第15話:温室庭園の秘密
第15話:温室庭園の秘密
私の事務所では、並べて置かれた二つのガラス瓶が魔晶灯の光の下で静かに神秘的な気配を放っていた。それらは私たちの手にある唯一の、嘘をつかない証人だ。しかし私は、彼らの言葉を理解できない。
土の異常を見抜き、繊維の特異性を識別することはできても、私はこの世界の異邦人であり、草木や万物に関する知識は限られている。肉眼だけで、それらの正確な名前や由来を断定することはできない。
「どうやら、案内人が必要ね」私は隣にいるエリノーラに言った。「大地と植物の言葉がわかる専門家が」
エリノーラはしばらく思案し、翠緑の瞳に一筋の光を宿らせた。「思い当たる人がいるわ。王家の首席植物学者、エルムズワース師よ。王国一の植物の智者で、女王陛下の私設庭園と、王立学院で最も謎めいた『星塵温室』を管理している。ただし……」彼女は少し躊躇した。「彼はかなり風変わりで、人付き合いを極端に嫌うの。特に私たちのような貴族とは」
「事実しか信じず、権力を信じない学者か」私は問い返した。「それなら、私たちにとっては理想的な相手ね」
エリノーラの案内で、私たちは学院の庭園の大半を抜け、高い生け垣に囲まれたひっそりとした一角に辿り着いた。そこがエルムズワース師の住まい兼作業場――巨大なガラス製の温室だった。一歩足を踏み入れた瞬間、湿った土と腐植質、そして数百種の奇妙な花の香りが混じり合った濃厚な空気が鼻を打った。温かく湿った空気は、まるで別世界にいるかのような感覚を与える。
乱れた髪と髭が鳥の巣のようになっている老人が、光る蔓植物を巨大な鋏で黙々と剪定していた。私たちの到着に、彼はまったく反応を示さなかった。
「エルムズワース師」エリノーラが一歩進み出て、丁寧に礼を取った。「突然の訪問をお許しください、私たちは――」
「ヴァレンシア家のお嬢さんか。知っておる」老人は振り向きもせず、しゃがれた荒い声で答えた。「珍しい花を舞踏会でひけらかしたくて来たなら、帰りなさい。わしの花は、娘たちの見せびらかしのためのものではない」
エリノーラの表情がこわばった。完全に拒絶されたのだ。
私は彼女がこれ以上不快な思いをしないよう、前へ出て、そっと二つのガラス瓶を老人の手元の石のテーブルに置いた。
「師よ」私は落ち着いた声で言った。「花を求めて来たのではありません。二つの謎を抱えて、あなたの叡智にすがりに来たのです」
エルムズワースはついに剪定ばさみの手を止めた。不機嫌そうに瓶を一瞥したが、その目が瓶の中身に触れた瞬間、濁った老眼の奥に、ごくわずかな鋭い光が走った。
彼は剪定ばさみを置き、土の入った瓶を手に取り、コルク栓を抜いた。小指で少し摘まんで鼻の下で嗅ぎ、その後、舌先で味を見た。次に、繊維の入った瓶を取り、清潔なガラス板の上に中身を落とした。そして眼鏡のポケットから、色とりどりの水晶片を埋め込んだ、非常に複雑な拡大鏡を取り出した。
彼はレンズを切り替えながら、時には脇の瓶から透明な液体を一、二滴垂らした。その液体が繊維に触れると、かすかな光を放った。
エリノーラと私は、静かにその様子を見守った。呼吸さえ控え、鑑定の邪魔をしないようにした。
「面白い……」しばらくして、エルムズワースは拡大鏡を置き、しゃがれた声でつぶやいた。「実に、興味深い組み合わせだ」
彼は振り向き、初めてまっすぐ私たちを見た。その眼差しは、もはや侮蔑ではなく、互角の相手を見定めるようなものだった。
「娘さんたちよ、これはどこで手に入れたんだ?」
「それはまだ明かせません」私は答えた。「ですが、ぜひ師のご見識をお借りしたい」
「ふん」彼は隣に積まれた山のような古書から、植物皮革で装丁された分厚い図鑑を取り出した。「この土はな……」最初の瓶を指差す。「ただの庭土ではない。その色、湿度、そして微かに残る魔力の気配……これは『星銀壌』。ムーンストーンの粉末に十数種の魔法薬草の腐植質を混ぜて特別に調合されたもの。強い魔力環境を好む稀少植物のために使われる」
続けて、繊維を指した。「そして、これはな」彼の口調にわずかな称賛が混じる。「『静寂のブルーベル』の茎の繊維だ。この花は極めて繊細で、そばで大声を出すと枯れるとさえ言われている。その繊維は柔らかくも強靭で、心を鎮める微弱な魔力を持ち、高級魔法ローブの裏地素材として重宝されておる」
語り終えると、彼は鋭い眼差しで私を見つめた。「この二つは、いずれも非常に珍しい。そしてこの王国で、『星銀壌』を使って『静寂のブルーベル』を育てるような贅沢な場所は、ただ一つしかない」
私の心臓が高鳴り始めた。
「それは、わしが直々に管理しておる、女王陛下の私設温室――学院の禁区にある『星塵温室』だ」
その答えは、まるで稲妻のように、あらゆる霧を切り裂いた。
私はすぐに尋ねた。「師、その温室には、自由に出入りできるのですか?」
「自由に?」彼は鼻で笑った。「王族とわし以外が入るには、学院長と王家魔法顧問の両方の許可が要る。それに加えて、入口の《訪問者名簿》に、氏名・身分・目的を記載せねばならん」
ガラスの温室を出るとき、エリノーラの足取りはふわふわしていた。真実の輪郭は、もはや目を背けられぬほどに明瞭だった。彼女はすぐさま父から与えられた権限を行使し、最速でその《訪問者名簿》の写しを取り寄せた。
事務所に戻る馬車の中で、私たちはその名簿を一枚一枚めくっていった。エリノーラの名前は、一度も出てこなかった。
しかし、事件当日――つまり三日前のページには、ある整った筆跡の名前が、はっきりと記されていた。
「リリアン・エステ。目的:創作のインスピレーションを得るため、特別に希少植物の写生を許可」
動かぬ証拠だった。
エリノーラの指がリリアンの名前をなぞり、その身は感情の高ぶりに微かに震えていた。今回は怒りではない。ついに、終わりなき闇の中で、「真実」という名の光を見つけたことへの震えだった。
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