六話 初めての朝
ーーー長い夜にはなりませんでした。リーフィさんと押し問答した後、無理矢理目を手で覆われた瞬間、気がついたら朝になっていた。
「……実は今までの話は全部夢でした」
「そんな事ないのですよ!? ちゃんと現実なのですよ!」
俺の独り言に突っ込んでくれたのはもちろんリーフィさん。俺より早く起きたのだろう、すでにベッドにはいないし身なりもきちんとしていた。
「おはようございます、フィー姉さん」
「はい、おはようございますっ。今日は良いお天気なのですよー」
すでに開け放たれている窓から青い空が見えている。時折部屋に入ってくる風が実に気持ちが良い。
そんな事をボーッと考えているとリーフィさんが手を叩きながら注意してくる。
「ほら、早くベッドから起きて身支度をするのですよー。あと少ししたら私がルナちゃんとノノちゃんを起こしに行くので、それからみんなでご飯なのです!」
「はーい。……ん? 起こしに行く?」
「なのです。二人は家庭の事情でここで暮らしているのですよ」
「あー……なるほど」
迫害を受けているだけでなく、複雑な家庭環境で育っている子もいるわけか。……なかなか、世知辛いな異世界も。
そんな事を考えていると、リーフィさんがクローゼットから服を取り出し渡してきた。
「着替えはこちらで用意したので、これに着替えていてほしいのですよー」
「あ、すいません。わざわざ用意して貰っちゃって」
「家族なのですから気にしないでほしいのですっ。それじゃ、またあとで」
「はーい」
俺の返事を聞いた後、リーフィさんはにこりと微笑んで手を振りながら部屋から出て行った。
まだ少しだけ眠いがそうは言ってられない。俺は頭を振って眠気を飛ばすと、服に着替えるためベットから降りる。
「んー。ほんとに気持ちいいなぁ……ーーーッ!?」
再度風に頬を撫でられれば気持ちよさに頬を緩ませ、ついそちらに視線を移して俺は固まった。
ーーー青く、どこまでも澄み渡った空の下には青々とした草原がまるで海のごとく広がっており、風が背の高い草を揺らしながら駆けていく。
見たこともない鳥達がその風に合わせて飛び立ち、風に乗って遠くにそびえる巨木に向かっていった。ーーーいや、巨木というのは控えめ過ぎた。その木は山に寄り添うようにして生えるているのだから。
窓の外から見える、あまりに現実離れした風景に俺は着替えの事も忘れて見入ってしまっていた。
短めですいません。