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第九話

 次々と馬車に荷物が積み込まれていく。その光景を見て満足そうに頷くカイン。


 今日は共和国へ向けて出発する日。


 二頭引きの馬車を四台も用意してご満悦。馬車の傍ではサージュが積荷の確認をしている。


 そんなカインは後ろで黄昏ているシャルティに声をかける。


「もうじき出発だぞ。そろそろ覚悟決めたらどうだ?」

「……覚悟ってなんの覚悟ですか」

「ーー砂漠越えの!」


 サムズアップしてこれ以上ない笑顔のカイン。


 シャルティが一層落ち込むのがわかる……。


「いやー、まさか帝校が臨時休校になるとはなー」

「……たしかに最近は午前の座学だけでしたけど、まさか急に休校になるなんて……帝校に圧力とかかけてないですよね?」

「ソンナコトナイヨ〜」


 ……あからさまに嘘である。


 娘を旅に連れて行きたいから学校を臨時の長期休校にさせたのだ。これが親馬鹿。


 どうせアロガンの後始末で実技ができないのだから休んでしまえと進言したのだ。


「……まさか卒業前に砂漠を超えることになるなんて」

「いい経験になるぞ! 皆んなはしてないことだから一歩リードだな!」

「……ポジティブすぎてウザい」

「ガーン……っ!?」


 ふざけた三文芝居をシャルティとしていると、馬車の周囲が騒がしくなる。


 視線を向けると男女四人の武装集団がこちらに向かっているのが視界に入る。思わず口角が浮かぶカイン。シャルティを連れて馬車の元へ足を運ぶ。


 件の人物たちはカインを視認すると一斉に地面に膝をつく。周りの作業員たちが驚くのなんて歯牙にもかけない。


「「「「ーーブレイド、召喚に応じ参上しました」」」」

「おう! ご苦労! よろしく頼むぜっ」

「「「「ーーはっっ」」」」


 その光景に驚愕したのはシャルティやいつの間にか近寄っていたサージュも同様である。二人ともカインの袖を引っ張り小声で問う。


「お、お、お父様! あのブレイドと知り合いなのですか!?」

「……A級冒険者がC級に頭を下げてるよ? どして?」


 それらの疑問に答えたのはカインではなくブレイドの面々であった。拝跪したまま顔だけシャルティとサージュに向けて口を開く。


「ーーお姉さんらは南部戦役での()()()()。カイン殿に助けられ、生き方も戦い方も教わった」


 赤い髪が特徴的な女性が答える。


「カイン殿がいなければ我らは死んでたか悪党に堕ちてた」


 顔に大きな傷がある偉丈夫が二の句を継ぐ。


「ゆえにわたしたちはカインさまに頭を下げるのよ」


 エメラルドグリーンのエルフの女性が締め、


「……てことっす」


 前髪を目元まで伸ばした陰気な男性が適当に返す。


「まあそういうこった。赤い髪がブリジット、この怖い顔がイシュバーン、耳長のお姉さんがレティ、んでこのオタクっぽいのがドイル」


 四人の頭文字をとって、とカインが一呼吸置く。


「帝国最強の冒険者パーティーの一角ーーブレイドってな」


 ゴクリ、と二人が唾を飲み込む音がする。


「てかそんな仰々しくしなくていいって。ほら、立った立った!」


 パンパンと手を叩いて起立を催促する。それに従うブレイドの四人。気合いの入った四つの顔を見渡して、カインは不敵な笑みを携え告げる。


「ーー共和国までの護衛は頼んだぜ?」


 この程度容易いだろう? と気持ちを込めて。


「「「「はっ!!!!」」」」


 それに同じく意気揚々と返答するブレイド。


 見ていてくれと言わんばかりの獰猛な顔で。


「てことで共和国まではブレイドが帯同してくれる。環境が過酷なことには変わりないが、魔物へ意識を向ける必要がない分いくらかマシだろ」


 不安そうな二人の娘を撫でながらカインは軽い調子で宣う。


「な? カウナスなんて頼らなくてもパパは凄いだろう?」

「ん! パパは世界でいっちばんすっごいパパ……っ!」


 サージュの両脇の下に手を入れ高く持ち上げる。ふははは、と高笑いする二人を見ながらシャルティが嘆息する。


「……そういうことを言わなければカッコいいのに」


 なんてシャルティのボヤキが聞こえなかったカインはサージュを右肩に担ぎ、声高らかに宣言する。


「よしっ! 行くか! サウスコート共和国!」

「おーっ」

「はいはい、行きますよ……まったくもう」


 こうしてカイン一家は過酷な道のりを踏破し、南の共和国ーーサウスコート共和国へ向け出発する。

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