悪い夢や
その日二人して亡くなった両親の火葬が終わり、静かな家の中で一人飲んだくれていた。
静かになった家で、現実感もないまま二人を送ったが、今更になって泥のような後悔が押し寄せ、酒に逃げていたのだ。
しばらくうだうだと独り、誰に向かってかわからない言い訳を言いながら飲んでいたが、いつの間にか寝てしまっていたらしい。ここ数日は特急列車のように止まることもなく、目まぐるしい日々だったのもあり疲れていたのだろう。
ふと顔を上げると、そこは暗い列車のなかだった。
わけもわからないままあたりを見回しても誰もいない。逸乗ったのかもどこへ向かうのかもわからないうえ、外はまるで泥の中を走っているように不気味な暗さしか映らない。
慌てるも体を動かせず、それどころか勝手に立ち上がり歩き出す始末だ。
体は持ち主の意に反し隣の車両への扉を開く。隣はどうやら寝台車なのだろうか。ベッドが2つ、きれいに並んでいた。白い布団が両方とも膨らんでいるあたり、誰か寝ているのだろう。しかし顔まで覆った白い掛布団で顔は見えない。体は相変わらず勝手に一歩、二歩と前に動くと、崩れるようにしゃがみこんだ。あふれ出る涙、顔を覆う手、不気味な寝台の間で口をついて出たのは、
「ごめんなさい、」
あふれ出る言葉は止まることはなく、心の詰まりをただ押し流すように繰り返す。
私は許せるのだろうか。