リスの家
コマドリと別れ、キツネはリスを探しました。
リスは、キツネの家の近くにある大きな木の洞に住んでいました。
キツネがリスの家を訪ねると、リスはちょうど朝ごはんを食べているところでした。
「おっと、失礼。おはよう、リスさん。」
「おやおや、キツネさんじゃないですか。おはようございます。
よかったら、ご一緒にどうですか。ほら、このドングリ、美味しそうでしょう。」
「ありがとう。でも、僕は君みたいに器用でないから、上手に食べられなくてね。
気持ちだけいただいておくよ。」
「そうですか。それは残念です。
ところで、何かご用がおありですか。」
「そうそう、訊きたいことがあったのだけれど、お食事の邪魔をしてはいけないからね。
また出直すとするよ。」
「いえいえ、それには及びませんとも。そうだ、まだブドウが残っていました。
ブドウなら、ヒョイとお口に入れて、食べられますよ。
どうぞ、お話しくださいな。」
「ありがとう。では遠慮なくいただくよ。」
キツネはリスに、コマドリから聞いたドングリ池のお願い事の話をしました。
「それでね、クマさんのお願い事を叶えてあげたいのだけれど、
金のドングリがある場所を知らないかい。」
「金のドングリですか。うーん、存じませんね。
でも、珍しいドングリについては、誰かから聞いたことがあるような気がします。」
「本当かい。それはどんな話だったんだい。」
「ちょっと待ってください。いま、思い出しますから。」
キツネの前で、リスは自分の頭をコツコツと叩き、ああでもないこうでもない、と考え始めました。
そして、キツネがちょうどブドウを食べ終わったとき、リスが顔を上げました。
「思い出しました。私のおじいさんから聞いた話でした。」
キツネは頷いて、リスに話を促しました。
「おじいさんは若いころ、誰より速く木登りができる名人だったそうです。
ある日、リスの仲間と、木登り競争をすることになり、森で一番背の高い木まで行ったそうです。
ほらあの、森の真ん中にあるモジャモジャドングリの木ですよ。
リスの駆けっこといえば、あの木ですからね。
よーいドンで、木の根っこからてっぺんまで登るんです。
そのときも、もちろん、私のおじいさんが勝ったんだそうですが。」
リスは自慢気にひげを震わせて話します。
「話はここからですよ。
競争が終わった後、おじいさんが木のてっぺんから降りようとしたときに、
森の中にキラリと光る木を見付けたんだそうです。
ただ、その木は背がとても低くて、木を下りている途中で見えなくなってしまったんだとか。
その光る木が気になったおじいさんは、仲間と別れてその木を探し、とうとう見付けたのですが、
その木には、何と、光るドングリが生っていたんだそうです。
まあ、私の知る珍しいドングリと言えば、それくらいですね。」
リスの話を聞き終わったキツネは、それが金のドングリではないかと考えました。
「リスさん、その木が生えていた場所はわかるかい。
それが金のドングリかどうかは、見てみないことには分からないからね。」
「それが、すみません。おじいさんからは、お話したことしか聞いていません。」
「いやいや、ありがとう。あると分かっただけでも良かったよ。
けれど、さて、どうやって探そうかな。」
「でしたら、私が登って探してみましょう。
私のおじいさんは、モジャモジャドングリの木の上から見付けたのですから、
同じ場所に行けば、見えるかもしれません。」
それは名案だ、とキツネは頷きました。
「ありがとう。
じゃあ、モジャモジャドングリの木まで、一緒に行かせてもらうよ。」