第5話:証人の嘘
第5話:証人の嘘
エリノーラの侍女があの詩集『風のささやき』を私の手に渡したとき、指先には頻繁に読み返されたことによるページの縁のわずかなざらつきが感じられた。私はそれをすぐには開かず、丁寧に鞄の中へとしまった。この証拠品には、最も適切な登場の時を待ってもらう必要がある。
「物的証拠は確保した。次は『人証』に取り掛かろう。」私はエリノーラに言った。
「私が人を突き飛ばしたって言い張ってる連中のこと?」エリノーラは嫌悪感をあらわにした声で言った。「あんなの、リリアンに買収されてるに決まってるじゃない!」
「いや、買収されたとは思わない。」私は首を振った。「金で買収すれば必ず痕跡が残るし、暴かれやすい。リリアン嬢のやり方は、それよりもずっと巧妙だ。」私はエリノーラをまっすぐに見つめた。「彼女は彼らに『嘘をつかせた』のではない。『自分が真実を見た』と信じ込ませる状況を作り出したんだ。私たちがやるべきことは、彼らを責めることではなく、優しく、彼らの記憶の中にある幻想を突き崩すこと。」
私の計画は、事件当時その場にいた目撃者たちに個別に会うことだった。エリノーラが公爵令嬢としての権限を使い、学院の応接室で私たちとの面会に応じさせるのはたやすいことだった。
最初に入ってきたのは、フィリップという名の男爵家の息子だった。彼は少し緊張した面持ちで、エリノーラを見た瞬間、丁寧に一礼しながらも、その視線は無意識に私という見知らぬ平民に向けられていた。
「おかけください、フィリップ様。」私は彼に私の正面のソファを勧めた。エリノーラは私の指示通り、一言も発せず隣に座り、美しい彫像のように沈黙を保ち、見えない圧力を加えていた。
「本日お越しいただいたのは、事件当日のいくつかの細部を再確認したかったからです。」私は雑談でも始めるような穏やかな口調で言った。「あなたは、リリアン嬢をエリノーラ嬢が突き飛ばすのを目撃したとおっしゃいましたね?」
「は……はい。」フィリップは頷いたが、その視線は落ち着かない。「あのときのエリノーラ様は……とても怒っているように見えました。」
「わかります。」私は頷いて共感を示した。「では、その『突き飛ばす』動作について、もう少し詳しく教えていただけますか? エリノーラ嬢は右手を使っていましたか? 左手でしたか? それとも両手?」
この問いは彼の予想を超えていたようだった。彼の脳は、存在しない記憶の断片を必死に探し始めた。
「えっと……」彼は数秒間ためらった。「たぶん……両手、だったと思います。そう、両手で、強くリリアン嬢の肩を押しました。」彼の語調は徐々に確信に満ちたものへと変わり、まるで本当に思い出したかのようだった。
私は頷き、「両手」とノートに書き記した。
「ありがとうございました。大変参考になりました。」私はノートを閉じ、短い面談を終えた。フィリップはほっとしたように一礼し、そそくさと部屋を出ていった。
次に現れたのはクララという名の女子学生で、リリアンの親友だった。彼女の目にはエリノーラへの敵意がはっきりと浮かんでいた。
私は同じ質問を彼女にもした。
「そんなの、はっきり見たわよ!」クララは鋭く断言した。「エリノーラ様は右手で、リリアンの胸を思いきり突いたのよ! リリアンはあんなにか弱いのに、倒れそうになってたじゃない!」
私は再び頷き、「右手、胸」と「両手」のすぐ隣に記録した。
私の内心は微動だにしなかった。このような状況は、前世で扱った案件の中で何度も見てきた。心理学ではこれを「記憶の歪曲」あるいは「確証バイアス」と呼ぶ。人は曖昧な状況を思い出すとき、最も「理にかなった」想像で記憶の空白を埋めてしまうのだ。
リリアンはこの心理を巧妙に利用していた。彼女は「エリノーラの怒りの口論」という前提と、「か弱いリリアンが倒れる」という結果を巧みに演出した。その間にある「突き飛ばす」という肝心な動作を、彼女自身が実行する必要などなかった。ドラマチックな衝突さえあれば、現場にいた人々の脳は自動的に存在しない「犯行事実」を補完してしまう。
フィリップは、怒って人を突き飛ばすなら両手に違いないと考え、「両手で突いた」のを「見た」と思い込んだ。クララは、リリアンのか弱さを強調したかったがために、「右手で胸を突いた」というより攻撃的な動作を「見た」と主張した。
彼らは嘘をついたわけではない。彼らは自分の脳が作り出した嘘を語っているだけだった。
それこそが、リリアン・エステルという「完璧な犯罪者」の本当の恐ろしさだった。彼女が操るのは証人の口ではなく、彼らの記憶そのものだった。
最後の証人が去った後、エリノーラがついに堪えきれず口を開いた。「あんな質問だけで……何か証明できるの?」
私はノートを彼女の方へ向け、そこに記された矛盾だらけの答えを見せた。
「これが証明しているのは、誰一人として、『突いた』という動作を正確には見ていないということ。」私は言った。「彼らはそれぞれ、自分の想像に最も合った『記憶』を語っているに過ぎない。複数の証言が核心部分で一致せず、しかも矛盾しているとき、その人証の信頼性は大きく損なわれる。」
エリノーラは記録を見つめながら、初めて「はっきりと理解した」という光を目に宿した。彼女は「私は突いていない」という点に執着していたが、「彼らがそもそも見ていない」という切り口で反撃できるとは思いもしなかったのだ。
「あなたの敵は本当に手強い。」私はペンのキャップを閉じた。「彼女は人間の本質的な弱さを知り尽くし、それを完璧に利用している。彼女は私たち全員の注意を『突いたかどうか』という偽りの論点に誘導した。」
「じゃあ……本当の問題って何?」
「本当の問題はね、」私は立ち上がり、昨夜私たちが調査したあの図書館を見やった。「君と彼女が口論し、全員の視線がそちらに向いていたその隙に――あの本棚を倒壊させた『仕掛け』を、誰が、いつ、どうやって作動させたのか、ということ。」
物理的な仮説はすでに立てた。人証の信頼性も崩した。今、最後のピースがまだ欠けている。
それは、リリアン・エステル本人の行動経路だ。
「証人たちの尋問は終わった。」私は振り返り、エリノーラに言った。「次は、その『被害者』の足取りを追う番よ。」
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