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【2部完結!】親馬鹿奮闘記!〜最強親父、娘たちが可愛すぎて常識を蒸発させる〜  作者: 美貴
第二章 シャルティとサージュに会いたくなった!
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 カイン一家の朝は早い。


 というのも、帝立騎士学校は課業開始前の基礎訓練が義務付けられており、その参加のためにシャルティの登校時間が早い為である。


 それに加え大黒柱であるカインの家訓〝なるべく一緒にごはんを食べましょう〟もあり、朝起きるのが弱いサージュも目を擦りながら共に朝食を食べる。


 サージュに関しては再び床に就いてしまうのだが……。


 そのためカインはどんなに酒に酔っていても、スコッティやレイラの家で共に寝ていても、必ず夜明け前から朝食の準備に取り掛かるのだ。


 そして生真面目なシャルティもまた、カインと同じ頃に起床し入念なストレッチを行う。


「――それじゃあ、行ってまいります」

「あいよ。怪我しないようにな」


 そしてやっと太陽が顔を出してきた頃、シャルティが帝校に向かう。その姿を、エプロンを身に着けたカインが見送り家事に勤しむのだ。


「……パパ、行ってくる」

「おう。変な奴に付いて行っちゃダメだからな」


 次いで、食器を洗い終え洗濯物も洗い終わりこれから外に干そうという時、着替えを済ませたサージュが玄関まで下りてくる。


 これまた同じく作業を止めて玄関まで見送るのが、カイン一家の慣習である。


 昼前までにあらかたの家事を終えたカインは、そのまま酒を飲んでゴロゴロするか、馴染みの娼館に赴くか、冒険者として働くかの三つに分類できる。


 これはそんなカイン一家の一日の風景――。




「……疲れも残ってねぇし、今日は真面目な汗を流しますかねー」


 ちょうど腹も減って来たし食事ついでに依頼をこなすかと決心したカインは、相棒の白い直剣のみ身に着けて家を出る。


 ――目指すは冒険者ギルド。


「なぁレイラー。なんか仕事ないー?」

「東の森での薬草採取は如何です?」


 カインは冒険者ギルド一の美人であり、みんなのアイドルでもあるレイラに仕事をせびっていた。


 受付カウンターには長蛇の列ができているのにも関わらず、英雄カインの登場により皆が心優しく譲ってくれた。


 ……決して威圧して譲らせたのではない。


「んー、それ若手の人気依頼だろ? それは残しておいてやりてぇな」


 薬草採取は簡単な割には報酬が高い新人に人気の依頼である。


 東の森には比較的討伐が容易な魔物も出現するため、新人の練習や戦闘技能の上達のためによく利用される依頼である。


 したがって制度的にはⅭ級だが、実力的にはS級にすら収まらないカインが受ける依頼ではない。


 そのようなカインの注文を受け、レイラはパラパラと依頼書をめくる。そして、


「でしたら……魔導薬屋の『キュイソン』さんからの依頼はどうです?」


 一枚の依頼書をカインの手元に提示する。


「キュイソンの婆さんか。ひょっとして……またお使いの依頼……?」

「いえ、どうやら今回は屋根の修理みたいですね。雨漏りしているらしいです」

「それは……大工に頼むものだろ……」

「報酬をケチっているんですね。半日拘束するのに報酬低いですし」


 面倒くさい依頼であるのに報酬が低いもの。いわゆる忌避依頼。


 実力がない低級冒険者ですら受けないような依頼だ。だから、


「わあった。それにするよ。どうせ誰も受けなくて紙の肥やしになるんだ。なら俺が消化する」

「――ありがとうございます! 助かります、本当に……」


 だから特に金銭的困窮に陥ってなく、急ぎの用事もないカインが請け負う。


 レイラの負担を少しでも軽くしようという下心も添えて。


「じゃお返しに今度さぁ、食事を作ってくれよ――俺の為に」


 依頼書を受け取るとき、そっとレイラの手を握る。


 これは建前に過ぎない。本音の所は語らずとも……ということだ。


「ええ……勿論よ」


 レイラは躊躇いなく快諾する。


 期待通りの返答を貰えたカインは、スキップしながら魔導薬屋へ向かう。


 三十八歳中年男がスケベな顔をしてスキップする姿に、冒険者たちはまた違う意味で戦慄したとかしないとか。

お読みいただき、ありがとうございます!


この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると幸甚の至りです。


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