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第三話

「ーーっや! せえいっ!」


 海月のような形から雲丹のようなものまで、様々な魔物を切り倒していくシャルティ。


 僅か十数時間で、シャルティの剣技は見違えるほど上達していた。


 かつては食堂であったのだろうか。大広間で遭遇した魔物を一人で倒したシャルティは、剣を鞘に納めながら言葉を漏らす。


「なんだかお腹が減ってくる魔物ばっかり……」


 その言葉を聞き逃さなかったのはレティだ。パンっ、と手を叩いて休息を進言する。


「ちょうど食堂みたいな場所ですし、ご飯休憩にしましょうか」

「魔物の死骸に囲まれて気分は優れないけどなの」


 ミニョンのごく普通の感想に、


「ちょぉっと待っててくださいねー」


 とレティが風を起こし魔物の遺骸を広間の端に追いやる。


「ほんとレティさんって武技の扱い方がお上手ですよね〜」

「あらそう? そう褒められると干し肉多めにあげちゃうわよ!」

「こらこら、食料には気をつけろって」

「そうなの。食料は大事なの。お姉様が正しいの」


 なんて会話をしながら休息を取る四名。


 レティの武技を見てあることを思い出すシャルティ。


「そういえばブリジットさん」

「……はんばい?」

「こらブリジットちゃん。お口に食べ物が入ってる時に喋っちゃダメってカインさまから教わったでしょう?」

「んぐっ、悪い悪い」


 ーーそんなことまで教えてたんだ。


 カインがしっかりとマナーを教えていたことに内心驚く。


「で? なんだい?」

「あっはい。あの、ブリジットさん槍を振るってますけど、前のはお父様が壊してしまいましたよね。それは予備のですか?」


 そう。ブリジットが誇る炎属性の魔石が込められた槍は、カインが暴砂鰄鰐(クロノダイル)を倒した時に壊してしまった。


 しかし遺跡探索では新しい槍を振るっていたからずっと気になっていたのだ。


 同じ炎を宿す槍を二本も持ってきていたのだろうか?


「ああ、これかい?」


 シャルティの問いを受けて、嬉しそうに傍に置いた槍を撫でるブリジット。


「これはね、カイン殿が買ってくれたんだよ。それもユガで一番の武器屋の最高級品をね」

「え、お父様が……?」


 しっかり弁償していたことに目から鱗だ。適当に流しそうな性格だから。


「そうさ! むしろ前の槍よりも火力が上がったもんで、結果オーライってね」

「……お姉様を物で釣ろうとしているの。ふしだらなの。最近流行りのパパ活なの」


 なぜかミニョンが悔しがっているが、それを笑って聞き流し話しを続ける。


「新たな武器を買ってもらったのはお姉さんだけじゃないよ。イシュのやつもすんごい盾を買って貰って嬉しそうにニヤけてたし」

「羨ましいですわ。そんなことならわたしもこの弓壊して貰えば良かったです……」


 本気で悔しがってるレティ。干し肉をガジガジと齧っている。


 そこまでカインを慕う彼女らにある質問をするシャルティ。


「あの……こんなときに聞くべきではないかもしれませんが……」

「気にせずなんでも聞きなよ。次の瞬間には死んでるかもしれないからね! 悔いなく生きなくちゃ」

「お姉様は死なないし死なせないの」

「そうかい、ありがとよ」


 冒険者特有の、刹那で生きるブリジットに感化されて疑問を投げかける。


「どうしてそこまでお父様をお慕いになっているのですか? 命の恩人だからですか?」

「なんでか……?」


 ブリジットとレティの眉間に皺が寄る。


 ーー流石に踏み込みすぎた?


 言葉の選択を間違えたと思い冷や汗をかく。しかし謝罪する間もなく、答えは二人からすぐに出た。


「「全てを兼ね備えているからかなあ(ですかね)」」

「全て……?」


 予想外の答えでハテナを浮かべてしまう。


「カイン殿は強いだろ?」

「え、ええ」

「さらにいい男だ」

「ま、まあ確かに?」

「もちろん命を救ってもらい、生きる希望を与えてくれたのもありますけどね」


 次々と出てくる。


「あと酒好きだろ」

「女性関係も派手ですわよね〜」

「それはダメな点なの……」


 ついにミニョンまでがツッコミしてきた。


「そう、完璧じゃないんだよカイン殿は。良いところもダメな所もある。うっかりしてる所もあるけど、政治家と渡り合うだけの地頭の良さもある」


 つまりだね、とブリジット。


「カイン殿はどうしようもないほどに"人間"で、誰もが認める"英雄"なんだよ。だから好きだし惚れる。目を惹かれるし褒められたいと思う」

「あの人の歩む覇道を、その先を、共に見たいと思ってしまうのですよね」


 二人の熱の入った口ぶりに、ミニョンも絆され話す。


「ミニョンたちにとっての聖女みたいなの。いつかお会いし、側で控え、共に神託を叶えていきたいの」


 それぞれが持つ熱意に当てられて、シャルティも破顔する。


「でしたら、なんとしてでもお父様に会わないとですね! その前にサージュとイシュバーンさん、ドイルさんにアドラーさんとの合流が先ですが……」

「ま、それはそうだね!」


 かっかっか、と笑うブリジット。


 休息も終え、四人は食堂を出る。



 ーーそこに待ち受けるは一体の海竜だった。

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