あるいは空の飛び方
「トンデ様トンデ様、空から真実教えてください」
トンデ様とは今この地域で流行している占いだ。4、5人で声を合わせて「トンデ様トンデ様、空から真実教えてください」と言って、そのあと聞きたいことを全員でトンデ様に聞くと、トンデ様から返事が返ってくるというもので、さらにその返事は絶対に本当らしい。
らしいというのはトンデ様をやった人間は、トンデ様が終わった後には内容を覚えていないうえにトンデ様を心から信じていないと返事すら聞けないとまで言われている。
私としては嘘くさいとも思っているのだが、友達のナナは多分心の底からトンデ様を信じているので、ナナに声が聞こえたかを聞けばいいのだ。
「トンデ様トンデ様、聞こえたのならお返事ください」
ナナからの反応はない。やっぱり嘘っぱちだったのだろうか。それともナナすらトンデ様を信じていなかったのだろうか。
ヒューっと一際風の音が聞こえて、少し寒くなってきたなと考えていると、突然ナナが震え出した。どうやら返事が返ってきたらしい。
「トンデ様はなんて言ってる?」
「怒ってる。四人いるのに一人しか信じてないって」
驚いた。実はトンデ様をやる少し前にミカとアスカにはトンデ様を信じているか、と聞いていたのだ。その時の二人の返答は二人とも信じていないということだった。
だがまだここまでだったらナナの冗談ということで済む。そもそもミカもアスカも私も現実的な性格で、ナナはそれを理解していただけかもしれない。だから私たちはトンデ様を試してみることにした。
「トンデ様トンデ様、聞こえたのなら一つ私たちの秘密を教えてください」
「トンデ様がアスカちゃんは今熊さんプリントのパンツを履いてるって」
「ほんと?」
アスカは少し俯いて頷いた。トンデ様はほんとに真実を知っているらしい。信じた私たちは少し本題を聞いてみる。
「トンデ様トンデ様、空の飛び方を教えてください」
これをトンデ様に聞くとメンバーのうち一人が大怪我をするらしい。これを本当かどうか調べることが本題だ。
ナナが突然震え出した。顔色は悪いし、すごい汗だ。
ナナが窓に向かって走り出した。
「クラマ!やっちゃって!」
「わかった!」
私はポケットから電子ロザリオと十字架から作ったカラシニコフを取り出してナナの後ろにいるやつに向けた。
「あなたがB級悪魔のエクサザリアであることはすでにわかっているわ。大人しく私に祓われなさい!」
「いやだ!私はこの街で五百人を殺してA級になる!お前らはそのための生贄だ!」
ナナの身体を使ってエクサザリアが喋り出す。もう我慢の限界だ。
バァン!
ナナの背後をカラシニコフで撃ち、エクサザリアを祓った。これで一件落着だ。しかし2人この街で被害者が出ている。少し情報を集めるのが遅く、さらに行動するまでも遅かった。反省点だろう。
「何言ってんのよ。あなたがいなかったらさらに被害者は増えたのよ。あなたはこの街を救ったの!」
「そうか...。だがこの二人のことは忘れないよ。私が二人のことを背負っていく」
そういうと悪魔に殺されていた二人であったアスカとミカは最期の念が晴れたのか薄れていく。
「さよなら。あっちではこんなことするんじゃないぞ」
それを聞き届けて二人は消えていった。