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太陽が完全に沈み月の独壇場となりながらも、帝都に住まう人々の織りなす営みの喧騒は留まるところをしらない。
そんな活気に満ちた街を突っ切って、カインは腹を満たして眠ってしまったサージュを背中に負って、シャルティとともに帰路につく。
この国のことは好きにはなれないが、カインを取り巻く人々は大好きである。
背中に感じる娘の暖かさ。ちらちらとカインの手を見て、手を繋ぎたいことがバレバレのシャルティを微笑ましく思う。
愛する者たちを失ってばっかりの人生だが、何があっても娘たちは護って見せる。
そっとカインは右手でシャルティの左手を掴む。
「――あっ……」
「大丈夫。誰も見てないさ」
一瞬驚き羞恥に顔を染めるが、コクンと頷き手を握り続ける。そしてなにか夢を見ているのだろう。背負ったサージュもまた、カインの背中の服を握りしめる。
カインは、天高く輝く月を見て誓う。
――決してこの手を放しはしないし信頼も裏切らない、と。
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