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第6話:リリアンの足跡

第6話:リリアンの足跡


「私たちはあの証人たちが信用できないと証明しました。次はどうするのですか?」

私の事務所へ向かう馬車の中で、エレノーラが初めて積極的に、期待に満ちた声で質問してきた。

彼女の心は、受け身の被害者から、積極的な参加者へと変わり始めていた。


「次は――」

私は柔らかなシートにもたれ、目を閉じて休息しながら、頭の中で学院の平面図を展開した。

「リリアン嬢の“足跡”を探しに行く。」


「彼女の足跡? 彼女は毎日学院内を歩いているでしょう。それに何の意味が?」


「いや、私が探しているのは、彼女の堂々とした、みんなが知っている足跡ではない。」

私は目を開き、分析の光を宿した瞳で彼女を見つめた。

「探しているのは、そこにあるべきでない、彼女が“被害者”であることと矛盾するような足跡だ。」


以前に私が立てた仮説によれば――書架は誰かが仕掛けを使って倒したものだった。そうであれば、必ず「操作する者」が存在する。この操作者には、自身を隠しつつ、全体を観察でき、なおかつ力を加えて仕掛けを引くことができる絶好の位置が必要だ。


その場所こそが、リリアンの脚本における最大の綻びだ。

彼女は全員の視線を舞台中央の自分とエレノーラに集中させたが、完璧な舞台の裏には、必ず痕跡が残るものだ。


私たちは再び、公爵家の特権を利用して、深夜の静まり返った図書館に入った。


「本当に、まだ私たちが見落としているものがあると思うの?」

エレノーラが小さな声で尋ねた。広々とした空間では、彼女の声にも反響がついた。


「きっとある。」私は確信を込めて言った。

「エレノーラ嬢、当時あなたがいた場所に戻ってください。」


彼女は指示に従って動いた。


「よし、今の私はリリアン。」

私は彼女の正面に立ち、そのときの状況を再現する。

「私たちは口論していて、声が次第に大きくなり、周囲の注意をすべて引きつけた。」


私はレーダーのように視線を空間中に巡らせる。

もし私が操作者だったら、どこを選ぶ?

リリアンの合図を視認でき、タイミングよく仕掛けを引ける場所――。


私の目は幾列もの書棚を越えて、ある完璧な角に固定された。

そこは高い書棚と書棚の間にある、視覚的な死角だ。

そこからは、棚の隙間を通して事件の中心がはっきりと見える一方、他のどの場所にいる人からも、その角に誰かが潜んでいることには気づけない。


私はゆっくりとそこへ向かった。


「何を探しているの?」

エレノーラが後をついてくる。


「舞台の袖、マジシャンの助手の立ち位置だ。」私は小声で答えた。


その角は薄い埃に覆われ、普段ほとんど誰も踏み入れていないことを示していた。それ自体は不思議ではない。

しかし、灰色の均一なカーペットの上に、極めて微かな、不自然な跡を私は見つけた。


それは不完全な靴跡だった。あるいは、つま先立ちの状態で一瞬だけそこにいたような、浅い足の輪郭。


私はしゃがみ込み、道具袋からルーペを取り出した。


「これは……」エレノーラも覗き込み、驚いたように声を上げた。


「誰かの足跡だ。」私は冷静に言った。

「大きさと靴の形状から見て、若い女性のものだと思われる。しかも見てごらん、」

私はピンセットで跡の横の埃をそっとすくい上げた。

「この埃は踏みしめられた後、こすれて消えた痕跡がある。つまり、この場に立っていただけでなく、力を加える動作――たとえば、抵抗のあるロープを後方へ引くような動作があったことを示している。」


すべてが私の仮説と一致した。


「リリアンだ! きっと彼女がここに隠れていて、あなたが近づいた瞬間に仕掛けを作動させて、その後、走り出して落下に巻き込まれたふりをしたんだ!」

エレノーラが興奮して言った。


「いや、時間が足りない。」

私は首を振って彼女の推測を否定した。

「この角から事件現場まで走るには、少なくとも五秒はかかる。あれだけ多くの人の目がある中では、その時間差はあまりにも目立つ。つまり、操作者は別にいる。」


「共犯者だ!」


「その通り。」私は彼女の答えを肯定した。

「リリアンは舞台の中心で“被害者”を演じ、彼女の共犯者が舞台袖で技術的な操作を担当した。二人の協力で、この芝居は成り立っていた。」


私はこの足跡を魔法カメラで記録し、サンプルを採取した。


「で……でも、この足跡が共犯者のものだと、どうやって証明するの? たまたま誰かのものかもしれないし……」

エレノーラがもっともな疑問を投げかける。


「良い質問だ。確かに、この足跡単体では多くを証明できない。」

私は立ち上がり、手袋の埃を払いながら答える。

「だが、これで方向性が見えた。リリアンには暗躍する共犯者がいる。そしてその人物は、彼女が最も信頼し、親しい相手であるはず。」


私の脳裏に、企画書に書かれていた、リリアンのそばにいた、目立たない人物の姿が浮かんだ。


「一見、気弱で臆病な少女。だが実際には、リリアンに最も忠実な共犯者であり、すべての“裏方”作業を担っている。」

私はその人物設定を静かに口にした。


「誰のこと?」 


「リリアンの侍女、アンナだ。」私は答えた。

「次の調査対象は彼女。事件当時、彼女がどこにいたのかを突き止める必要がある。完璧なアリバイがなければ――この足跡の持ち主は彼女ということになる。」


私たちは図書館を後にした。

私の中では、すでに証拠の鎖がほぼ完成していた。

動機(濡れ衣を着せるため)、手口(仕掛けの操作)、物理的証拠(傷跡と本の落下位置)、証言の崩壊(記憶の錯誤)、そして共犯者の手がかり(足跡)。


パズルのピースはほとんど揃った。


「探偵さん――」

馬車の中で、エレノーラが私を見つめ、かつてない信頼と敬意のまなざしを向けてきた。

「どうしてあの角を調べようと思ったの?」


私は彼女の視線を受け止めながら、心の中で無数の過去の記憶がよぎった――私がこの手で捕まえてきたスリや詐欺師、爆破の専門家たち。

彼らの失敗から学んだことがある。

プロフェッショナルは、常に最も効率的で、最も見落とされやすい場所を選ぶ。

リリアンの手口には、その“プロ”の匂いがあった。


だが、それを言うわけにはいかない。

だから私は、静かに姿勢を整え、あいまいでありながらも専門的な答えを返した。


「私は多くの犯罪事例を研究してきました。成功する詐欺はすべて、視覚の盲点と心理の固定観念を巧みに利用しています。私がしたのは、ただその最も見落とされやすい盲点を探しただけです。」

ここまで物語を読んでいただき、本当にありがとうございます!


もしこの物語を少しでも気に入っていただけましたら、ぜひページ下部の**【★★★★★】で星5つの評価を、そして【いいね】、【コメント】**で、あなたの声を聞かせてください。皆様からいただく一つ一つの応援が、私が次章を書き進めるための、何よりのエネルギーになります。


また、ご友人やご家族にもこの物語をシェアしていただけると、大変励みになります。


【更新ペースと将来の夢について】


現在の更新は、基本的に週に1話を予定しています。

ですが、皆様の応援で週間ランキングが上がれば、更新頻度も加速していきます!


読者の皆様、どうか力強い応援をよろしくお願いいたします。

そして、この物語が漫画化、さらにはアニメ化へと繋がるよう、どうかお力添えください!皆様と一緒にその夢を見られることを願っています。


これからも応援よろしくお願いいたします!

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