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今日から学校と仕事、始まります。①莞

どちらのコーヒーに仕掛けがあるのか?

作者: 孤独

開かずの扉。

1人の主が引きこもり、時に抗いながら、連ねて紡ぐ世界を構築していた。

人と呼ぶべき姿に反して、人としての行動を超越し、歪み禍々しく、男はプログラミングを記していく。


たった1人で、何のために?


面白いから。いや、オカシイからだ。狂っているから。

人が1つの人生で間違ったところにしろ、進んで、進んで、進んで、


「えげほぉっええはははぁ」


寿命を多く削ろうとして、進んだ先。辿り着くか分からないところに辿り着こうとする。ある意味、その男にとっては死も終着点。

宮野健太にとっては、思うが儘にいられることが全て。故に彼の超越した点には霞みがある。

同類がいないことを幸福とも思っているが、必ずいないわけでもないし。自分よりも超える奴もいる。



トントントン


「邪魔だ」


肩を叩かれても、振り払った。いつもの奴かと思ったが、違っていた。


「宮野。コーヒーを持ってきたわ」

「……酉か」


この女だ。俺を従えているのは……。

酉麗子。この女と出会っていなければ、今の自分はいない。それは感謝という言葉にしたくはないが、近くにイカれたのがいると心安らぐといったか。オカシイことを素直に讃えることに悪い気はしないから


「二つあるけど、どっちにする?」


お盆に熱々のコーヒーが二つ。眠気覚ましか?それとも、片側だけに塩でも入れているのか?一呼吸入れるだけで集中しまくっている脳はいくつかの可能性と、不安を淀みに変える思考を送る。

左右対称に思える。仕掛けがどっちかにあるより、どっちにも仕掛けたとも言える。チャカしに来た?さて、なにをしてきた?


「どーしたの?」

「眠くもなんともねぇ」

「そーいう気は、あなたには微塵にも思ってないわ」


飲まない選択肢をしたら、こいつはきっとコーヒーをひっくり返して俺に構ってもらおうとするか?フフンッ、ひっかかるかと自信満々に、


「左のコーヒーをもらう」

「そう」


勘で選んだ。選んですぐにそのコーヒーに手をかけようとしたが、酉の方が早くコーヒーを手に取って、おもむろに飲んだのだ。一瞬、仕組んでない方を飲んだのかと思ったが、こいつにそれはないと付き合って来た経験から察する。口に含む程度に飲んでからだった。


酉が、自分の口に、口を寄せたのは。口から、口へ渡されたコーヒー。


「口移し」

「…………」

「あら?ドキドキしてくれない?私なりに宮野を驚かせたかったんだけど」

「松代にでもやっとけ」


……味の濃いコーヒーでやんな


「お前の仕事をやってるからもう下がれ、休息は十分だ」

「あーあ、集中する前に訊いてもいいんじゃない?」

「黙れ。お前の味はどーでも良い」

「……そー」


片方のコーヒーも引っ提げて、つまらなそうな仕草と雰囲気。我儘にしては違う。もう一つはなんだって、


「右のコーヒーは?」


聞いてくれないと部屋から出ないって顔。ウンザリだ。粘り強いより性質悪い女だから、訊いたのさ。


「間接キスね」

「ならそっちを選べば良かった」


気持ちがちっと緩んだ気がした。部屋から出ようとする足取りがUターン。そして、コーヒーをテーブルに置くのだ。


「じゃあ、こっちのコーヒー。置いておくね」

「…………」


相変わらず、酉は……


「間接キスもしてなさい」

「お前が消えてからな」

来年は酉年だし、酉麗子の活躍が増えたらとも思っています。


今年度もお世話になりました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。 宮野健太と酉麗子の仲の良さが伝わってきました。 良い話でした。
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