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Report-1(2) 白き追憶の『半能薬』

ツグミの話を聞いた後、ある知人を訪ねることにした。

彼は所謂、情報屋みたいな仕事をやっている。

だから以前から、今回みたいな得体の知れない存在の情報が欲しい時はよく頼っていた。


「黒装束の2人組 ねぇ。そんなモン世界中に溢れかえってるだろ。なんか特徴は?」


ツグミの話を彼に話すとそんな返答があった。

そこで2人組の服にあった刺繍について写真を見せながら話した。


「ハート型の葉と十字形の花弁がある花の刺繍があったそうだ。」


「ハートに十字?嫌な感じだな。

で?お前なら何の花か分かるんだろ?」


私は頷いた。


「この花は 学名をHouttuynia cordataという薬草だ。ドクダミと言えばわかるかな。」


「ドクダミってのは、その辺にも生えてるあの独特な臭いのやつか。」


「その通り。正確に言えば十字形なのは花弁では無く、苞と呼ばれる部分なんだけど…」


「あーやめろやめろ!要らねー雑学情報俺に教えんな。ただでさえ世界中の情報で脳みそ満杯なんだ。」


「そんな君ならこのマークについて知ってるだろう?」


「分かったよ。ちっとばかし待ってろ。」


彼はそう言うと 〈know〉と書かれた扉に入り、1個のUSBメモリを手に出てきた。

そしてそれをパソコンに繋ぎ、画面を見せながら彼は教えてくれた。


「ドクダミのマークなんて使ってる団体はそういねぇからな。多分ここで間違いない。

何でもそこに行った奴は戻ってこないって噂もだ。お前はどう思う?」


「とりあえずそこに調査に調査に行くよ。

団体の名前は?」


「仏草會っていう宗教団体みたいな奴らだ。」


「団体の場所と活動、分かることを全部教えてくれ。」


「OK、まずは…」



彼を訪ねて正解だった。

必要な情報はほぼ揃ったし、あとは実際に行くしかない。


最後に彼に聞いてみた。


「君はドクダミの花言葉を知ってるかい?」


「確か 白い追憶、あと 野生、だったか。

それがどうした?」


「この花にはもう1つ花言葉があるんだ。」


「へぇ。じゃあなんて言葉なんだ?」


「……自己犠牲 って言葉さ。」



情報屋の彼に教えてもらった場所にたどり着くとそこには大きな洋館があった。

古びた建物だが手入れが行き届いているようで蜘蛛の巣の1つも無かった。

門をノックすると黒い服を来た女性が出てきた。


「ここのご主人にお会いしたいのですが。」


私がそう言うと女性はこちらへ と応接室のような部屋へ連れていった。


「よくいらっしゃいました。」


女性が一礼して出ていくと、ソファーに座っていた男が立ち上がって握手を求めてきた。


「志布岐 重歳と申します。」


「初めまして、ダゴン・アシミノークです。」


「初めまして、アシミノークさん。

ここにはどんな御用でおいでになったんですか?

まぁこんな所に来る理由は限られますが。」


志布岐と名乗る男は、にこやかに問いかけてきた。


「少々知りたい事がありまして。

こう見えて研究者をやっているんです。」


「なるほど、ここに関する話を聞いて調査に来た という事ですな。」


「驚かないのですね。」


「ええ、先程言った通りここへ来る理由は少ないですから。」


握手した手を離しながら私は尋ねた。


「ならば、単刀直入に質問します。

万能薬 について何かご存知ですね?」


志布岐は目を細めて答えた。


「万能薬 ですか。私達とは表現が違いますが、そう名付けるのも分かります。」


「やはりここに万能薬があるのですね。」


そう聞いた私に志布岐は いいえ と言った。


「捧命薬、私達がそう呼ぶものはここにはありません。それは必要とされた時に作られるのです。」


「どういう事です?」


お見せした方が早いでしょう と言い、志布岐は私を屋敷の外へ連れ出した。


屋敷の裏にあった道を少し歩いた場所に それはあった。

5メートルほどある巨大な植物が咲き誇っていた。あの、独特な臭いを放ちながら。

ふと周囲に目をやると、その花の後ろに夥しい数の石碑がある事に気付く。

あれは、お墓だ。


「私がこのドクダミとお墓を管理しています。」


志布岐はそう語り始めた。

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