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やる気、加護を与える

 その日の夜。


 操船室の奥に在る海図室。私と制服すずので群島周辺が描かれた海図台を取り囲んでいた。


「群島周りは救助の過程であらかたスキャンを施したので大丈夫ですが、問題は外洋ですね。星界システムから引っ張ってこられないんですか?」

「……ならこれを使えばいい【備品作製】」


 私はそう言って、すずの専用眼鏡を創り出して渡した。眼鏡を掛けさせて使い方を教えるとすぐにマスターした。さすがは人工知能、精密機器の操作はお手の物のようだ。


「これが星界システム。衛星軌道上から監視の必要なく、ほぼリアルタイムで惑星各地の情報が手に入れられる、ですか。つくづく反則的でチートなツールですね」

「それでも段階的な管理者権限に制限が掛かってるから、いま渡したヤツには大雑把な機能しか付いていないけどな」

「これで大雑把、ですか……。海図台にアウトプットできないんですか?」

「設定項目から無線データリンクを選択して使えばいい」

「……ああ、これですか。安全な航路が確認できて航海も捗りますね」


 海図台に群島周辺と近隣の大陸地図が映し出され、そこに現在の海流が重ねて表示された。


 まだ漂着者たちの希望は聞いていないけど、事前に準備しておくことは大事だと思う。


 私と制服すずので地形と海流を確認していると、医務室から呼び出しを受けた。どうやらアリスティアが目を覚ましたらしい。


 それを聞いた私は、制服すずのと一緒に医務室へと向かい、そこで待っていた看護服すずのに案内され、アリスティアが寝ていたベットまで移動する。


 まだ薬の影響が完全に抜けていないのか、茫然自失といった感じで座っていた。


「話は、出来るのか?」

「見た目はこんな感じですが、話しかけた言葉に反応しているので、おそらく大丈夫です」


 おそらく大丈夫、か。一応、専用眼鏡の人物鑑定でも精神状態は安定と出ているから、軽く話し掛けるてみるか。


「初めましてお嬢さん。私はこの船の船長をしているデザイアだ」

「……わ、たしはアリ、ス……ティア、バー……デン、シルト」

「アリスティア・バーデンシルトだな。いま貴女あなたがどのくらい現状を把握しているか確認したいので幾つか質問していいか? 答えたくないのなら答えなくていい」

「…………」


 無言で頷いたので幾つか確認していく。と、言っても最初に鑑定でたことの再確認だ。


 医務室に男の気配がない分、夕方よりも会話が成立した。それでも、時折見せた身体を震わせながら答えに窮する姿はとても痛々しかった。


「……そうか。よほど怖い目に合ったんだな。こちらの方で把握していた情報と大体一緒だ。辛い記憶を思い起こさせてしまって悪かった」


 身体を震わせながら涙を流すアリスティアの横に、看護服すずの座ってフォローしていた。


「心の傷や記憶を消すことは出来ないが、精神的に重くし掛かった気持ちを軽くすることは出来る。試してみるか?」


 この言葉に、アリスティアはこちらに顔を向け、涙で腫らした目を大きく開けてこちらを見た。そして少し悩んだのか間を置いてから小さく「……はい」と返事をしてうなずいた。


 私は、引き篭もり体質の創造者の思考を引き継いでいるので、他者のメンタルケアなんてものは判らない。しかし、ここはその創造者の作った星界内なのだ。やりようはある。


 専用眼鏡を使って、星界システムから星界住人の個人データ、アリスティア・バーデンシルトのデータを呼び出した。


 ランダム設定されていた精神パラメーターに介入して、アリスティアの心を現在よりも強く持てるように弄った。しかし、目の前に居るアリスティアの見た目に変化はない。


 鑑定で確認すると、アリスティアにデザイアの加護という称号が付いていた。星界の住人へ直接的に介入するとこうなるのか。


「ウチの従者であるイステールが身体に治療を施してから元通りだ。あとはアリスティア、君の気の持ちようだ」


 とてもキナ臭い言葉だと自分でも思うが、精神のパラメーターを弄っただけなので、自分で内面の変化に気付いてもらうしかない。


「それと最後に、アリスティアはクローヴィス王国に今回のことを報告する義務や責任があるんじゃないか? もし、国に帰る気があるのなら、この船で送ってやるけど、どうだ?」


 私の言葉を聞いたアリスティアは俯いたまま答えに窮していた。色々と思考を巡らせているのだろう。


 己が隣国の援軍として率いていた船団が、海賊に襲われて壊滅したのだ。


 それが国から与えられた義務とはいえ、現場の責任者としてトップを任されたのだ。何も出来ずに壊滅したと報告すれば、なにかしらの沙汰が下されると思われる。義務には責任が伴なうのだ。


 今回の場合、現場責任者であるアリスティアになるだろう。そう考えると、簡単に帰りたいとは言えないかもしれない。


「まぁ、他の漂流者たちを送ったあとにするから、すぐに決めなくてもいい。ギリギリまで考えて、何かしら決断した時は、アリスティアの考えを尊重しよう」


 意図せずだけど、デザイアの加護を与えてしまったのだ。心情的に、しばらくはフォローしてやりたい思う。


 そして、翌日の朝。二人を除いて帰りたい場所の希望が出揃った。


 まず、アリスティア・バーデンシルトは様子を見ながらギリギリまで保留。


 二人目がリーリア・セノナ。奴隷の漂着者。命の恩人である私の身の回りの世話をしたいから島に残りたいと願い出ていた。


 ……正直、身の回りの世話はイステールがいるのでいらないのだが、あまりの熱意に思わず了承してしまった。すずのの予備機を付けて、瑞穂の館の留守と保守を頼むことにする。


 ちなみに、リーリアとセットでいたアルマ・リュジューも最初は残ると言ってたが、お話し合いをしていくうちに地元の国に帰ることになった。


 お話し合いの内容が、船の中で摂った食事のレシピを教えて欲しいってことだったので、二つ返事で了承したところ、そのようになった。


 この星界は、地球型星界を模倣しているとは言え、現地に同じ食材や調味料があるか判らないけど、まぁ頑張ってくれたまえ。

我が妄想。

仕事は相変わらずデスマーチなので次の更新は未定。

俺、GWはゆっくり休むんだ。……済まぬ。

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