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第0章
小さい頃からよく残酷な夢を見た。
将来の目標という夢でなく寝ている間に見る夢だ。
野球選手になってホームランを打つ夢、
サッカー選手になってハットトリックを決める夢、
陸上選手になってオリンピックで金メダルを取る夢、
俳優になって映画のワンシーンで不敵に笑う夢、
勇者になって世界を救うために仲間とドラゴンを倒す夢。
きっと将来なりたいものを渇望するから見る夢なんだろう。
夢の中ではヒーローにもなれるし、必ずハッピーエンド。
手に汗握るストーリーの主人公になって知恵を振り絞りながら戦って、
素敵なお姫様と結婚したりなんかしちゃって。
そんな世界では一流のスキルをなんの苦労もしないで手に入れていて、
周りから信頼されて、羨望のまなざしを向けられて、、。。
きっと僕はヒーローになりたかったんだ。
だから、これは恐ろしく残酷な夢だった。
朝になってヒーローでもなんでもない自分に会いに行かなくてはならない。
朝なんて来なければいい。
夢の中でずっとヒーローをしていたい。
そんなことを思いながら僕は大人になってしまった。
・・・大人になってしまっていた。