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第六話

「ーーカイン様。お時間です」

「はいよー」


 控室の革張りソファーで寝転がっていたカインは、メイドが告げた言葉に軽く返答する。


「……パパ、おぎょーぎわるいよ?」

「だろ? だから俺を反面教師にしてサージュちゃんはお行儀良くなりましょうねー」

「ん!」

「……いやなに論破されてんのよサージュ」


 サージュの諫言を上手く躱すカイン。妙に納得してしまったサージュにツッコむシャルティ。


 一家はいつも通りの時間を過ごしていた。


 なぜならこの式典に参加するのもカインとシャルティは八回目、サージュは四回目だから慣れてしまっているのだ。


「よっしゃ、それじゃサクッと終わらせますかね」

「……パパかんばって」

「あんまりエッチなお話はダメですからねっ。子供もきいているんですから」

「おう! 今日は挨拶なしだ! だから大丈夫!」

「「……??」」


 カインの発言の真意を読み取れないまま玉座の間に隣接するバルコニーへ向かう三人。


 すでに皇帝を除いた皇族たちは列席していた。


「ーー優雅なご身分だな。皇帝陛下に準ずる到着とは」


 口火を切ったのは黒縁眼鏡をかけた男ーー第一皇子ツォルンだ。


「おいおい国を救った"英雄"サマだぜ? 敬えよ」

「救ってなぞいないではないか。ただ殿を務めたのみで偉そうに」


 お互いが顔を合わせただけで言い争いに発展する。そこに加わるのは第二皇子ハプギーだ。


「……兄上、彼がいなければ我が軍は後方から襲撃され、国土の一部も失っていただろう。救う、というのは誇張かもしれんが、戦場に生きるものからすれば正しく"英雄"だ」

「ほれほれ〜英雄だぜ〜偉いぜ〜」

「……仮にそうだとしてもこいつの態度は許せんっ」

「皇帝陛下が許可されている。納得できなくても堪えてくれ」

「くッ……!」


 毎年繰り返すやり取りを終えると、今回はアディが話しかけてきた。


「でぇ? 今年は一体どんな挨拶をなさるの? わたくし、カイン様のイヤらしいお話が大好きですの。濡れてしまうほどに♡」

「いつも堪え性なく濡らしているくせに、この淫売がっ」


 アディの言葉にツォルンが悪態をつく。そのことを不満に思ったのか、アディは目を剥きツォルンに対し刺すような視線を投げる。


「……なにか仰いまして? お兄様?」

「ああ、その声を聞くとイライラするから黙ってくれといったんだ。一族の面汚しめッ」

「二人とも落ち着くんだ。直に陛下が参られる。無様を晒す気か」

「「…………ッっ」」


 どちらからともなく視線を切る二人。その様子を見ていた第二皇女アイファが嘆息する。


「……いい年して子供みたいね」


 ーー第一皇子ツォルン。


 ーー第二皇子ハプギー。


 ーー第一皇女アディ。


 ーー第二皇女アイファ。


 意識不明の第四皇子アロガンと他国へ大使として赴任している第三皇子を除いて、この場には皇族が揃っている。


 そして突き刺すような雰囲気の中、ついに皇帝が現れる。


 皇族はもちろんシャルティとサージュも拝跪する。


 ーーだがカインだけは直立している。あくびをしながら。


「……相もかわらず偉そうな男だな、カインよ」

「巷じゃ"そーけんの覇王"って呼ばれるくらいだからな」


 かかっと皇帝の言葉を一笑に付すカイン。


 このような態度でも不敬罪とならないのには理由がある。


 南部戦役での功賞としてネックス率いる殿部隊には莫大な報奨金及び何らしかの権利を認めた。


 ガッツの店で例えるならば貴族街での出店権などである。


 だがその一切を放棄したカイン。皇帝は代わりに、公式非公式問わず皇族への無作法・不調法を認めることとした。


 ーーそこには褒章式典でカインが偉そうにしていたという背景もあるが。


 いずれにしてもそういった経緯で、カインはいつもの調子で皇帝以下皇族と接していた。


 カインとの挨拶ともいえぬ挨拶を済ませた皇帝はバルコニーに向かいながら命じる。


「……楽にせよ」


 その言葉でみなが立ち上がる。


「さあ、それでは始めようではないか。我が国の勝利を祝う式典を!」

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