもしれないけど、ちゃんと俺は渚のことを好きになった。
幸せだった。
本当に幸せだった。
───2ヶ月経つか経たないかの頃だろうか。
俺は教室に傘を置いたままにしていて、取りに戻っろうと、学校へと帰ってきた時だった。
「んでさぁ」
楽しそうな声が聞こえてくる。
―――その喧騒の中には渚も居た。
「あいつ、馬鹿だよねっ!」
「う、うん....そうだねっ!」
あいつ.....?
誰のことだろう。
「渚が嘘告したって聞いたら、泣いちゃうんじゃない?アッハハッ!」
「いやぁ~?ははっ」
嘘......告?
「そろそろ別れたら?」
「確かにね」
その言葉を聞いた瞬間、膝から崩れ落ちた。
―――あの渚が嘘告....?なんでだ?
「.......っ!」
俺は走った。
傘なんてどうでもいい。
「くそっ」
これなら心の涙を防ぐ傘が欲しいや。
「........っ」
俺は、無我夢中で家へと向かう。
走る、走る、走る。
───にゃぁ。
そんな鳴き声が聞こえた気がした。
……猫かな。
「にゃぁ」
「おいおい、どうしたんだ?」
俺に近付いてくる。
猫の体毛は湿っていた。
「にゃぁ~!」
あまりにも近付いてくるもんだがら、さっきの走りの勢いを落として、ついには止めた。
「にゃぁ!」
足を止めると、嬉しそうに近付いてくる。
───可愛いな。
「俺みたいなやつに懐くなんて.....神様からの慰めかなんかか?」
「ゃ~っ!」
俺の足元まで数cm。
……俺は猫を撫でてみた。
「にゃぁ」
嬉しそうだ。
尾は上がり、幸せそうな表情をしていた。
「飼おう......かな」
こんなに懐いているんだ。
別に、いいよな。
「よいしょっ......と」
俺は抱き抱えて、家へ持って帰ろうとする。
「にゃ.....っ!」
猫は、俺の首に向かって牙を立てて───
「なっ...........」
噛んだ。
「うっ......あっ」
あれ、あれ、首を噛まれただけなのに......っ
───動悸が異常に早くなる。
「だ、だれか......」
くるしい、クルシイ、苦しい.....!
「あっ.......が」
───俺は、災難すぎる人生の物語を閉じてしまうようだった。
「───ふふっ♡」
……そんな時、誰かが尊に囁いていた。
尊はそんなことも露知らずに倒れてしまう。
「大丈夫.......かなぁ?尊くん」
少女は、心配していた。
ここまで読んで頂きありがとうごさいます!
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