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第十話

作者体調不良のため、本章にて毎日投稿を中止します。

毎日投稿を初めてちょうど一ヶ月。ここまで執筆・投稿を続けてこられたのも、全ては拙作を読んでくださる読者様のおかげです。

毎日投稿をしなくなっても細々と執筆は続けて参りますので、更新された際にはまた読んでいただけると嬉しいです。

「……ブリジット。お前いつから人間を辞めたのだ?」


 次の日、全快したブリジットを見てイシュバーンは呆れながら問いかける。


「それはお姉さんが知りたいねえ。あんたほどじゃないが、結構なケガだったんだけど……」


 手を握ったり開いたりして体の状況を確認する。


「やれやれ、カイン殿に憧れるあまり肉体まで変質したのか。ほどほどにな」

「人を化け物みたいにいうんじゃないよっ。お姉さんだって驚いんてんだから。もう数日はかかると思ってたんだけどねえ」


 己の体に起きた出来事に疑問符を浮かべるブリジット。


 その会話を聞いていたミニョンは傍に控えていたアドラーと顔を合わし大きく頷く。ミニョンに関しては若干不服そうな色を顔に載せながらも、ブリジットに言葉を投げる。


「ブリジットお姉様」

「ん〜なんだい。ミニョンまでお姉さんが化け物だっていうのかい……?」

「違うの。ただお願いがあるの」

「……お願い?」


 怪訝な顔をするブリジットに向かってミニョンは、長らく体に纏わせていたローブを脱ぎ去った。


 それを認めてからアドラーも同様にローブを脱いだ。


 ーーそれは一言でいえば「愛玩」だった。


 少しうねった純白の髪、紅玉の如き双眸、真珠の肌、小柄な体。


 絵本から出てきた、若しくは人形に命が宿ったと形容できる容姿をしている。


 他方アドラーも、紺碧の髪をボブヘアーにしており、ミニョンと同じ紅玉の瞳を有している。


 こちらに関してはスポーティーな印象が先行している。


 唐突な容姿の開示に驚いた様子のブリジット。横になっているイシュバーンも息を飲んでいる。


「ミニョンたちは訳あって"聖女"を探しているの。カインという人の娘たちも"聖女"の可能性があるけど、ミニョンはブリジットお姉様推しなの」

「お、おう。そうかい。お姉さんはどう反応したらいいのかい」

「なにもしなくていいの。ただしばらく一緒に居させて欲しいの。ユガに着いても」

「ん〜、お姉さんたちはカイン殿の護衛があるからまた砂漠を越えて帝国に戻るんだよ」


 ブリジットがどうしたものかと頭を悩ましていると、カインがシャルティとサージュ、レティとドイルを連れて会話に入ってくる。


「そういうことはまず俺に話を通すのが筋だろうが……」

「わ! 可愛い〜! え、ミニョンさんとアドラーさんなんですか?」

「むむむ、あたしだって負けてないもん」


 可愛いものに目がないシャルティは興奮し、サージュは対抗心をメラメラと燃やしている。


「……詳しく話せ。姿を見せたってことはその意思があんだろ」

「もちろんなの」


 カインが顎を上げて説明を求める。ミニョンはアドラーに目配りし、腰に佩ていた二振りの黒い剣をそれぞれ握る。


 一瞬張り詰めた緊張感が辺りを支配するが、それはすぐに霧散することになる。


 二人が剣先を地面に刺し、片膝をついたからだ。


「我らは『穢れなき慈愛の騎士団』。歴史の彼方に消えた"聖女"を探し、保護し、お守りすることが目的なの。あなたたちは"聖女"の可能性があるの。だから見極めさせてほしいの」

「今代の聖女とは違う"聖女"だといってたな。なぜその"聖女"を探してる? 見つけてどうする気だ?」


 カインの質問に答えたのはアドラーだった。


「騎士団はその"聖女"をお守りしていた側近の流れを汲んでいます〜。だからこそ歴史に消えた"聖女"を見つけ、再びお守りするってのが目的ですかね〜」

「歴史に消えたってことはだ、それだけのことがあったんだろうさ。お前たちは聖女を見つけて歴史を変えるのか、それとも名誉の回復でもしたいのか?」

「そんなこと知りません〜」

「あ?」

「聖女を見つけろってのは予言でして〜、聖女様がなにを成すのか、なにを成したいのかは"神託"によりますので、詰まるところ神様次第っすね〜」

「予言に神託、神ときたか……」


 カインは腕を組んで熟考する。経験上、神というのは往々にして身勝手だ。その言葉を賜われる聖女。更には北にいる聖女とは異なる聖女の存在。


 ーーどう考えても面倒にしかならねぇ。


 これは断りの一択である。そう思い唇を動かそうとするも、ミニョンの言葉に遮られる。


「聖女の可能性がある以上、騎士団は命をかけて守ると誓うの」

「可能性だけで命をかけるのか? 随分と安い命なんだな」

「聖女のために自分の命を捨てること、これ以上の愛はないの」


 その言葉に目を見開くカイン。記憶の中の言葉と重なる。


『……はあ、はあ……友のために自分の命を捨てること、これ以上の愛はねえ。後は頼んだぜ、カイン』

『そんな馬鹿を救うことこそが本当の慈愛なんだ、あほんだらッ』


 八年前の出来事を刹那、回想する。


 似たような言葉を聞いたことは偶然である。されど、この縁は必然であるかもしれない。


 まだまだ怪しさマックスだが、一度同行を許しているのだからいいかと思う。


「わあった。お前らの好きにしろ。ただし! 邪魔だけはするなよ。それが条件だ」

「感謝するの。神のご加護があらんことをなの」

「ありがとうございます〜。神も喜んでるっすよ〜たぶん」


 弛緩した雰囲気の中、カインはふと気になったことを問う。


「そういえば『騎士団』といってたな。お前らの他にもいるのか?」

「主な団員はミニョンたちを含めて七人なの。それ以外にも支援者とか信徒がいるの」

「へえ。ならミニョンが団長なのか?」


 カインの問いに眉を寄せるミニョンとアドラー。なにやら訊いてはいけないことだったのかもしれない。


「……団長は()()()()()()()の」

「……はい?」

「団長は昔からただ一人だけ。でも会ったことないから詳しくは知らないの」

「あ、でも名前は知ってますよ〜」


 アドラーが横から口を挟んでくる。しかしなぜか嫌な予感がする。そんなカインを気にせずアドラーが団長の名を告げる。


「騎士団団長の名はーーーーゼロっす〜」

「ゼロ……」


 なぜだかわからないが、かつての主君が腹を抱えて笑っているような気がしてならないカイン。


 もはや重大な話は終えた空気に包まれている。


 紅い四つの瞳が安堵と笑みを浮かべたのを横目に、シャルティとサージュの頭を撫でる。


「ちょっ、お父様!? 不意打ちですし脈絡がなさすぎですよっ」

「このタイミングであたまなでなで。まさかあたしが伝説のせーじょ!?」


 照れるシャルティと思い上がるサージュ。


 ミニョンの同行が許されたことでホッとした様子のブリジットを見ながら、しかしカインには一抹の不安が残っている。


 ーー共和国で何事もなければいいが。


 その後数日の休息を経たカイン一行は、サウスコート共和国首都ユガに到着する。

お読みいただき、ありがとうございます!


この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると幸甚の至りです。


よろしくお願いします!!

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