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やる気、二日目の活動を開始する

 食後に緑茶で一服したあと、イステールは朝食に使った食器を片付けるため、厨房に向かった。


 私はその合間に聖域結界を張ろうと思い、瑞穂の館の正面入り口から外に出た。空は青空が広がっており、昨日の台風の影響は殆どなさそうだ。では……。


「【聖域結界】」


 昨日はステータス画面から使用したけど、今日は専用眼鏡を使って鍵言コマンドを唱えてみた。


 これで群島の外周十キロ、高度三百メートルの円柱状に通常では目に見えない聖域結界が張られた。


 私に対して悪意や敵意があった場合は聖域外に排除する設定も変わらずだ。


「…………ん?」


 専用眼鏡に、群島の海岸沿いに島の小動物以外の反応があった。


 その大きさから星界住人と推測されるのだけど、昨日はなかった反応だ。もしかして昨日の台風で避難してきたのか?


 それにしては、群島の島々に散っているのはおかしい気がする。ドロシーを飛ばして確認するか。って、イステールと一緒だっけ。


 なんかもう、ドロシーはイステール専用になってる気がする。しかも本来の撮影目的じゃない愛玩用として。自分用に新しいの創ろうかな。


 そんなことを考えながら、私は館の厨房に向かい、食器の後片付けをしているイステールに理由を話してドロシーを借りた。


 食堂に戻ってドロシーの視界と操作を専用眼鏡を同期させ、窓から放って偵察に飛ばした。青空に羽ばたいていくドロシーを見送る。


 瑞穂の館周辺を旋回してから、専用眼鏡に反応があった場所、島の反対側に向かって飛んでいった。海岸上空に到着したら、海岸線に沿って飛ぶように指示を出してある。


 私は、ドロシーの姿が見えなくなると、近くにあった椅子に座って、専用眼鏡に投影された映像を見ることにした。


 せっかく、巡洋船クルーザーを起動して、練習がてら処女航海に出ようと思った矢先にこれだよ……。


 島中央の火山や木々に覆われた小高い山を越えて、程なくして、ドロシーが反応のあった海岸上空に到達した。


 偵察映像に映し出されているのは、海上に漂っている破損した大量の木材。大小様々な木片、布の付いた柱っぽいのや壊れた樽や木箱、などなど。一部は砂浜に打ち上げられていた。


 その場で旋回させて辺りを確認させたが、大元になったであろう船体は見当らない。群島の沖で座礁か難破して漂着したのか、いずれ小型木造船舶が台風に遭遇して大破したように感じた。


 ……となると、私たちのアレが原因、かな?


「……ん、あれか?」


 星界の住人らしき影を見つけた。それはまばらに倒れていて一つ、二つ、三つ……。全部で七つか。専用眼鏡では、そのうち四つに生体反応はあった。


 イステールは、食器の後片付けが終わったのか、傍にやってきた。手にはトレーを持っており、その上に緑茶のカップが乗っていた。


「マスター、いまどんな状況ですか?」


 それを、そっと置きながら尋ねてくる。その雰囲気は朝食時までのモノとは違っており、星界外で活動していた時と同じ従者然としていた。察して、意識を切り替えたか。


「……いま、それらしい住人を見つけた。全部で七つだけど、専用眼鏡の反応は四つだ。他の三つに反応がない。この島の分だけで、他の島はまだ確認していない」

「住人、ですか。救助はするんですか?」

「ありがとう。……実は悩んでいる」


 横に控えたイステールに礼をいい、置かれたお茶を持ち上げ、ひと口含む。


 星界創造システムで弄ってるときは、創造者の視点から超速映像と数値変化でしか見ていなかったから、システム内で営まれる泡沫の生命として、感情移入することすら無かった。


 所詮、観測する対象であって、星界外同様になにもせずこのまま見ているだけでいいんじゃないか。という気持ちがある。


 逆に、同じ星界内にって、手が届く範囲で助けられるのに見て見ぬフリをするのは、やる気としては積極性が欠けるんじゃないか?


 それが偽善だったとしても、己の存在証明として出来ることはやれ、と内側から囁いてくる欲求。そんな感情も沸き起こっている。


 休暇として遊びに降りた星界だ。創造者本体に絡んで、時間制限がどのくらい有るのか、どのくらい居られるのか判らない。


 できることなら休暇を優先させたかったけれど、どうせ群島ここに降りた時点で、遅かれ早かれ星界内のなにかしらに関わることになったのだ。


 私じゃないけど、初日から気象操作鍵言コマンドである天嵐解放をぶっだし。……と言うか、おそらく今回の原因ぇ。


 ……だったら、私自身が好きなように動いても構わないんじゃないか。元々はそのつもりだったのだし、休暇中に突発的に起きた出来事イベントと考えれば、それほど悩む必要なんてない。


「決めた。状況によるけど、やれるだけやってみよう」


 まず、現場まで向かう方法だけど、森や島の中央に在る火山を越えて島の反対側に抜けなければいけない。迂回しながら【歩道作成】で進むとすれば時間が掛かる。


 ならば、ここと港湾を結んだように【隧道作成】を使用して、火山を避ける道筋で地下通路を創る。あんまり無秩序に地下を弄るのは宜しくないけど、島の反対側と結ぶ通路として割り切る。出口には仮になる建物……いや、フリー素材にあった灯台と桟橋も設置しておくか。


 あとは電気自動車に乗って現場に向かって、現地住人の保護と治療を施すことになるけど、これはイステールに任せよう。


「イステールにも動いてもらう。この島に漂着した住人の保護と、場合によっては治療も。助かりそうな者だけでいい。それと、私は別行動だ」

「はい、了承しました。ところでマスターはなにを?」


 横に控えていたイステールが肯定の返事をして、私の別行動の理由を聞いてきた。


「私は昨日造った港湾に向かって巡洋船を起動、準備をする。専用眼鏡の情報だと、他の群島に漂着した星界住民も居るようだし、その移動の為に必要だ」

「承知しました」


 そう言うと、イステールは私が飲み干した緑茶のカップを片付けて厨房に向かった。


 その間、専用眼鏡を使って、いまも現場上空で旋回しながら映像を送り続けているドロシーに、他の群島の様子を確認するよう新たな指示を与えた。


 しかし、ドロシー一羽(台)だけだと、一箇所しか見に行けないな。いまのうちに追加しておくか。


「【備品作成】×二」


 ドロシーと同じ高機能ドローンを二台作製した。そして、目的地をドロシーと別の島に設定して偵察の指示を与えて窓から放った。隼型の高機能ドローンの三台体制だ。これで捜索範囲が広がる。


「……さぁ、私たちも動こうか」

「はい、マスター」


 イステールが戻ってきたところで、声を掛けて食堂を後にする。向かうは瑞穂の館の地下駐車場。

我が妄想


第二話「やる気、星界の小島に降り立つ」若干修正。

いま、死火山や休火山って言葉は使わないのなぁ……。

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