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兄と妹の攻防。

あー上手くいって良かったわ。


私は上機嫌で公爵邸へと帰る馬車に乗っていた。

クロード殿下には悪いことをしたと思っているが、貴族社会には魅力的な年頃の御令嬢がたくさんいるからそのうち新しい婚約者ができるだろう。


さて、次に進めるのが両親へ婚約破棄したとの報告だ。

報告したらけじめをつけるために家を出ることを伝えよう。

そして、用意している荷物を持ってさっさと公爵邸から出ていくのだ。


私は公爵邸に着くと、まずはお父様の部屋に向かったが、「今はお仕事で外出されていていらっしゃいません。」と、執事から返答があり、じゃあ先にお母様に報告しようとしたが「奥様も外出されました。」と続けて執事に言われた。


今日は確か二人共用事がなかったと思ったのだけれど急用でもできたのだろうか。

なら仕方ない、帰ってくるまで待つとしよう。

私は執事に両親が帰ってきたら伝えてほしいと言うと自室に戻った。


さて、二人が戻ってくるまでにもう一度荷物の確認をしようと隠していたカバンを出したところ、扉をノックする音が聞こえため改めてカバンを隠した。


「どうぞ」と、答えると私の兄にして我がソルトニア公爵家跡取りのジノお兄様が入ってきた。


「よお、レイチェル。さっき殿下に挨拶に行ってたんだって?また馬鹿なことしてないだろうな。」


「失礼でしてよ、お兄様!私は馬鹿なことなどしておりませんし、これまでもしたこともありません!!」


「ふーん、そうかなぁ。どうなんだろうな。」


貴族の……しかも公爵家跡取りであるにも関わらず、なんだその態度は。

しかも、いくら妹とはいえなんだその言い草は。

子供の頃から私をこうしてからかってくる兄に、ちゃんと御令嬢に紳士としての対応ができているのか不安になってくる。

社交界でお兄様の姿を見かけてもいつも男性の友人たちと一緒にいるから御令嬢と談笑しているのをあまり見たことがない。

両親もお兄様に結婚話を勧めているのを見たことがないのだが……。


我が公爵家の未来は大丈夫だろうか。


私が家を出たあとのことを考えていると「……おい……おい、レイチェル!」と、ジノお兄様から声を掛けていたことに気づいた。


「は、はい。お兄様。」


私が返事をするとハァと、呆れたようなお兄様の溜息が聞こえた。


「レイチェル、いつも言っているだろう。いつもそんな考え事ばっかりしてないで人の話をちゃんと聞け。」


「それは……。その……はい、申し訳ありません。」


私は素直に謝った。

これは流石に私が悪い。

つい、考え事や空想の方に意識が行ってしまうのである。


「いつも、その癖をなおすように母上に言われているだろう。そんなだから殿下との婚約話も決まったようなものだし……。おっ、なんだこれ。新しい魔法の術式か?」


「あー!ちょっと、お兄様!勝手に見ないでっ!!」


私は机に置いたままにしておいた自立に必要なことを記載しているメモを取り戻そうと手を伸ばしたがお兄様はメモを頭上高く上げてしまい手が届かない。

くっ、こんなところで身長差による不利が出てくるとは……

そもそも、淑女にあるまじきこんな行為を誰かに見られたら公爵家の令嬢としてまずいのだが、今はそう言っていられない。


「なんだ?一般的な一人暮らしに必要な経費……。」


「ちょっと!読まないでったら!!」


お兄様とメモを取り合っていると、我が家の執事が入ってきた。


「失礼致します。お嬢様、旦那様と奥様がお戻りに……お二人共、何をされているですか!?」


執事が驚くのも無理はない。

まさか令息と令嬢が子供のように物を取り合って騒いでいるのだから。


「いや、これはその……何でもない。気にしないでくれ。」


お兄様が執事にそう言っている間に私はバッとメモを取り戻した。

全く、油断も隙もない。


「そ、そうですか……。お二人共、先ほどからノックを何回もしていたのにお気づきになっていなかったようなので何かあったと思い無断で入りましたが、公爵家の方々として今後は騒がしくなさらないように。」


最後の方は結構注意深く言われた。


私達は「「はい……。」」と大人しく反省するしかなかった。


「さて、お嬢様。旦那様と奥様がお戻りになられました。お二人共、旦那様がお呼びなので一緒にお部屋にいらしてください。」


「えっ、父上が?」


いきなり呼び出しなんてどうしたのだろうかと兄は首を傾げていたが私は婚約解消の話が先にお父様の耳に入ってその話なのだろうと察知した。

先に私から話そうと思っていたけれど、多少順番が変わっても問題はない。

さっさと説明してしまおうと、私はお兄様とともに部屋に向かった。

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